大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・186『ゾンビの秘密』

2023-10-21 14:14:59 | 小説4

・186

『ゾンビの秘密』ツナカン 

 

 

「「なぜ?」」

 

 岩陰に身を潜めたところで、同じ言葉が出てしまったっす。

 ノッシ……ノッシ……ノッシ……

 二人の動きに動体視力がついていけないゾンビどもが岩の向こうを通過するのを待って、やっと二の句を継いだっす。

「拙者は」「自分は」

 応えも重なりかけると――そちらから――とうなづくサンパチ殿。やっぱり、内親王殿下のガードだけあってゆかしいっす。その感動にワタワタしてると、はにかんだような顔で口を切るサンパチ殿っす。

「拙者は、この序盤戦の様子を探っておるのでござる。ツナカン殿は?」

「自分もっす」

「アルルカン殿は、参戦されるのでござるか?」

「とんでもないっす、アジトも引き上げて姿をくらますっす。でも、この戦争の性格を知っておきたいって船長が言うもんで、自分が偵察に出てきたっす」

「アルルカン殿は火星を出られるのでござるか?」

「そうっす。取りあえずは周回軌道のヒンメルに退避っす、それからどこに行くかは、自分にも分からないっす」

「さようか……ツナカン殿の報告次第というところでござるな」

「サンパチ殿は?」

「殿下の安全を図るためでござる」

「安全……」

「事と次第によっては扶桑を……あるいは火星を出ていただかなくてはならぬでござる」

「殿下の御命令っすか?」

「独断でござる。ろくに並列化もできぬ作業機械でござる、拙者は自分の目で見た情報を報告するまででござる。お決めになるのは殿下ご自身でござる。それゆえ、確度の高い情報を得るため、時には敵中に身を置いて強行偵察もいたすのでござる」

「さ、サムライっすねえ!」

「そうでござるか?」

「ござるっす。あっしの場合は船長が決めていて、シャケカンやアルミカンとジャンケンして、負けて来たっす」

 どっちかって言うと気の進む仕事じゃないっす(-_-;)。

「よいではござらぬか、アルルカン殿は、一見抜けたように自己演出され、とても軽やかに明るく人を動かされるのでござるよ」

「そ、そうっすかね(^_^;)」

「ああ、殿下共々ヒンメルに拉致されもうした時に観察して、そう感じたでござる。良き総帥でござる」

「え、そうなんすか?」

「ああ、あのパンツが破れたところやブーツでずっこけたところ(122『ずっこけアルルカン』)など、心憎いまでの演出でござった」

「ああ……」

 あれは、船長もクルーもガサツなだけなんすけど(;'∀')。

 

 ノッシ……ノッシ……ノッシ……

 

「あんなゆっくり動いていては、ビシバシやられるだけじゃないっすかね?」

 ビシビシビシビシ!

「うわ!」

 岩のすぐ後ろを進んでいたゾンビがパルス機関銃の斉射をうけてミンチになったっす!

 ビチャビチャビチャガチャビチャガチャ

「うッ」

 粉砕されたロボットのパーツや生体組織が混ぜこぜになって飛んでくるっす!

「さすがに惨いものでござる」

 言いながら、平然とパーツやら肉片を見つめるサンパチ殿。外見が小柄な美少女なんで、なんか壮絶っす。

「こういう時は、少し気持ち悪くなるくらいがバランスがとれて良いでござるよ」

 エヅキそうになっているあっしを労わってくれるサンパチ殿は、やっぱサムライっす。

 壊死して時間が経っているので、見た目以上にグロテスクで、思わず解析してしまうっす。

 ジジジジジジジジ…………

 サンパチ殿も同じく解析、二人とも念入りの重層解析をやるもんで、解析波が共鳴して虫が鳴くような音がするっす。

 

「「まずい!」」

 

 同時に叫んで飛びのいたっす!

 ロボットの肉片や腐敗した体液にはパルス菌が繁殖しかけていたっす!

 パルス菌は開拓時代に地球から持ち込まれた感染菌が火星で変異したものっす、150年後の今でも完全な対策がないっす、人間が罹れば致死率は70%っす。ロボットでも粘膜や生体組織の傷口から入って来られたら生体組織がやられて無残な姿になってしまうっす!

 

☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« RE・トモコパラドクス・54... | トップ | RE・トモコパラドクス・55... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説4」カテゴリの最新記事