大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・時かける少女BETA・27《大和と信濃と・12》

2019-06-13 06:08:02 | 時かける少女
時かける少女BETA・27
《大和と信濃と・12》                   


 エンタープライズの爆沈は事故による弾薬庫の爆発かと思われた。

――今のエンタープライズの撃沈が警告である――伊藤中将から、直ぐに電信がきた。
「……いったい、どうやって。レーダーには何も映っていないというのに」
 スプルーアンス提督はいぶかしんだが、予定通り上陸部隊を上陸させるための艦砲射撃を準備させた。

「中佐、そろそろ敵の電探に掴まるな」
「はい、レーダ波の吸収は40キロが限度であります。射程いっぱいですが、艦砲は必ず命中します」
「うん、エンタープライズは沈められたが、今度は、敵機がこぞって襲ってくるぞ」
「大和の艦砲で、砲撃準備に入った敵艦をできるだけ沈めましょう。向上蓋がついています。散布界20度に収まっていれば必ず当たります」
「敵機が発艦し始めています。10分でこちらに来ます」
 通信参謀が静かに言った。
「18斉射はできます。敵機がくるまで、敵艦を沈めましょう」
 大和は、一斉射すると次の斉射までに1分かかる。そこで三基の主砲一発ずつ三発で一斉射とし、照準も含め30秒おきに斉射する。

「提督、サウスダコタが!」

 艦長が叫んだ。もう3隻目である。仰角をかけ照準が決まったころに、敵弾が3発ずつ飛んでくる。アメリカの戦艦は40サンチの砲弾に耐えられる装甲がなされているが、敵弾は易々と装甲を打ち抜き内部でさく裂。今のサウスダコタも瞬時に艦体が三つに裂かれ、数分で沈没した。
「攻撃隊は、まだ着かんのか!?」
「やっと編隊を組み終えたところです。5分もあれば敵艦隊に届きます」
「駆逐艦隊も走らせろ、海と陸から挟撃するんだ。空母は退避させろ!」
 命じ終えた時にはウイスコンシンが爆沈した。

 アメリカの戦艦9隻と巡洋艦5隻を沈めたところで、敵機の編隊が電探に映った。

 大和は三式弾を一斉射、アメリカ攻撃隊の鼻先でさく裂。瞬間に40機あまりが墜ちた。しかし、二斉射は間に合わず、対空火器で残りの160機あまりを相手にした。
 信濃からは、その直前に真っ黒な陸攻と30機の紫電改が飛び立った。正面衝突するような形で日米の編隊はすれ違い、すれ違ったあとは、アメリカの攻撃隊は125機に減っていた。

 紫電改は、全機そのままアメリカ艦隊の上陸用舟艇を狙い、10分あまりで64隻の舟艇を沈め、上陸できた舟艇は10隻に満たず。沖縄の守備隊により各個に撃破され、20分後には全滅した。上陸部隊指揮官のバックナー中将は上陸部隊の進撃を中断せざるを得なかった。

 日本艦隊は、懸命の対空射撃を行った。全艦主砲弾から25ミリ機銃に至るまで向上蓋が装着されており、命中率は95%で、有効な命中弾を与えられた米軍機は一機もおらず、20機あまりが魚雷や爆弾を放棄して、逃げ去った。
 航空攻撃が一段落しかけたころに、敵の駆逐艦23隻が二列の短縦陣で押しかけてきたが、大和の副砲、矢矧や駆逐艦の遠距離射撃で半数以上が撃破され、10隻あまりが、遠距離から魚雷を打って反転したが、一発も命中せず(アメリカの魚雷は雷跡が派手に見えるので、艦が健康であれば、容易に躱せる)逃げた駆逐艦も、追いかけてきた日本の駆逐艦によって、全艦撃破された。
 航空攻撃が終わった後、大和の主砲による攻撃が再開され、遁走しつつあった米英空母も全艦撃沈された。

 伊藤中将は、米英軍に降伏を勧告した。

 米英軍には、戦闘艦艇はほとんど残っておらず、輸送艦、工作船、病院船ぐらいであり、スプルーアンスは他の陸軍、海兵隊、イギリス艦隊司令官と協議、降伏を受け入れた。

 降伏の条件は、タンカーを引き渡すことと、夜に艦体の上空に浮かぶ映像を観ることであった。映像は、かつてウェンライト中佐に見せたものと同じであり、どういう仕掛けかは分からなかったが、上空に縦250メートル、横に400メートルほどの高画質の映像が映った。そして、それを見た米兵たちは、それまで釈放された米兵捕虜が日本に洗脳されたと思っていたことが事実であることを思い知った。

 そして、あくる朝、信濃から飛び立った一式陸攻が、距離10000で落とした核爆弾が海上で爆発。その衝撃波は、全ての米英の艦船に伝わった。

「これで、アメリカも講話にのってくるでしょう。海軍力の半分を失い、隔絶した戦力を身に染みて知ったのですから。タンカーは一隻アメリカに戻します」
「なぜかね、せっかく手に入れた油なのに」
 伊藤中将が細井中佐に聞いた。
「彼らはウルシーではなく、真珠湾でもなく、サンディエゴまで帰ってもらいます」

 その一週間後、ルーズベルト大統領は脳溢血で世を去った。跡を継いだトルーマンは、マンハッタン計画の中止を命じ対日講和について非公式に協議に入った。そして5月にドイツが降伏したことを機に五分五分で対日講和が結ばれた。

 日米共に互いの戦争責任は問わない。中国から日本は撤退し、中国をはじめとするアジア諸国の民族自決権を相互に認めること。ソ連の包囲網をつくりあげ、共産勢力と対峙することなどが決められた。

「では、わたしの任務は、ここまでということにいたします」

 細井中佐は、信濃の飛行甲板から30機の紫電改を引き連れ、一式陸攻で飛び立っていった……。
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