せやさかい・355
百武真鈴、いや田中真央生徒会長の狙いは、こうなんです!
今から、ひと月余りでやっても大半の取り組みは空中分解するか、ショボいもんしかつくられへん。
それやったら、経験も豊富で、かつ最初で最後の文化祭で熱が入ってる三年生、それもイベントとかに経験のある者が中心に一二年生を引っ張って行ったら、短期間でもええもんが作れる。
せやさかい、この文化祭を三年生に任せてほしいという要求! いや、提案なんですわ。
「むろん、従前どおり自分のところでやるというクラスまで、節を曲げて参加してほしいということではありません。まだ決まっていない、途方に暮れているクラスがありましたら、この生徒会長田中真央の、この指とーまれ! という訳です。いかがでしょうか、先生方!?」
この演説をAランク、経験値マックスの女騎士みたいな声でやらはるんですから、外野で聞いてるうちらも惚れ惚れです!
「田中さん」
教頭先生の後ろから声がかかった。
教頭先生の後ろはドアになってて、給湯室を挟んで校長室に繋がってる。
そう、つまり校長先生が出て来はったんです。
「それは、単なる呼びかけだから、許可をとるようなことではないと思いますよ。けして強制にならないよう、無理にならないような取り組みを考えて、できるだけ早く企画書を……」
「はい、それならば、ここにあります、魔王陛下! あ、すみません『異世界大戦』のノリで言ってしまいました(^_^;) 岸田さん、お配りして」
総理大臣と同じ苗字の書記に命じて、あっという間に先生らだけでなく、廊下で見てたうちらにも企画書のプリントを配ってくれました。
「あ、これ知ってる!」
企画書を手に取った留美ちゃんが声を上げて、メグリンも「どれどれ(._.)」と覗き込む。
それは『サクラ・ウメ大戦』というクラス劇用の台本で、登場人物は最低13人で、40人くらいには、いくらでも増やせるというスグレモノ。
劇中に、歌やらダンスやらも入って、それでいて上演時間は20分ほど。
「いい役者が居るようでしたら、ダブルキャストで、二回公演も可能です。ステージが苦手な人は、道具やら音響やらのスタッフの仕事もあります。また、学校の許可が出るようなら、動画で流してみようとも思います」
「う~~ん、まず、台本を読んでみたいかなあ……」
教頭先生が腕を組む。
「それなら、企画書にQRコードを貼り付けてありますので、スマホでご覧になれます」
職員室と廊下に居てるものがいっせいにスマホでQRコードを読みはじめる。
なんか、みんな魔法にかかったみたいで、ちょっと面白い。
うちの横でスマホを見てる頼子さんは早くも台本を読み始めてガッツポーズ。
ひょっとしたら、事前にイッチョカミしてたんかもしれへん。
で、六時間目のホームルームが終わるころには全学年から7クラスが田中先輩の企画に乗ることになった。
むろん、うちらのB組も参加することになりました。
やっぱり、三年生の情熱と突破力はすごいもんです……というか、田中真央(声優名・百武真鈴)はスゴイ人です。
聖真理愛学院三年ぶりの文化祭は、がぜん熱をもってきたやおまへんか!
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
- ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
- 月島さやか さくらの担任の先生
- 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
- 女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首