やくもあやかし物語 2
フフフ……ハハハ……フフフ……ハハハ……フフフ……ハハハ……
笑い声を追って浜辺を走る!
近くなったと思ったら遠くなり、遠くなったと思ったら近くなる。左手の草原の方に逃げて、それを追いかけて草原に踏み込むと、とたんに砂浜の方に笑い声が移動したりする。
でも、けっして海の方からは聞こえないから、やくもたちの前を走っていることに変わりはない。なけなしの元気を振り絞って走る!
「こんちくしょー!」
タタタタタタ!
ハイジが頭に来て全力で追いかける!
全力すぎてわたしの視界から消えてしまうんだけど、しばらく走ると、ヒトデみたく大の字になってひっくり返っている(^_^;)。
「がんばろ、上の方からは聞こえないから、あいつらも飛ぶ力はないんだよ」
「え、あいつら飛べるのかぁ?」
「あ、やっつける前は飛んでた。名前もトバリとトバルだから飛ぶっぽいかな」
フフフッ……フハハハハ!
かなり近くで聞こえて、ハイジと二人、めちゃくちゃ敵愾心が湧いて来て、思いっきり走った!
タタタタタタタタタタタタタタタタタタ!
どのくらい走っただろうか、あるものを、ちょっと追い過ごしたところで、二人とも立ち止まってしまった。
「いまの見たか……」
「う、うん、なんとなく……」
なんとなくじゃない、実ははっきり見えて、見てしまって……立ち止まって見る勇気がないので、惰性で50メートルほど走ってしまった。
「ちょっと戻って確認しよう……」
「お、おお……」
それは焚火の跡だ、ちょっと前まで二人で服を乾かしいた焚火の跡。
燃え残りの木切れに見覚えがあるっぽいし、焚火を挟んでできた窪みは、やくもとハイジのお尻の痕っぽい。
「ひょっとして、ループしてるっぽい?」
「ま、まさかな(;'∀')」
「ていうか、笑い声がしなくなってるし……」
ザザァァァァァ~~ ザザァァァァァ~~
なんだか、波音だけが際立って……ちょっと怖くなってきた。
「あ、誰か来るぞ!?」
ハイジが後ろの草原に駆けあがる。やくもも遅れてあがる。
「え、あれは……」
「デ、デラシネじゃねえか!」
「「オーーイ、デラシネぇ!!」」
二人で手を振ると、デラシネは、それに気づいた様子も応える様子もなく、それでも、真剣な顔で真っ直ぐこっちに向かって走ってきた!
☆彡主な登場人物
- やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ ヒトビッチ・アルカード ヒューゴ・プライス ベラ・グリフィス アイネ・シュタインベルグ アンナ・ハーマスティン
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子) トバリ(魔王女)