大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!76『ランチデート』

2024-11-29 07:05:17 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
76『ランチデート』 




 美優は一週間後に死が迫っている黒羽の親父のために黒羽の恋人役を買って出やがった……いや……ええとぉ、親父の願いを重荷に感じて、仕事に手が着かなくなった黒羽のため?……それとも、美優自身一週間と限られた時間の中で、精一杯恋の真似事をしてみたかったから?

 マダムも店にもどってから同じことを聞きやがった。母親としては当然だよな。

「わたしは、一週間後には死んでしまう。だから、好きなことをやる。それだけ……なぜとか、どうしてか、なんて理由を考えている時間はわたしには無いの」

 美優は店の開店準備をしながら、それだけを答えやがった。


 昼をちょっと過ぎて、黒羽が美優を食事に誘いに来やがった。


 タクシーで10分ばかり行った、こぢんまりした品の良いフランス料理の店に二人で出かけやがる。

「ほんとはディナーに連れてきたいところなんだけどね。親父や新曲のことで時間がないから、ランチでごめん」

「いいのよ、その代わり、帰りはタクシーじゃなくて……」

「うん……?」

「事務所まで歩いて帰らない?」

「いいよぉ……」

「あら、どこにメール?」

「クララに『30分自主練』」

「ごめんなさい、レッスンに響いちゃった?」

「いやいや、メンバーたちで考える時間をつくらなきゃと思ってたとこだから『黒羽の悪い癖は、なんでも自分でやっちまうところだ』って会長にも言われてたしね。美優ちゃんは、それを知らしめるために神さまが遣わした天使かもしれない」

「ま、お、臆面もなく(''◇'')ゞ」

「可笑しい?」

「知りません!」

 フフフ、憑いてるのは天使じゃなくて悪魔なんだぞぉ、小悪魔だけどな(≖͈́ㅂ≖͈̀ ) 。

 ランチとは言え、なかなかのもんだ。A-5ランク特選牛フィレ肉のグリル トリュフの香るソースをメインに、スープとスパーリングワイン。パンはできたてのものからチョイス。バターとオリ-ブオイルが付いていて、しっとりと食える。ゆったりと風を感じるので首を向けると、テラス越しにお堀が見えた。

 急いでというわりには、黒羽は40分以上かけやがった。美優は、もう食後のコーヒーに手を伸ばしてやがる。

「もっと、ゆっくりすればいいのに」

「アハハ、バイトの子が休んだときなんて、お母さんと交代で、お昼なんか5分ですましちゃう。やっぱり癖がでちゃうかな(^_^;)」

「店も、なかなか大変なんだな」

 出かける前、母が以前バイトをやってくれていたサキちゃんてのに電話してるのに気づいてやがる。美優の一週間を自由にしてやろうという心遣い……気がつかないふりをしてやがるけど、出ちまうんだよなぁ、サキちゃんが間に合うのは明日からだしな。


 帰り道は少し遠回りをしてお堀端を歩きやがる。
 
 美優は喋りっぱなしだったぜ(^〇^)。


 最初は身上調査みてえだ。ヒカリプロに入るまではどうしていたか? 学校じゃどんな子だった? 小さいころは左利きだった? いつまでおねしょしてた? いままでで一番手のかかったタレントは? テレビ局のお弁当って? 上着を着る時は右左どっちから手を通す? 新聞は読んでます? お父さんと妹さんの思い出は? 通販はアマゾン派?楽天派? 神田祭好きですか? 幽霊って信じます? 手を組んだら左右の親指どっちが上に来ます? 自分の鼻は大きい方だと思います? 22世紀まで生きたいと思います?

 なんだか手当たり次第で、会話が途切れたらどうしようと緊張していやがる。

 黒羽Dは、おかしくなってきやがった。小学校の時の靴のサイズを左右別々に聞いてきたときには思わず笑ってやがる。

「ハハハ、なんだか、質問ばかりだな」

「だって、デートなんてしたことないもの。それに……」

「それに?」

「婚約者としては、いろんなこと知っとかなきゃ、黒羽さんのこと」

「婚約者に黒羽さんはないだろう」

「そ、そうね……え、英二さん(*ノωノ)」

「さん抜きで言ってみ」

「そ、そんな……じゃ、わたしのことも美優って呼んでください」

「言えないことはないけど、お互い不自然だな……ま、しばらくは、さん・ちゃん付けでいいんじゃない」

 昼下がりの街は、昼の休憩時間が終わったのだろう、人影がまばらになってきた。

「英二さん」

 下りの階段になったところで美優が声をかけた。

「うん?」

 黒羽が振り返ると、そこに美優の顔があった。ほんの数センチの隔たりで、目をつぶった美優の顔がせまってきてやがる。

「オット……」

 そう言いかけて、二人のクチビルが重なってしまった。

 階段の段差を利用して、美優が体を預けにきやがったんだ。そうしなければ、二人の身長差ではクチビルは重ならねえ。

「美優ちゃん……」

「恋人同士、お互いのクチビルぐらいは知っておかなきゃ」

「大胆だね……」

 黒羽は美優の大胆さへの驚きに愛おしさが付いてきたのに、自身驚いてやがる。

「……この先は進入禁止」

 黒羽のつぶやきに、美優の心は、トキメキとガッカリが一度に来た。

「道に迷ったな、この先進入禁止。大通りに出て、やっぱりタクシーにしよう」
 
 黒羽はディレクターの顔になって、道を戻り始めやがった……。




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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