せやさかい・239
進路希望調査票をもらった。
もう、そんな季節なんや……というのが感想。
ついこないだ、ダブダブの制服着て入学したばっかしやのに、もう卒業後の進路の準備。
そんなことをしみじみ思ってると、前に座ってる男子が立ち上がる。
立ち上がることに不思議はない。終礼も終わったし、掃除当番でもないし、家に帰るだけやからね。
ちょっと感慨深かったんは、その男子のズボン、お尻のとこが光ってたから。
べつに、蛍の化身やない。
三年も履いてるズボンやさかい、お尻がテカってる。
カバン持って歩き出したズボンのすそも、くるぶしが見えかけ。
スカートと違て、ズボンは背が伸びたら、すぐに目立つ。
「酒井、○○のこと好きなんかあ~」
瀬田がからんできよる。
瀬田いうのんは、一年からクラスがいっしょのアホ。
掃除さぼったんを注意したころから距離が近こなってしもた。チョッカイだすことでしか人と関われへん不幸な奴。
「ちゃうわ」
「せやかて、○○のことじっと見てたやんけ」
「瀬田、ちょっとケツ見してみ」
「なんや、おまえ、男のケツに興味あんのかあ(꒪∆꒪;)?」
「ええから、見せろ」
「しゃあないなあ、ちょっとだけやぞ~」
「突き出さんでもええ」
振り向いた瀬田のオケツは光ってなかった。光ってへんけど、ズボンの裾はやっぱし短い。
「じぶん、ズボン買い換えた?」
「え、ああ、二年の二学期かなあ、背え伸びたから買い換えた」
「それで、テカってないんやなあ……それでも丈はツンツルテン、じぶん、成人式ごろは進撃の巨人ぐらいいくんちゃうかあ」
「オレはバケモンちゃうぞ」
「セイ」
「ヒャウ! なにすんねん!?」
「いっちょまえに、腹筋カチカチやあ……瀬田も男になったんやなあ」
「お、おう。せやけど、勝手に触んな(#^△^#)」
「なんやったら、あたしのん触ってみる~」
「え?」
「あ、なんで胸見てんねん!?」
「見てへんわ(;'∀')!」
「いやあ、瀬田君も男になったんやねえ(ー_ー)!!」
「瀬田君、酒井さん、掃除当番でしょ、さっさとやんなさい!」
気いついたらペコちゃんセンセが怖い顔して立ってるやおまへんか。
掃除当番仲間はクスクス笑って、留美ちゃんは黙々と箒を動かしておりました。
えと、なんやったけ?
せや、進路希望! で、掃除当番やったんや!
言われへんかったら、そのまま帰ってるとこやった。
進路希望は……また考えます。
帰り道、留美ちゃんに言われた。
「瀬田君とジャレてなかったら、掃除当番忘れて帰るとこやったでしょ?」
えと……はい、その通りです(^_^;)。