ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)
第100話《モスラ~ヤ モスラ》さくら
夏休みは、ほとんど成果とか成長とかからは無縁で終わってしまった。
毎年のことだけど。
でも、まったく無かったわけでもない。しいて挙げれば二個ある。
一つがピーナッツを発見したこと。You Tubeを見ていたら偶然「発見」した。
アカぬけきっていあない少女たちが、ピーナッツの「情熱の花」と「ふりむかないで」歌って踊っている。少女たちのユニットをピンクピーナッツっていうんだけど、彼女たちを通して元祖ピーナッツに目覚めた。
ピーナッツには昭和の力がこもっていると思う。根拠はないよ。何年か前にナントカってデュオがピーナッツをリカバーライブ、お父さんが照れ隠しにあたしを連れて行った。「いやあ、娘が見たいって言うもんですから」という言い訳のため。
落語で似たようなのがあった。人前でオナラをする癖がある母親が、万一の言い訳のために息子を連れていく。ついていくと10銭の小遣いがもらえる。ところが、ある日、母親は二回も訪問先で放屁してしまった。
「まあ、この子ったら人様の前で二回も。もうしわけありません(^_^;)」
アカぬけきっていあない少女たちが、ピーナッツの「情熱の花」と「ふりむかないで」歌って踊っている。少女たちのユニットをピンクピーナッツっていうんだけど、彼女たちを通して元祖ピーナッツに目覚めた。
ピーナッツには昭和の力がこもっていると思う。根拠はないよ。何年か前にナントカってデュオがピーナッツをリカバーライブ、お父さんが照れ隠しにあたしを連れて行った。「いやあ、娘が見たいって言うもんですから」という言い訳のため。
落語で似たようなのがあった。人前でオナラをする癖がある母親が、万一の言い訳のために息子を連れていく。ついていくと10銭の小遣いがもらえる。ところが、ある日、母親は二回も訪問先で放屁してしまった。
「まあ、この子ったら人様の前で二回も。もうしわけありません(^_^;)」
「お母ちゃん、二回で10銭は安いよ(>▢<)!」
で、バレてしまうというおはなし。
あたしは、大人しくしていたし、お父さんが心配するように人に言い訳しなきゃならない状況にはならなかった。
でも、あたしが元祖ピーナッツにハマってしまった。ハマるといっても。動画でピーナッツを探して観たり聴いたり、スマホのマチウケにするほど浅はかでもない。
言っとくけど、あたしに音楽的才能なんてのは無い。ただ、なんとなくいいなあと思って聞いている。他にもキャンディーズ、中島みゆき、イルカ(名残雪だけ) かぐや姫、スマップなんか好き。ワクワクする。
ピーナッツというのは、そういうワクワクの源流みたいな感じ。
で、バレてしまうというおはなし。
あたしは、大人しくしていたし、お父さんが心配するように人に言い訳しなきゃならない状況にはならなかった。
でも、あたしが元祖ピーナッツにハマってしまった。ハマるといっても。動画でピーナッツを探して観たり聴いたり、スマホのマチウケにするほど浅はかでもない。
言っとくけど、あたしに音楽的才能なんてのは無い。ただ、なんとなくいいなあと思って聞いている。他にもキャンディーズ、中島みゆき、イルカ(名残雪だけ) かぐや姫、スマップなんか好き。ワクワクする。
ピーナッツというのは、そういうワクワクの源流みたいな感じ。
動画で『モスラ』のピーナッツを発見した。
ピーナッツが南の島の小人さんで、モスラを呼ぶときに「モスラ~ヤ モスラ~ ドゥンガカサクヤン インドゥムン……」と歌う。
これが、いつの間にか口癖みたくなって、つい「モスラ~ヤ モスラ~」と口ずさんでいる。モスラ~の下は言わずに、ただ「モスラ~ヤ モスラ~」を繰り返してしまう。
おねえちゃんに「ダスゲマイネよりはいいんじゃね」と言われて気が付いた。
そうなんだ、中三の夏休みに読書感想を書いて以来、ダスゲマイネが口癖だった。ダスゲマイネを言ってると破滅するというのがおねえちゃんの説。ググったら太宰は玉川上水で自殺している(;'∀')。それを知った時は、もう口癖っぽくなっていたんでピーナッツの「モスラ~ヤ モスラ~」は救世主みたいだ。
もう一つの成果は『はるか ワケあり転校生の7カ月』の発見。以前は『はるか 真田山学院高校演劇部物語』でネットに出ていた。タイトルを変えて本物の本になったのでビックリするやら、先見の明がビビッとするやら。
主人公のはるかが、今時こんな女子高生いるかって感じなんだけど。ちょっと抜けててピュアなところが、で、坂東はるかって女優さんのセミドキュメンタリー風。あたしのアンテナの周波数にあった。
今日は夏休み明けの短縮授業なんで渋谷Tデパートの本屋さんに行った。恵里奈は部活があるので、マクサを誘う。
「あ、絵の展示会やってる」
エレベーターの中でマクサがささやくように言った。
見ると印象派っぽい広告が貼ってあった。印象派は好きだしタダで観られるので、本屋さんの階は飛ばして催事場へ。
もう一つの成果は『はるか ワケあり転校生の7カ月』の発見。以前は『はるか 真田山学院高校演劇部物語』でネットに出ていた。タイトルを変えて本物の本になったのでビックリするやら、先見の明がビビッとするやら。
主人公のはるかが、今時こんな女子高生いるかって感じなんだけど。ちょっと抜けててピュアなところが、で、坂東はるかって女優さんのセミドキュメンタリー風。あたしのアンテナの周波数にあった。
今日は夏休み明けの短縮授業なんで渋谷Tデパートの本屋さんに行った。恵里奈は部活があるので、マクサを誘う。
「あ、絵の展示会やってる」
エレベーターの中でマクサがささやくように言った。
見ると印象派っぽい広告が貼ってあった。印象派は好きだしタダで観られるので、本屋さんの階は飛ばして催事場へ。
H・大林という人の絵だ。港を海側から見た絵で『魔女の宅急便』の冒頭に似たものを感じる。ヨットの帆柱が林立する向こうに、ローマ時代の水道橋が見えて、その下のあたりが入江か川でがあることを暗示している。印象派的な光の使い方もいいけど、見えないところに空間の奥行きを感じさせるところがいい。
このコンパクトでツボを押さえた評はマクサ。茶道家元の娘だけのことはある。
会場を出てエスカレーターに乗ると再びマクサがささやく。
「ちょっと、そのまま、ガラスに目の焦点合わせてみそ」
「ちょっと、そのまま、ガラスに目の焦点合わせてみそ」
「え、なに?」
「いいから……」
目のピントを変えて分かった。
ガラスには、あたしたちと同じ帝都の制服と乃木坂学院の制服のアベックが、絵を観ているのが映っていた。
乃木坂は、ぜんぜん方角違い。これは、乃木坂の男子が気を使って、渋谷にまで来て、絵の鑑賞をしながらのつつましいデート。
「ウラヤマ~」
マクサが呟く。あたしも、このアベックのありようをとても好ましく思った。だからして、お邪魔虫にならないよう、二人の視界に入らないように気を使った(n*´ω`*n)。
ここから問題なのよね!
一階下の本屋さんのフロアーに行ったら、また、このアベックに出くわした。本屋さんに来ることは問題なし。微笑ましいくらいに、あたしのアンテナには好ましく感じられ。
ところが、ところがよ。あとがダメダメ!
女の子は、ファッション雑誌のコーナーで若者向きのファッション雑誌見ながら「かわいい~」「いけてる~」を連発。よくよく見ると、甘ロリのところでキャピキャピ。男の子は、スマホでモバゲーとかやってる感じで、テキトーに返事。で、二人から感じられるのはイケてるオーラ。さっきのつつましさはどこ行ったんだ!
「ちょっ、よしなさいよ」
マクサの制止をを振り切って横に並ぶ。彼女と同じ雑誌めくって「サイテーのセンスだねぇ」と独り言。さすがに女の子はムッとして、こちらをチラ見。
「あ、佐倉さん!?」
目のピントを変えて分かった。
ガラスには、あたしたちと同じ帝都の制服と乃木坂学院の制服のアベックが、絵を観ているのが映っていた。
乃木坂は、ぜんぜん方角違い。これは、乃木坂の男子が気を使って、渋谷にまで来て、絵の鑑賞をしながらのつつましいデート。
「ウラヤマ~」
マクサが呟く。あたしも、このアベックのありようをとても好ましく思った。だからして、お邪魔虫にならないよう、二人の視界に入らないように気を使った(n*´ω`*n)。
ここから問題なのよね!
一階下の本屋さんのフロアーに行ったら、また、このアベックに出くわした。本屋さんに来ることは問題なし。微笑ましいくらいに、あたしのアンテナには好ましく感じられ。
ところが、ところがよ。あとがダメダメ!
女の子は、ファッション雑誌のコーナーで若者向きのファッション雑誌見ながら「かわいい~」「いけてる~」を連発。よくよく見ると、甘ロリのところでキャピキャピ。男の子は、スマホでモバゲーとかやってる感じで、テキトーに返事。で、二人から感じられるのはイケてるオーラ。さっきのつつましさはどこ行ったんだ!
「ちょっ、よしなさいよ」
マクサの制止をを振り切って横に並ぶ。彼女と同じ雑誌めくって「サイテーのセンスだねぇ」と独り言。さすがに女の子はムッとして、こちらをチラ見。
「あ、佐倉さん!?」
「あ、(学級委員長の)米井さん!」
同じクラスで、疎遠な米井由美と初めて会話を交わした瞬間だった。
同じクラスで、疎遠な米井由美と初めて会話を交わした瞬間だった。
その瞬間の後――同じことがあった――とデジャブ。
でも、もう口癖のダスゲマイネは出てこないで――モスラ~ヤ モスラ~――が出てくる。
ダスゲマイネは、なにか失敗とかダメだった時にポツンと出てくるだけだったんだけど、モスラは果てしなくリフレインする。
お父さんに貰った耳なしまねき猫に手を合わせて、やっと収まった。
☆彡 主な登場人物
- 佐倉 さくら 帝都女学院高校1年生
- 佐倉 さつき さくらの姉
- 佐倉 惣次郎 さくらの父
- 佐倉 由紀子 さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
- 佐倉 惣一 さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
- 佐久間 まくさ さくらのクラスメート
- 山口 えりな さくらのクラスメート バレー部のセッター
- 米井 由美 さくらのクラスメート 委員長
- 白石 優奈 帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
- 原 鈴奈 帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
- 坂東 はるか さくらの先輩女優
- 氷室 聡子 さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
- 秋元 さつきのバイト仲間
- 四ノ宮 忠八 道路工事のガードマン
- 四ノ宮 篤子 忠八の妹
- 明菜 惣一の女友達
- 香取 北町警察の巡査
- クロウド Claude Leotard 陸自隊員
- 孫大人(孫文章) 忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
- 孫文桜 孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
- 周恩華 謎の留学生