大橋むつおのブログ

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ホリーウォー・4[スグルのメモリーを集める・2]

2021-07-14 06:31:10 | カントリーロード
リーォー・4
[スグルのメモリーを集める・2]  


 
 
「あれは、極東戦争が、あっという間に終わった直後だった……」

 サブの話は極東戦争にまで、さかのぼった。
 
 半島は、カタチの上では、南が北を併合するという予想通りの解決をみたが、新統一政権の中には、かなり枢要なところに北の人間が入り込んで国の実権を握っていた。
 このどっちつかずの政権をアメリカも中国も静観していた。大きな動乱にならず半島が統一され、さほどの難民も出さず、戦いも起こさなかったからである。

 新政権は伝統的な事大主義はとらず、アメリカと中国を両天秤にかけることでたくましく新国家を創りつつあった。
 中国は、成長が限界に達し、貧富の差や民族問題の噴出にあえいでいた。
 党が軍と折り合いがついていたころはまだよかったが、党の枢要な者たちが海外に逃亡し始め、業を煮やした軍は矛先を日本に向けた。
 
 南西諸島に送り込んでいたスリーパーたちに蜂起させ、南西諸島の一部の独立運動に発展させた。
 
 二つの島が日本からの独立を宣言した。むろんスリーパーを中心とする傀儡であるが、ここにきて日本は、やっと目覚めた。
 自衛隊が一世紀以上前から変わらない自衛隊法の枠ギリギリのところで、間接侵略として対応、一週間あまりで島をとりかえした。

 やがて中国は、新半島国家も抱き込み、共同戦線を張って、なんと核ミサイルを撃ち込むという暴挙に出た。

 20発の多弾頭ミサイルが撃ち込まれ、日本はその19発までを、多弾頭に分裂する前に叩き墜とし、10発に分裂した子爆弾も8発を大気圏外で撃破、1発を一万メートルの上空で空自の戦闘機が破壊。
 
 残りの一発が大阪湾の湾岸近く500メートルの上空でさく裂。
 
 阪神地方を中心に10万人近い犠牲者を出した。史上三度目の核兵器の惨禍にみまわれ、目覚めた日本人は豹変した。
 
 核兵器をソフト化し、世界一と言われたアンドロイド技術と融合させた。あらかじめ核爆弾を内蔵したアンドロイドを作り、プログラムをインストールすることによって起爆するように、たった二か月でプロトタイプを造るところまでいった。
 
 この時代アンドロイドは、内殻以外は生体組織でできており、容易に人間との区別がつかない。その最終進化形がヒナタである。

 日本は、ヒナタのスペックを八割までセキュリティーを緩くすることで事実上公開していた。ハッキングの進んだ中国は九割まで情報をつかみ、密かにヒナタの破壊工作に出た。
 
 もっとも、そのころには中国は五つに分裂し、分裂したそれぞれが、戦争責任のなすりつけをやっていた。10万人の犠牲を出しながら、その責任はひどく曖昧なままになっている。世界が、それ以上の混乱ととばっちりを嫌ったからである。極東戦争は曖昧なまま事実上の休戦状態になった。この間わずか三か月でしかない。

「我々も分裂した中国を甘く見ていた……」

 それは、ヒナタ一般公開の日に起こった。
 
 日本らしく、ヒナタタイプのアンドロイドと、実際のアイドルグループの合同ライブというカタチで行われた。100人を超える出演者の中に本物のヒナタが混じっているという設定で、3時間近くのライブの終わりに本物のヒナタを当てるという、総選挙的な方式が取られた。
 
 実際は、その中に本物のヒナタはおらず、マニアが作ったものから、技研のプロトタイプまでの雑多な集まりでしかなかったのだが。

 本物のヒナタは、休暇中のサブやスグルたちとハワイに居たのだ……。

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