大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・270『島守睦仁とアルアル悟兵』

2025-01-21 11:31:22 | 小説4
・270

『島守睦仁とアルアル悟兵』 東鈴 





 にぎやかに氷室神社に参拝した後、そのままお岩食堂で歓迎会になった。


 お岩食堂は、カルチェタランのフロアと同じくらいの広さなんだけども、壁や天井に増改築した跡が見えて、氷室カンパニー(行政区的には南区らしい)発展の様子がうかがえる。

 悟兵が見せびらかすように、ゆっくりと筋斗雲を着陸させたこともあって、食堂は、とりあえず駆けつけた暇人やら、休憩中やら、サボってきたのやら、百人ほどが集まって賑やか。

 カルチェタランのある北大街も国籍不明の怪しい街だけど、ここは、その猥雑さから怪しさを引いた健康な陽気さがある。

「取りあえずはレプリケーターのアテで飲んどくれ! ランチの後で大したものは作れないけど、乾杯してる間に適当に作ってやるから!」

 お岩さんが宣言すると「オオ!」とか「分かった!」とか「了解!」とか返事があって、オッサン、ニイチャン、ネエチャン、ロボットに正体不明やらが酒やビールを注いだりレプリケーターに突進したり、なんとも猥雑で怪しい(^_^;)。

 怪しいんだけども、北大街みたいな落ちついた危なさは感じられない。

 悟兵とあちこち飛び回ったけど、ここの猥雑さは好きになれそうだ。

「みんな、とりあえず酒とアテは確保しただろ。ちょっと注目!」

「おお、サブも一人前になったアル」

「サブ?」

「ああ、昔は元気がいいだけの若造だったけど、フートンの主席代理になって大人になったアル」

「へえ、主席代理ぃ」

「殿下から、話があるから聞くように!」

 大方が静かになって、出入り口に近いテーブルの端っこから人の良さそうなオッサンが立ち上がる。

「申しわけない、一言だけ挨拶を」

 済まなさそうに言っただけで、少し残っていた喧騒も止む。いや、止むどころか全員が端近の、劇場で言えばほとんど立見席のそこに注目する。

「突然ではありますが、孫大人が筋斗雲に乗って戻って来てくれました。あ、つい嬉しいもので『戻ってきた』と言いましたが……本人もご異議がないようなので『戻ってきた』でいきます。西之島もようやく落ち着いて採掘作業やインフラの整備に掛かれるようになりました。島守としてこれほど嬉しいことはありません。ええと……とにかく、乾杯しましょう!」

 オオ!!!!

 すごい雄たけびが上がって乾杯すると、元の猥雑な酒盛りに戻ってしまう(^_^;)。

「済まない、孫大人。わたしだけが挨拶して、大人が話す間もなかった(-_-;)」

「いやいや、酒盛りは悟兵も好きアル。悟兵もあちこちで飲むから気遣いいらないアルよ」

「こちらは、新しい助手さんですか?」

「はいい、東鈴と云います。ちょと口やかましいアルけど、優秀アル。よろしくしてやってくださいアル」

「氷室睦仁です。改まった席では殿下を使っていますが、まあ、氷室鉱山の社長です。よろしく」

「東鈴です。改まった応対は苦手ですので、普通に話してかまいませんか?」

「ああ、むろんです(^_^)」

「あの、島守って呼称を使っていらっしゃったけど、あれは?」

 わたしのアーカイブに『島守』の呼称は無い。

「ああ、殿下という敬称が苦手なので発明しました」

「アハ、発明しちゃったんですか!?」

「自分では気に入ってるんですけどね、島を守るでシマモリ。防人(さきもり)に通じるカッコよさがあります」

「考えたアルね。音読みしたらシマノカミ(島の神)。現人神(あらひとがみ)のニュアンスに通じるアル」

「あ、それは無いですから(''◇'')ゞ」

 慌てて手をワイパーみたく振る。孫悟の十倍は誠実な人物のよう。

「大人も、アルアル語、可愛くていいですね」

「ああ、言ってやってくださいよ。そばで聞いていると気持ち悪くてぇ!」

「アハハ、気持ち悪がられてますよ」

「いいんじゃないですか」

「え、どうしてぇ!?」

「う~ん、距離感がいいと思います」

「距離感?」

「ああ、そうアル!」

「なによ」

「これ、厨房のお岩さんに持って行ってほしいアル」

「え、ああ」

「なんですか、これは?」

「マーマレードある。北京に寄ったら大統領にことづかったアル。あとで悟兵も行く言うといてアル」

「へいへい……あ……ちょっと……ごめんなさいね……通りますぅ……」

 昼時の学食みたいに混雑したホールを抜けて厨房のお岩さんに声をかける。

「お岩さん」

「え、あ、大人の?」

「はい、東鈴です。ボス、島守と話してるんで、預かりもの……」

「すまないね、手が離せないから、そこ置いといて」

「あ、はい」

『餃子10人前、唐揚げ10人前上がったぁ!』

 さっきのサル……ハナが鍋ふって、でもお岩さんは手が離せない、

「あいよ……」

「あ、あたし、手伝いましょうか?」

「え、すまないねえ。じゃ、5番テーブルだから、お願い」

「了解(^^ゞ」

 ヒョイヒョイとテーブルの間を縫って5番のテーブルへ。

「はい、おまち! 餃子10人前、唐揚げ10人前!」

 ドン ドン

 お皿を置いて気が付いた。真っ先にお箸を伸ばしてきた女の子(どう見ても小学生)が片手で生ビールをかっくらってる!

「ちょ、子どもがビール飲んじゃダメでしょ!」

「ム~、あたしは子どもじゃないんりゃから! ビールぐらい飲んでもかまわないのよしゃ~」

「どこがかまわないのしゃ~よ!」

 ギロ(≖△≖)

 ゲ、なんちゅう目つきだ! 




☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)

村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 

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