銀河太平記・272
「いや、気にしなくていいのよさ。考え事してゆと、他のことはお留守になってしまうのよさ……」
そう言って鼻の下までお湯に浸かって難しい顔の幼児体形、いやテル。
いや、扶桑科学研究所の主任研究員に呼び捨てはマズイ。
「こちらの、ちゃんとした名前は、なんて呼んだらいいのぉ?」
こっそりハナに聞いてみる。
「え、ああ……テル、おめえ、ちゃんとした名前はなんてんだ!?」
「え、あ、ちょ!」
本人に聞くなよ!
「あ、平賀照……」
気にすることも無く質問に応える。応えながらもハンベの仮想モニターを三つも出して調べものに余念がない。その表情は一人前の科学者のそれで、声をかけるのも憚られるよ。
真ん中のモニターにはいろんなロボットのスペックや3D図面が続々と表示され、両脇のセカンドモニターにはパーツの構成や組成や構造式やらが10倍速ぐらいで流れている。
「ああ、やっぱり現物見ないと分からないのよしゃ!」
モニターは青銅の騎士の三面図で停止した。
「あの、平賀博士……」
「え、ああ、ごめん……あ、呼び方はテルでいいのよさ」
「あ、いや、そんな(^_^;)」
「食堂のことなりゃ、もう気にしてないかりゃ、いいのよさ。で、あんたも島の人なのかにゃ?」
「え、あ、孫大人の秘書で東鈴といいます。昼に島に着いたばかりで」
「さっきの歓迎会、テルも出てたじゃねえかぁ(^▭^)」
「あ、ああ、えらく混んでゆと思ったら……」
「テルよぉ、風呂に入ぇるときぐらい、ハンベは止せよ、のぼせっちまうぞ」
ハナが注意する。なんだかお姉ちゃんが妹に言うみたいでおかしい(^_^;)
「え、あ、ああ、しょれもしょうなのよさ……」
ハンベは仕舞ったけど、心はまだ半分以上あっちに行ったまま。
「博士、青銅の騎士の研究をなさってるんですか?」
「え、あ、ああ、気になってりゅのよさ」
「あれは、頑丈で打たれ強いロボットでしたけど、弱点さえ分かればどうということのないしろものでしたよ」
「そうそう、ハナもマイさんといっしょに戦ったけど、コツさえつかめば楽勝だったぜ」
「え、二人ともあれと戦ったにょか!?」
「おお、バッチリな!」「わたしは観戦してただけだけど」
「話聞かしぇて!」
「お、おお」
あの戦いは、モンゴル軍の戦闘術と戦術的機動性、漢明軍の戦略的展開に見るべきものがあった。だから、はるばる火星からやってきての調査なら、そっちの方かと思ったけど、テル博士の着眼点はあくまでも、あのコケ脅しの青銅の騎士。
「関節は?」「首のサーキットは?」「ケーブルは?」「ジェネレーターは?」「反応速度は?」「姿勢制御系は?」「外殻の反発係数は?」「瞬発時の内殻温度は?」「外殻塗装は?」
矢継ぎ早の質問、そのほとんどは専門的過ぎて答えられるものではなかったけど、目の輝きと鋭さは見た目の体形と異なって、めちゃくちゃ鋭く、ハナもわたしもタジタジで、腕を組んだり天井を仰いだり。
「やっぱし、現物を見なきゃ分からないのよさ(>〇<)!」
ザップーーン
ユデダコみたいな顔で叫ぶと、そのまま仰向けにひっくり返って沈んでしまうテル博士だった(^_^;)。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟