大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・269『ハナとシゲジイ』

2025-01-15 11:14:47 | 小説4
・269

『ハナとシゲジイ』 東鈴 




「悟兵のオッサンもよ、フーちゃん連れてねえんだったら、こんな思わせぶりな着陸すんなよな!」

 むかつく言い方なんだけど、目に涙を浮かべ、口をへの字にしてプーたれる姿は純真そのもので、プイと背を向けた巫女服に声をかけてしまう。

「ごめんな。フーちゃんてのは漢明の胡盛媛中尉のことだな。そいつなら、劉宏大統領のとこで任務に就いてる」

「劉宏のとこでか、そうか……」

「そうアルヨ、ハナちゃん。こいつは東鈴、奉天で儂の秘書やってる。勉強のためにいっしょに連れて来た。仲良くしてやって欲しいアルね」

「そ、そうか、それなら仲良くしてやらねえこともねえ……オレ、ハナだ。めちゃくちゃ有能だから、そっちのお岩食堂と、こっちの氷室神社のあれこれを任されてんだ。分からねえことがあったらハナに聞け」

「任せた覚えはないけどな……まあ、こいつが居なきゃ食堂も神社も少々不便ではある」

 神主服のジジイが割って入ってきた。たぶん、シゲジイとかシゲ老人とか呼ばれてる名物爺さんだ。

「重田茂三、孫大人(たいじん)の秘書なら知っておろうが、この神社の神主をやっておる。あとでお参りしてくれると嬉しい」

「はい、心がけておきます」

「このジジイに敬語なんていらねえからな」

「そうなのか?」

「こら、余計なことを言うな」

「お、みんな集まってきたぞ!」

「そうか、じゃあ、まあ、とりあえずは神さまにご挨拶するアルか」

「おお、よい心がけじゃ。おーい、孫大人は最初に神社にお参りだ、お前らもいっしょにお参りせい!」

 シゲジイの声か、神さまの御威光なのか、集まった者たちはわたしらを先頭に境内に入った。

「え?」

 境内に入ってビックリした。 神社のハイデンという祠は、四隅の柱の上に神社らしい屋根が載っているだけでスカスカなのだ。

「この氷室神社の御祭神は、秋宮空子内親王、それと、ここから見える海と空じゃ。空と海がご神体、ゆえに拝殿のどこから拝んでもいいわけじゃ。ま、いまは太陽も南中しておるから、正面からでよいじゃろう」

 な、なるほど考えたもんだ。よく見ると、賽銭箱も正面のほか東西にもあって、どこからお参りしてもお賽銭が受けられるようになっている。

 合理的なような、がめついような。

「では、二礼二拍手一礼でいくからの。おっと、その前に……」

 シゲジイが言葉を呑み込むと、あちこちからお賽銭が投げ込まれる。

 チャリン チャリンチャリン チャチャチャリンリンリン

 みんな――ハメられた(^_^;)――という感じで、それでも人数を超える音がして、この島の陽気さと緩さが感じられる。この雰囲気は好きになれるかもしれない。

「さあ、じゃあ、うちの食堂で歓迎会だよ!」

 オオオオオオオオオオオ!

 大柄なオバサンが腕を振って赤屋根の食堂に誘うと山賊みたいな声が上がった。



☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

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