大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 41『ぜんぜんダメです(;'∀')』

2021-10-27 14:46:25 | ノベル2

ら 信長転生記

41『ぜんぜんダメです(;'∀')』  

 

 

 テニス部の部活が終わっての帰り道、織部を掴まえて聞いてみた。

 

「織部、みんなが生徒会長の名前にこだわるのはなぜなんだ?」

「いえ、信長先輩はきちんとできているので、いいですよ」

「なにが、きちんとなのだ?」

「いや、一発できめられるなんて、やっぱり信長先輩っすよ、織部、尊敬してしまいます!」

「尊敬はいいから、言え」

「いえ、実は……会長は、こちらに転生するときに、ちょっと手違いがありまして……」

「どんな手違いなのだ?」

「今川家の転生は代々八幡大菩薩の担当なんですけどね……」

「であろう、今川は源氏、源氏の氏神は八幡神と決まっている」

「はい、でも、本姓が源氏という武士はいっぱいいましてね。生徒会長の死は、だれも予見していませんでした……」

「で、あろうな」

 今川義元は、桶狭間で、俺が、たった三千の軍勢で討ち取ったのだからな。狙ったとは言え、奇跡のような勝利ではあった。

「急な討ち死にだったので、予約でいっぱいだった八幡大菩薩は間に合わず、浅間大神に頼んだんです」

「ああ、駿河一の宮であるな」

「浅間大神も忙しいお方で、いや、なんせ、本性は木花之佐久夜毘売ですから、ドンパチの戦国大名とは、ちょっと距離があります」

「で?」

「つい、登録名簿に、こう書かれたんですよ……」

 

 織部が空中になぞった文字は『今川吉本』であった。

 

「ん……あ、そうか」

 瞬間分からないが、数秒で思い至る。

「はい、正しくは『義元』です『吉本』ですと、その下に興行の二文字が付いてしまいます」

 吉本興業

「しかし、発音してみれば同じなのではないか?」

「いいえ、微妙にアクセントが違います!」

「織部は、美意識が強すぎる。どうでも良いことであろう」

「いえいえ、このために、吉本の呪いがかかってしまったんですよ!」

 世紀の大秘密を明かすように顔を近づけてくる。この異世界に来るだけあって水準以上の美少女なのだが、どうも目がイッテしまっているのはイタだけないぞ。

「吉本の呪いだと?」

「ええ、吉本興業の吉本のアクセントで一定の回数呼ばれてしまうと、生徒会長は吉本化してしまうんですよ……」

「吉本化? どういうことだ?」

「発する言葉が、全て大阪弁になり、勢力的に吉本ギャグを連発するようになってしまうんです」

「ウ……それは、なかなか、厳しいものがあるなあ」

「それを避けるために、会長に直接会えるのは、正確に『義元』と発音できるものに限られます」

「であったか……」

「でも、先輩は大丈夫ですよ、会長の真名を正確に言えるんですから」

「そうか……しかし、あいつを討ち取ったのは、この信長だぞ」

「それはいいのです。戦国の歴史に燦然とその名を遺した『桶狭間の戦い』で打ち取られたのです。先輩が討ち取られた『本能寺の変』とは事情も、美しさも違います。会長も、その点は、しっかりと理解されていると、三成も言っていました」

「で、あるか……吉本もいっぱしの戦国大名ではあったのだな」

「ちょ、先輩、今のアクセントは……」

「ん?」

「言ってみてください」

「今川……吉本、あ、いや、今の無し! 今川……吉本、あ、違う、今川吉本……どうだ?」

「ああ、ぜんぜんダメです(;'∀')」

「くそ、いったん秘密を聞いてしまうと、意識してしまって、今川吉本! あ、ダメだ!」

 織部は悲しそうな顔をしてスマホを出した。

「どこに電話する?」

「はい、利休先輩にです……」

 

 かくして、俺は、信玄同様に明日の茶会から外されることになってしまった(-_-;)。

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
  •  熱田敦子(熱田大神)  信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  •  宮本武蔵        孤高の剣聖

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