大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・邪気眼少女イスカの失踪④『もう一人のイスカ・2』

2016-06-25 13:27:25 | 小説
 邪気眼少女イスカの失踪④  
『もう一人のイスカ・2』

 暑いと思ったら、キャスケットを被ったままだった。

 でも脱ぐわけにはいかない。
 キャスケットは、月夜見尊(ツクヨミノミコト)からの霊波を受けて我が邪気眼を曇りなきものにしておくための必須アイテム。
 これがあるからこそ、海千山千の骨董屋がひしめく京の都で仕入れの仕事ができる。

「イスカはんにかかったら、しょうがおまへんわ」

 三条のハゲチャビンにこう言わせるのに二年かかった。ハゲチャビンは祖父よりも年上の骨董屋。
 最初は相手にされなかった。
 無理もない、あたしはセーラー服の女子中学生だった。おまけに目深にかぶったキャスケットは、かのレーニンにこそ相応しい代物。
 アキバや渋谷でこそ違和感がないだろうけど、京都で骨董の仕入れをするにはあんまりだろう。
「光雲晩年のものが三つ手に入りましたね」
 古物商免許を見せながら核心をついても相手にされなかった。
「本物は一つだけ、あとはお弟子の習作よ!」
 つまみ出されながらも忠告したことが当たって、それでも一年かかったのよね。

 今回の仕入れは一か月かかってしまった。

 うちは岐阜県の小さな骨董屋なので潤沢な資金は無い。
 わらしべ長者のように売っては買いの繰り返しで資金を十数倍に膨らませ、なんとか納得のいくものを五十点ほど買った。

 もう二三日はがんばろうと思っていたら夢を見た。

 だからキャリーバッグを曳いて魍魎駅のコンコースに戻って来たのよ。
「「「おひさー!」」」
 ティーンの女子高生らしい挨拶は同時になった。挨拶の相手は、もう一人のイスカと田中沙利菜愛利江留。
 あたしは一瞬で15歳の邪気眼電波女に戻る。
「もう、この一か月どこに行ってたのよ!?」
 田中沙利菜愛利江留がプータレる。
「いいよいいよ、いま話してもらったら、きっとサリナの名前より長い話になりそうだから」
 雲母坂イスカは、全部のみこんでるって顔で、あたしの前を歩きはじめた。

 こんなに頭が回転して、とっさの判断ができるような女じゃなかったんだけどな……雲母坂イスカの背中を見て思う。

「あっちーからさ、マックにでも寄っていこうよ。クーポン券持ってるから」
「お、いいね。ご飯前に少し血糖値上げとくのはダイエットにいいんだってさ」

 マックに向かいながら、お互い今までのイスカではないことを実感。

「この際提案なあだけど、お互いイスカだと紛らわしいからさ、ちょっと工夫してみない?」
 ダブルチーズバーガーに齧り付く前に提案した。
「オ、ということは、忽然と居なくなったりしないってことだよね?」

 雲母坂イスカは、チョー嬉しそうな顔をした。



※ 登場人物

 雲母坂イスカ       戦国時代の美濃の女忍者 今は高校一年生

 高台寺イスカ       もう一人のイスカ。雲母坂は高台寺の方こそがもう一人だと思っている。

 田中沙利菜愛利江留    イスカの親友 普段は略称のサリナで通っている

 西峰真之介        西峰流忍法宗家の息子


 

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