大橋むつおのブログ

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くノ一その一今のうち・39『おたまがいけ』

2023-02-04 12:04:46 | 小説3

くノ一その一今のうち

39『おたまがいけ』 

 

 

 甲斐善光寺を出て、三村紘一(課長代理が化けてる)の車で甲府市内のホテルに戻ってロケチームと合流する。

 

「なにか面白いことあったぁ?」

 顔を見るなりまあやが聞いてくる。

 ロケチームで借り切っている喫茶室なので、遠慮も警戒も無い。

「信玄の心を覗いてしまったかも……」

「え、信玄の心!?」

 反射のいいまあやは、鼻がくっ付きそうなところまで顔を寄せて話を聞きたがる。

「実はね……」

 まあやの好奇心に応えるべく、ことさら、秘密っぽく善光寺でのあれこれを話してやる。

 むろん裏稼業のことは秘密にしてね。

「わたしも行ってみたいなあ、心の字の形の地下迷路って、そそられるよね!」

「三村先生は、大いにインスピレーション掻き立てられたみたいだけどね」

「うん、三村先生って、結末で九個謎解きしても一個は謎のままにしてるでしょ。それって視聴者にも人気だけど、やっててもワクワクするのよねぇ。ほら、第二十回の『お玉が池由来』で、千葉道場ができたころの話があるでしょ?」

「ああ、龍馬たちが無茶ばっかりやるんで、師範が昔話して意見するとこだね」

「うん、建築費まけてもらうために神田祭の警備係りやったり、お化け退治やったり」

「うん、立ち回りやったら『その、すごみ過ぎ!』って怒られた(^_^;)」

「いっぱい、仕掛けのある回だったけど、肝心の――なぜ、お玉が池に道場を開いたのか!?――って謎解きは無かった」

「あ、そう言えば」

「でね、撮影が終わって先生が見えた時に聞いてみたの『なんで、お玉が池だったんですか?』って……ふふ、そしたらね(〃艸〃)」

「そしたら?」

「こっそり教えてくれたの」

「なんてなんて!?」

「江戸に来た時に、周作は、宿の飼い猫に『お玉が池がいいよ』って勧められるの」

「猫に?」

「うん、その猫の名前がね『お玉』って云ってね『お玉が行けと申したからだ』ってオチになるんだって! あ、これは最終回まで秘密だから、ノッチも人に言っちゃダメだよ」

「う、うん」

 それって、絶対に咄嗟の言い訳だよ(^_^;)。なんせ三村紘一の本業は徳川物産の課長代理、徳川忍者部隊の元締めだからね。

 寂しがり屋のまあやは、その後も話を聞いたり話したりで喜んでくれたんだけど、肝心の事を忘れていた。

「あ、いっけない!」

「どうしたの?」

 ちょっと待ってと、打合せから戻ってきた監督になにやら相談。

「ノッチが戻ってきたら、さな子さんのお墓に行こうと思ってたんだけどね、もう日が落ちて天気も悪くなってきたから今度にしなさいって」

「あ、ごめん、わたしも話し込んじゃったから!」

「ううん、めっちゃ楽しかったし、また今度。アハハ、『お玉が行け』といっしょ!」

 

 いい子だ、まあやは。

 

 けっきょく、その日は、お天気も崩れてきたので、撮影も無くなって、二人でお風呂入って晩ご飯。

 明日からは、遅れた分を取り返す。

 がんばろう。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

  

 


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