巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
遅くなってごめんね(^_^;)
すまなさそうに須之内写真館のロゴ入りの封筒をくれる直美さん。
「え……あ、すみません」
こっちもほとんど忘れていたんで、恐縮して受け取って「いくらですか?」と聞く。
「えと……遅れちゃったし、社員割引と合わせて200円でいいや」
「あ、どうもすみません」
財布から百円札を二枚出して支払いのトレーに載せる。
「ふふ、やっぱりお札の方が値打ちがあるように思えてうれしいね(^▽^)」
「アハ、喜んでもらえたら嬉しいです」
わたしのお財布は令和で補充しても戻り橋を渡ると昭和の通貨に変わる。
これはお祖母ちゃんの魔法のおかげなんだけど、なんせ、とっくの昔に引退した魔法少女。1971(昭和46年)だとすでに百円はコインになってるんだけど、いまだにお札になっている時がある。
サービスサイズで40枚の写真を受け取って学校に。
「えええ、一枚5円でいいんですか!?」
ロコがビックリして、他のみんなもニマニマやらニヤニヤして自分の分の写真を見ている。
真知子:「いやあ、友だちが写真屋っていうのはありがたいものね」
たみ子:「でも、いいの? 一枚5円て安過ぎじゃないの?」
真知子は素直に喜んで、たみ子は、ちょっと申し訳なさそう。佳奈子はロコといっしょに写真を見せっこしてウフフアハハと笑っている。
メグリ:「ああ、いいのいいの、直美さんからも『遅れてごめんなさい』って(^_^;)」
たみ子:「卒業の時は、須之内写真館で写真撮ろうか!」
真知子:「あ、それいいわね!」
ロコ:「今から予約しますぅ?」
佳奈子:「気が早いよ、修学旅行もまだなのに」
リアリストの佳奈子が締めくくって、また写真に目を落とす。
真知子:「しかし、江ノ島でよかったわねえ……」
たみ子:「そうねぇ、春休みに行っていたら二重になるところだった」
春休み、みんなで出かけようと言って果たせなかった。行先は江ノ島方面だったので渡りに船だった。
真知子:「ねえ、見本見せてもらったときも思ったんだけど、なんで踏切の写真が多いの?」
ロコ:「鎌倉高校前ですねえ」
たみ子:「いいんじゃない、坂の上から踏切見下ろして、その向こうに湘南の海。雰囲気だと思う」
ロコ:「そうですよね、加山雄三が歩いていそうですぅ」
佳奈子:「加山雄三ならヨットじゃないの」
ロコ:「いや、そういうステレオタイプじゃなくてですねえ」
真知子:「わたしは、海岸に下りていく吉田茂って感じだなあ」
たみ子:「ああ、国葬で学校休みになった!」
真知子:「いや、半ドンだったでしょ」
ロコ:「ああ、また国葬とかないですかねえ」
みんな:「不謹慎」
ロコ:「アハハハハ」
わたしもいっしょに笑ったけど、ヨシダシゲルって?
佳奈子:「ねえ、たまたま写り込んだんだろうけど、これ牧内さんだよね」
メグリ:「どれどれぇ……」
それは、サムエル・コッキング園でみんなで撮った写真。
佳奈子の後ろの方で江ノ島タワーを見上げてる牧内さんだ。
代議会とかで、すごい人だとは思ったけど、こうやって何気なくの姿を見てると、さすがに演劇部。彼女のところだけスポットライトが当たっているように見える。
たみ子:「やっぱり華があるわよねぇ」
ロコ:「あ、ちょっと栗原小巻に似てるかもです!」
みんな:「あ、ああ……(°▽°(°▽°)°▽°) 」
え、クリハラコマキって?
ひとり取り残されてると、食堂のおばさんに「そろそろ閉めるよ~」と言われた(^_^;)。
五時を回って下校しても、まだまだ昼間のように明るい。
二年目の昭和は、そろそろ夏の予感がした。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 上杉(生徒会長)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人