鳴かぬなら 信長転生記
「「「なぜだ!?」」」
三人の声が揃った。
俺たちが変身したのは、サル(信長) ブタ(市) カッパ(茶姫)の三人、いや、 三匹だったのだ!
「お兄ちゃん、サルに似てる!」
「いや、似てるどころか猿そのものだろう?」
俺たち兄妹がいうサルは、茶姫の頭に浮かんだ猿ではない。秀吉のことだ。
「で、わたしは、なんでブタなのよ(`_´)?」
これまで、扶桑でも三国志でもいろんな目に遭ってきたので、少々のことでは驚かないが、ブタにされた市は機嫌が悪い。
「ああ……まあ、ブタにしては器量がいい方ではないか」
「んもーー!」
両手で顔をクシャクシャする市……すると、鼻だけが人間に戻った。
「ん~~ブタ面に鼻だけが人間というのも気持ちが悪いかもなあ」
茶姫が腕組みをする。
「じゃあ、目だって!」
もう一度クシャクシャすると、目も人間になったが、気持ち悪いのに変わりはない。
「もういい!」
ブルっと首を振ると、元のブタに戻った。
「茶姫はカッパでいいのか?」
「ああ、まあ、わたしは泳いでいる時がいちばん自由を感じるから、まあいい」
ああ、そう言えば、成都からの帰り道のことを思い出す。
魏・蜀・呉の緩衝地帯の川辺で小休止したとき、茶姫は水着に着替えて泳いでいた(80『突然の小休止』)。
あの時の茶姫は一番自由な感じだったな……そこを狙って写真を撮りまくっていた孫権も分かっていたんだ。
しかし、その後、すぐに現れた曹素によって反乱軍に仕立て上げられ、それ以来の逃避行だ。
茶姫には忸怩たる思いがあるのだろう。
「しかし、この組み合わせは西遊記のようだな」
茶姫の言葉に互いを見ると、得物こそ持ってはいないが西遊記の組み合わせだ。
「孫悟空にしては、頭に輪が無いよ。あの輪って、戒めなんだろ? 悪さするとキリキリ絞まるんだ。平手の爺が話してくれたよ」
「あれは緊箍児(きんこじ)と言うんだ。三蔵法師が呪を唱えると絞められる」
「ん?」
茶姫が思いつくと、指輪が抜け、あっと言う間に大きくなって、俺の頭に収まった。
「一言主、じぶんで間に合わせおった」
「というか、肝心の三蔵法師が居ないでしょ?」
「三蔵法師が遅れていて、我々三人で待っている的な?」
「あ、なんか『ゴドーを待ちながら』的な?」
「ウラジミールとエストラゴン……シイが余るな」
「ちょ、なんなのよ『ゴドーを待ちながら』って?」
「ダメだ、市のような奴には通じないぞ」
「そうだな、それに『三蔵法師を待ちながら』では動きが取れない」
「それに、飛行機どうにかしないと。前のよりも大きいから、穴掘って埋めるのも大変だよ」
ブブブ ブブブ マナーモードのスマホが震えた。
「ん、あ、忠八からだ……」
『よかった、なんとか圏内ですね。みなさんの姿……あ、西遊記ですね。分かりました、こっちで操作します……』
スマホの向こうで、なにやらピコピコと音がする。
『ちょっと離れていてください、飛行機を変態させますので』
「「「おお」」」
ハタハタハタ……
かそけき音がして紙飛行機が畳まれた……かと思うと、次には、直ぐに展開して白馬に変わった。
「すごい、忠くん、馬になったよ!」
「おお、見事な白馬だ。玉龍の化身として十分通用する」
「しかし、馬だけ居てもなぁ、肝心の三蔵法師が居らんぞ」
『馬になって小さくなった分、ポリゴンに余裕がありますんで……』
ハタハタハタ……
再びかそけき音がすると、馬の背に三蔵法師が現れた。
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ)