日本でむつかしいこと(アリスの日記より抜粋)
☆ピストルを手に入れること(だから、この大阪でも、たいがい気楽に歩いていける)
☆日本人の気持ちを正確に知ること(「結構です」はほぼ否定の意味。「びみょう」の意味が微妙に分かりにくい)
☆日本人に正確に気持ちを伝えること(なんせ、わたしの日本語は半世紀前の大阪弁。他にも理由いろいろ)
☆日本人の気持ちを正確に知ること(「結構です」はほぼ否定の意味。「びみょう」の意味が微妙に分かりにくい)
☆日本人に正確に気持ちを伝えること(なんせ、わたしの日本語は半世紀前の大阪弁。他にも理由いろいろ)
で、二番目と三番目の問題が、アリスのミッション遂行の壁になっている。
まず、直球であたってみた。
まず、直球であたってみた。
――ちよこが すきなひとてだれ?――
テストの最終日、ホームル-ムの時間にメモを回した。ちなみにアリスは、漢字が、ほとんど分からないため、誤解したり、されたりしないために、文章のやりとりはひらがなを使っている。
「そんなん、言われへん!」
あとで、あっさり千代子本人に言われてしまった。
そこで、クラス一番の情報通と言われるマユに聞いてみた。
「うちらのクラスのソシオメトリーについて聞きたいねんけど」
「なに、そのソシオ……とか言うもんは?」
「ああ、つまり……だれが、だれと仲がええとか、気いが合うとか……ええと、こんなん」
アリスは、クラスの人間全員の名前をざら紙に、ばらばらに書いた。
「たとえば、クラスで一番好かれてる人間を、好いてる人間から線ひくねん」
で、サンプルに、アリスは、自分の名前から、千代子とマユに矢印を引いた。
「あ、そういうことか」
自分に線を引いてもらって気をよくしたマユは、なんとクラス全員の名前からアリスに矢印を引いた。
「あ、国際親善してくれるのは、うれしいけど……もっと、なんちゅうか……」
「あ、ラブラブ関係!?」
そこで、クラス一番の情報通と言われるマユに聞いてみた。
「うちらのクラスのソシオメトリーについて聞きたいねんけど」
「なに、そのソシオ……とか言うもんは?」
「ああ、つまり……だれが、だれと仲がええとか、気いが合うとか……ええと、こんなん」
アリスは、クラスの人間全員の名前をざら紙に、ばらばらに書いた。
「たとえば、クラスで一番好かれてる人間を、好いてる人間から線ひくねん」
で、サンプルに、アリスは、自分の名前から、千代子とマユに矢印を引いた。
「あ、そういうことか」
自分に線を引いてもらって気をよくしたマユは、なんとクラス全員の名前からアリスに矢印を引いた。
「あ、国際親善してくれるのは、うれしいけど……もっと、なんちゅうか……」
「あ、ラブラブ関係!?」
「声大きい!」
言った自分の声が大きいので、みんなの注目を集めるが「アハハ」と笑ってごまかす。
「……まかしなさ~い! 人に見られても分からんように、出席番号でやろか……」
マユは、またたくうちに、暗号表のようなソシオメトリーを完成させた。
「この色の違いは?」
「ああ、青の方の矢印は淡い片思い。両矢印は淡い両思い。赤は強烈な片思いと両思い」
「この外に向こてるのは?」
「それは、クラス外の子との関係」
「この大杉クンはおかしいやろ!?」
大杉からは、極太の方矢印がアリスに向けられていた。
「大杉クンて、ウチに一番冷たいよ。なんか無視されてるしい」
「それて、愛情の裏返し。でも言うたら、ブロンドコンプレックス。大杉は、いまだに昭和を引きずっとる」
「マユ、あんたのは、あれへんね?」
「よう見てみい」
よく見ると、マユの出席番号の真ん中に小さな点が打ってあった」
「この点……なにい?」
「ここから矢印が、はるか空の上、宇宙に伸びていってんねん」
「ええ……?」
アリスは、マユといっしょに天井を見上げた。
「星の王子さま~な~んてね!」
煙に巻かれたアリスだが、千代子と東クンが太い青線で結ばれていることが意外だった。
「この太い青線は?」
「ほんまは赤で書いてもええねんけど、この二人は、互いに気持ちがありながら、絶対気持ちを伝えよらへん。で……」
「え……?」
「アリスは、なんで、こんなもん知りたがるわけ? 冷静になったら、ちょっとギ・ワ・ク」
「ああ、シカゴ帰ったらレポート書かなあかんねん。それで、日本の若者の愛情表現をテーマにしよ思て……」
「ああ、留学生いうのんも大変やなあ」
マユは、意外にあっさりと、この苦し紛れを信じてくれた。アリスは、自分の演技力に自信も持ったが、日本人は、アメリカを簡単に信じすぎるとも思った。
マユは、またたくうちに、暗号表のようなソシオメトリーを完成させた。
「この色の違いは?」
「ああ、青の方の矢印は淡い片思い。両矢印は淡い両思い。赤は強烈な片思いと両思い」
「この外に向こてるのは?」
「それは、クラス外の子との関係」
「この大杉クンはおかしいやろ!?」
大杉からは、極太の方矢印がアリスに向けられていた。
「大杉クンて、ウチに一番冷たいよ。なんか無視されてるしい」
「それて、愛情の裏返し。でも言うたら、ブロンドコンプレックス。大杉は、いまだに昭和を引きずっとる」
「マユ、あんたのは、あれへんね?」
「よう見てみい」
よく見ると、マユの出席番号の真ん中に小さな点が打ってあった」
「この点……なにい?」
「ここから矢印が、はるか空の上、宇宙に伸びていってんねん」
「ええ……?」
アリスは、マユといっしょに天井を見上げた。
「星の王子さま~な~んてね!」
煙に巻かれたアリスだが、千代子と東クンが太い青線で結ばれていることが意外だった。
「この太い青線は?」
「ほんまは赤で書いてもええねんけど、この二人は、互いに気持ちがありながら、絶対気持ちを伝えよらへん。で……」
「え……?」
「アリスは、なんで、こんなもん知りたがるわけ? 冷静になったら、ちょっとギ・ワ・ク」
「ああ、シカゴ帰ったらレポート書かなあかんねん。それで、日本の若者の愛情表現をテーマにしよ思て……」
「ああ、留学生いうのんも大変やなあ」
マユは、意外にあっさりと、この苦し紛れを信じてくれた。アリスは、自分の演技力に自信も持ったが、日本人は、アメリカを簡単に信じすぎるとも思った。
おっと、問題は千代子と東クンだ。アリスの奮闘は続く……。