飛行機の旅は、私にとって特別な時間だ。
大地に鳴り響くゴー、というとどろく轟音のあと
ふわりと宙に浮く瞬間、
自分を取り巻く日常のすべてから
完全に解き放たれる。
今ここで、何を考えても
何を悩んでも
どうにもならないのだ。
だって、空の上だから。
そして、純粋に私は私だけに戻る。
普段は、否応なしにあれこれと
無意識のうちに感情や言葉や、
記憶やら、肉体の感覚などが
自分の内側に湧きあがったり、
自分と他者との間で
行き交うやり取りが
日々交錯し、それに追われて
あっという間に流れていく。
瞑想やら、呼吸法や、体を動かすことも、
さぁ、しよう!と自らの意志によって
始まるのけれど、
飛行機に乗ると、自分の思いとは関係なく
「無我」の世界に連れていってくれる。
しばらく、ボーっと眺めていると
時折、ハッと何かに気づいて目を凝らす。
山なみや川、海岸線や湖、小さな島、岬の地形の
上空から見ると
そこが日本のどの辺りなのかを確認したくて
急いで座席の機内誌の
一番最後にある路線図を広げることにしている。
気持ちよく晴れた朝や、
透き通るような夕暮れ時、
日本地図と同じ形が
まるで博物館のジオラマを見ているように
この眼で確認できると
なぜだか小踊りしたくなるほど嬉しい。
オーストラリアから帰国した息子が
「オレさぁ、顔や体のどこかに
転んだりケガした時のキズが
ちょっとある女の子って
いいな~って思うんだ。
あぁ、生きているんだな、ってかわいくなるんだよね。
自分がスケボーとかで、転んだりして
痛い思いして、すり傷とかした時もおんなじように思うんだ。
生きてるんだな。って。
だから、痛いことを恐れることもないんだよね。」
なんて言っていた。
親たちは、顔にキズがつくと
「キズモノ」になりはしないか、と
なんだか不憫に思ってしまうこともあるが、
それを生きている証、と捉える視点に
少しびっくりした。
ちょっと違うけど、
私は空から地上を眺めている時に
生きていることを実感するんだな~と思う。
いつだったか、空からみた淡路島。
想像していたよりもずっと大きかった。
複雑な入り江になっていたり
無数に点在する
瀬戸内海の小さい島々。
四国へとつながる瀬戸大橋。
九十九里浜のゆるやかな
カーブの海岸線。
東北地方の深い山々。
関西地方の前方後円墳が
空から見えたときは感動した。
本州から、九州に渡る瞬間。
北海道に向かう海の上。
今日は、
薄墨を空にこぼしたような色になったな、と
思った瞬間、遠くに富士山が幻想的に姿を見せてくれた。
右側にも雲海からのぞく山脈が続き、
まるで墨絵の世界。
東北方面にさしかかると、
今度は真っ白な真綿を
うっすらと広げた青空の合間から
地上が見える。
猪苗代湖のあと、十和田湖だろうか?
地図で探すけれど、確信が持てない。
ほどなくして、二重の小さな
窓ガラスは薄ねず色の雲一面となり、
空も地上もなくなった。
高度が下がり、機内が前に傾きはじめて
しばらくすると、急に
蛇行した細い川が目に飛びこんできた。
これぞ、北海道の大地の風景。
そして、初秋の畑は
グリーンや茶色、ベージュと
まるで、パッチワークのようで
本当に美しい。
着陸寸前はデジカメも携帯も
電子機器は使えないので
いつも、写真に撮りたいのに、
惜しいな~と思いつつあきらめていた。
…だけど、閃いた!
本日デビューの手動式トイカメラ!
これなら、バッチリ~♪と思ってパチリ!と
しようとしたら、
どっちのネジを回しても
フィルムが送られず
シャッターが押せない~!
わ~!せっかくのチャンスなのに~!
…結局、念願のパッチワークは一枚も取れず
また来年のお楽しみに。
新千歳空港に到着後、
すぐにポパイカメラに電話した。
またまたかわいい声の店員さんが
は~い、サバ缶ですね!
右側の矢印のあるほうを回してくださいね!
左側はゼッタイ回さないでくださいね~♪
と感じよく教えてくれた。
きゃー、おもいっきり
いっぱい回しちゃいましたぁ~!
やさしい店員さんの声のトーンが
急に曇った。
あ~…たぶん大丈夫だと…
思います…。まぁとりあえず写してみてください…
地上に降りるなり、いきなりの現実に
引き戻される。
やっぱり、すべてから解放されて
無我の境地は
なかなかムズカシイ。
だからこそ、私にとって極上の時間。
天空パノラマの世界。
大地に鳴り響くゴー、というとどろく轟音のあと
ふわりと宙に浮く瞬間、
自分を取り巻く日常のすべてから
完全に解き放たれる。
今ここで、何を考えても
何を悩んでも
どうにもならないのだ。
だって、空の上だから。
そして、純粋に私は私だけに戻る。
普段は、否応なしにあれこれと
無意識のうちに感情や言葉や、
記憶やら、肉体の感覚などが
自分の内側に湧きあがったり、
自分と他者との間で
行き交うやり取りが
日々交錯し、それに追われて
あっという間に流れていく。
瞑想やら、呼吸法や、体を動かすことも、
さぁ、しよう!と自らの意志によって
始まるのけれど、
飛行機に乗ると、自分の思いとは関係なく
「無我」の世界に連れていってくれる。
しばらく、ボーっと眺めていると
時折、ハッと何かに気づいて目を凝らす。
山なみや川、海岸線や湖、小さな島、岬の地形の
上空から見ると
そこが日本のどの辺りなのかを確認したくて
急いで座席の機内誌の
一番最後にある路線図を広げることにしている。
気持ちよく晴れた朝や、
透き通るような夕暮れ時、
日本地図と同じ形が
まるで博物館のジオラマを見ているように
この眼で確認できると
なぜだか小踊りしたくなるほど嬉しい。
オーストラリアから帰国した息子が
「オレさぁ、顔や体のどこかに
転んだりケガした時のキズが
ちょっとある女の子って
いいな~って思うんだ。
あぁ、生きているんだな、ってかわいくなるんだよね。
自分がスケボーとかで、転んだりして
痛い思いして、すり傷とかした時もおんなじように思うんだ。
生きてるんだな。って。
だから、痛いことを恐れることもないんだよね。」
なんて言っていた。
親たちは、顔にキズがつくと
「キズモノ」になりはしないか、と
なんだか不憫に思ってしまうこともあるが、
それを生きている証、と捉える視点に
少しびっくりした。
ちょっと違うけど、
私は空から地上を眺めている時に
生きていることを実感するんだな~と思う。
いつだったか、空からみた淡路島。
想像していたよりもずっと大きかった。
複雑な入り江になっていたり
無数に点在する
瀬戸内海の小さい島々。
四国へとつながる瀬戸大橋。
九十九里浜のゆるやかな
カーブの海岸線。
東北地方の深い山々。
関西地方の前方後円墳が
空から見えたときは感動した。
本州から、九州に渡る瞬間。
北海道に向かう海の上。
今日は、
薄墨を空にこぼしたような色になったな、と
思った瞬間、遠くに富士山が幻想的に姿を見せてくれた。
右側にも雲海からのぞく山脈が続き、
まるで墨絵の世界。
東北方面にさしかかると、
今度は真っ白な真綿を
うっすらと広げた青空の合間から
地上が見える。
猪苗代湖のあと、十和田湖だろうか?
地図で探すけれど、確信が持てない。
ほどなくして、二重の小さな
窓ガラスは薄ねず色の雲一面となり、
空も地上もなくなった。
高度が下がり、機内が前に傾きはじめて
しばらくすると、急に
蛇行した細い川が目に飛びこんできた。
これぞ、北海道の大地の風景。
そして、初秋の畑は
グリーンや茶色、ベージュと
まるで、パッチワークのようで
本当に美しい。
着陸寸前はデジカメも携帯も
電子機器は使えないので
いつも、写真に撮りたいのに、
惜しいな~と思いつつあきらめていた。
…だけど、閃いた!
本日デビューの手動式トイカメラ!
これなら、バッチリ~♪と思ってパチリ!と
しようとしたら、
どっちのネジを回しても
フィルムが送られず
シャッターが押せない~!
わ~!せっかくのチャンスなのに~!
…結局、念願のパッチワークは一枚も取れず
また来年のお楽しみに。
新千歳空港に到着後、
すぐにポパイカメラに電話した。
またまたかわいい声の店員さんが
は~い、サバ缶ですね!
右側の矢印のあるほうを回してくださいね!
左側はゼッタイ回さないでくださいね~♪
と感じよく教えてくれた。
きゃー、おもいっきり
いっぱい回しちゃいましたぁ~!
やさしい店員さんの声のトーンが
急に曇った。
あ~…たぶん大丈夫だと…
思います…。まぁとりあえず写してみてください…
地上に降りるなり、いきなりの現実に
引き戻される。
やっぱり、すべてから解放されて
無我の境地は
なかなかムズカシイ。
だからこそ、私にとって極上の時間。
天空パノラマの世界。