2011.05.02.より
母:鬼みたいな顔して!
人にばっかええ顔して、うちの中ではめちゃくちゃや。
世話になっとる旦那に礼の一つも言わんとおいたら、
えらい死に目にあうでー!
よう覚えとき!
それはそれは、凄いど迫力!
しかし、私が母に何をしたわけでもなく、突然である。
(私はいたって普通の顔でいたので、あしからず)。
ここで、「おかしい」と思えばいいのだが、
たじろぐ私がいる。
「いやいや、ちょっと待てよ」。
ともう一人の私がいさめてくれる。
「そりゃ、あんたは、内と外の顔は違うわ。
でも、そりゃ普通やで。
そりゃ、別れた旦那にも養育費のこともよくしてもらった。
でも、あんたかて、
子どものそばでできることはやった。
ようがんばった。
自信持ち!
それより・・・
今、お母さんは、お母さんか?」
そうだっ!
そこで、私は「母」でもない、他の何者かに向かって、毅然と聞いた。
娘:あなたは、どなたですの?
母:わしゃ、鬼の親戚や。
娘:鬼の親戚ですか・・・
鬼の親戚が何の用やの。
ここは、あんたのくるとこやない!
鬼は鬼の場所がある。
とっとと、帰って!
私も負けじと、どすを効かせて言う。
すると、母の表情が急に変わった。
しばらく、じっと私の顔を見ていたのだが、徐に口を開いた。
母:鬼さんがねえ、仲良くしたいわって、言うてたよ。
娘:えっ、なんやあ、仲良くしたかったんやって?
それならそうとわかるように言ってくれやんとなあ。
母:鬼はこわい、鬼はこわいって決めつけやんといてって、泣いとったよ。
娘:あ、そうなん。
母:鬼にも優しい鬼もおるでなあ。
娘:そうやわ。確かに・・・。
そう言えば、鬼はこわいって、いつからなったんやろ・・・?
ふとそこで思い出した。
酒瓶、杯片手に大口で笑っている二人の鬼の人形。
以前行っていたデイサービスの玄関に置いてあったのだが、
それを見るたびに母が毎回毎回大笑いしていたそうだ。
ところが、その鬼にそんなに反応する人は他にいないからと、
母が辞める時に記念にくださったのだ。
それを持ってくると・・・
母:なあ、こんなにニコニコかわいい鬼もおるもんなあ。
それからしばらく、母と私は「鬼」で大笑い。
盛り上がった、盛り上がった。
そして、最後に母は言った。
「ああ、よかった。
やっぱり、あんたは鬼の子やいうて、喜んでたわ。
よかったねー」。
一線引けた自分、そして、否定せず母の世界に行けた自分に拍手!
それにしても、認知症の人の物語作りは、実に巧みだ。
私がもし、同じ立場なら全く違う対応をして
きっともっと混乱させてしまうと妙な自信があります。
お母さんとの大切な時間をすごされてるのだと
ブログを拝見しておもいました。
いろんな世界に行くのがうまくなってきたかあ(^^)
ぼちぼち行きますわ
杯片手にね。
だって、鬼の子ですから。