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“菅氏「反中包囲網」を否定”

2020-09-14 16:06:52 | メモ帳

9月12日、自民党総裁選の立候補者、石破、菅、岸田の3氏による公開討論会が開催された。産経新聞は翌13日、「菅氏『反中包囲網』を否定」という見出しでこの件を報じたが、3氏のいろいろな発言の内から、菅氏のこの発言を最重要視したと解せられる。

記事から引用する(赤字)。

菅氏は多国間同盟・北大西洋条約機構(NATO)に範をとった「アジア版NATO」について「反中包囲網にならざるを得ない」との理由で否定し、日米同盟を基軸とした外交を展開する考えを示した。

アジア版NATOは石破氏が提唱する構想。菅氏から狙いを聞かれた石破氏は「中国やロシアを排しているわけではないとし、自由や法の支配など価値観を共有する国々のネットワークだと説明した。

これに対し、菅氏は「敵、味方を作ってしまう恐れがある」と反論。「ハイレベルの機会を活用し、主張すべきは主張し、課題を解決していく」と述べた。

この記事の文脈はわかりにくいが、要するに菅氏の主張は「反中包囲網に参加せず、ケースバイケースで中国と対峙する」ということだと解釈する。この意見は、当たり障りがないように聞こえるが、菅氏を支持する二階氏の意向を汲んでいると推測する。

二階氏は米国に親中派として批判されており、米国政府は菅氏の発言に不快感を持ったと推測する。ポンぺオ国務長官が7月、「自由主義諸国が連携して中国の脅威に対抗しよう」と呼びかけたことに反するからである。

米中の激突は激しさを増しており、米国は中国のファーウエイ、ZTE、ハイテラ、ハイクビジョン、ダーファの5社を懸念企業に指定し、この5社と取引がある企業は、外国企業といえども米国政府機関とは取引できなくなった。この影響を受ける日本企業は8千社にのぼるという(「親中派の崩壊」黄文雄著 89ページ)。

また、米国商務省はファーウエイを輸出規制の対象として、米国企業がハイテク技術をファーウエイに提供・輸出することを禁じており、外国企業もこの規制の影響を受ける。

すなわち、日本企業も米中の情報戦に巻き込まれ、日常のビジネスに多大の影響が出ているはずである。

一方、英国、カナダ、豪州などの自由主義諸国は、米国につくという旗幟を鮮明しており、世界が分断される流れになっている。

産経は社説の見出しで「総裁選討論会:対中認識が甘すぎないか」として、その文中でも「ポスト安倍政権がこの問題を素通りできるとは思えない」と日本政府の対応に懸念を示している。

安倍首相は、一時的ながら習近平国家主席の国賓訪日を要請するなど、米中間に置ける日本の立ち位置を明確にしていなかった。安倍政権の政策を受け継ぐと言明した菅氏は、首相に就任すればまずこの難題に遭遇する。

産経の社説は「菅氏は対中問題で米国と戦略のすり合わせを行うと表明すべきだ」と結んでいるが、その意味するところは事実上、“自由主義諸国の対中戦略に従え”ということであろう。

世界の政治的分断は経済的後退を招くが、最近の中国の横暴ぶりを見ると、一歩後退はやむをえない。日本政府も立ち位置を明らかにせざるを得ない時が来た。産経の主張は、現在の世界情勢を考えれば、ごく当たり前の意見だと考える。