朝日新聞は徴用工問題に関する社説(11月4日)で、“日韓両国は協議を加速させ、危機を回避すべきだ”と述べた。これに対して、ネットでは“協議を加速させるということは妥協を意味する。あくまで日韓請求権協定の順守を迫るのが筋だ”という意見が大勢を占める。無論、爺も同意見である。
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この社説には伏線があった。それは、10月31日付の朝日新聞の記事<韓国「賠償に応じるなら穴埋めする」元徴用工問題で>から引用する(赤字)。
元徴用工への賠償を日本企業に命じた韓国大法院(最高裁)判決をめぐり、韓国政府が「企業が賠償に応じれば、後に韓国政府が全額を穴埋めする」との案を非公式に日本政府に打診していたことがわかった。日本政府は1965年の日韓請求権協定で賠償問題は解決済みとの立場から、提案に乗らなかった。2年前の判決を機に悪化した日韓関係は、改善の見通しが立たない状況が続いている。
日韓請求権協定で解決済みとの原則を崩さない日本政府は「大法院判決は国際法違反」とし、韓国側に日本が受け入れ可能な解決策を示すように求めてきた。日本政府は「現金化となれば深刻な状況を招く」(茂木敏充外相)と繰り返す。安易に韓国側の提案を受け入れれば、前例となって同様の訴訟を次々に起こされかねないとの懸念もある。
日韓両政府の関係者によると、韓国大統領府は今年に入り、日本との関係改善に向けて、盧英敏大統領秘書室長を中心に徴用工問題の解決案を検討。大法院判決を尊重するとの文在寅大統領の意向を踏まえ、今春に穴埋め案を打診したが、日本政府側は「企業の支出が補塡されても、判決の履行には変わりなく、応じられない」と回答した。(以下省略)
言うまでもなく、「企業が賠償に応じれば、後に韓国政府が全額を穴埋めする」という韓国の提案は、とんでもない話である。この提案が表沙汰になれば、韓国政府は国民に弱腰と非難されるだろう。実際に “土着倭寇(親日派)は青瓦台にいたのか、事実だとすれば大きな問題になる。青瓦台が国民をだまそうとしたことになる”という意見もある(陳重権元東洋大教授)(朝鮮日報)。
また、朝日も指摘しているように(下線部分)、次から次へと何百人、いや何千人の自称「徴用工」が名乗り出ることが予想されるから、これでは根本的解決にはならない。
要するに、この提案は韓国政府のメンツを守ることが目的であることが明白であり、極秘事項でなくてはならない。その極秘事項を朝日がすっぱ抜いた。「今春」の出来事がなぜ今頃表面化したのか不思議だが、見事な特ダネである。
さて、この特ダネ記事の後を追うようにして、朝日は「協議を加速せよ」と社説で主張した。特ダネ記事を契機として、社内に問題意識が高まったのだろう。冒頭に述べたようにネット民はこの社説に反発しているが、爺は朝日の宥和的態度を素直に受け止めたい。
しかし、残念なことに朝日は具体的な解決策を提示していない。その点で、数週間前、産経新聞紙上で黒田勝弘氏が、“日本は韓国をホワイト国(輸出管理問題)に戻して文大統領に花を持たせる一方、徴用工問題は韓国内で解決させる”ことを提案していたが、適切な意見だと評価する。
但し、無条件にホワイト国に戻すのではなく、韓国が輸出管理態勢における改善の跡を具体に証明することが必要である。さらに、ホワイト国に戻すことを先行させず、徴用工問題と並行して交渉すべきである。
要するに、文大統領を窮地に追い詰めるのではなく、文大統領に外交上の凱歌を上げさせて点数を稼がせ、徴用工問題で譲歩するマイナス点と相殺させることがキモである。
輸出管理問題と徴用工問題を較べれば、後者の方が重要度において格段に高いが、輸出管理問題から日本ボイコットが始まったのだから、韓国ではホワイト国外しは我々より重く受け止められているのではなかろうか。
こんなことは爺が考えるまでもなく、日本政府がすでに検討中(もしくは交渉中)だと想像する。菅政権の手腕に期待する。