池井戸潤の新作「アルルカンと道化師」を読んだ。ストーリーは、苦境に陥った善玉がいかにして巻き返して、悪玉をやっつけるかの勧善懲悪物語である。作り話とはわかっていても、ハラハラ・ドキドキするサスペンス性があり、そして謎解きの部分もある娯楽性十分の作品だ。
アルルカン(Arlequinフランス語)とは何なのか知らなかったが、ネットで調べたら道化役者のことだった。ピエロとどう違うのかという疑問が湧くが、それは大したことではなく、アルルカンと道化師を画題にした画そのものが重要な役割を果たしている。
この作品も映像化されるだろうが、その画を登場させないことには画竜点睛に欠ける。そうかといって、あまりチャチな画では面白さが半減する。どんな画を映像に登場させるのか興味深い。
さて、爺はあまり小説を読まないが、池井戸潤だけは別で、新作が出ると必ず読む。池井戸ファンになったのは十数年前で(その前は東野圭吾のファンだった)、「下町ロケット」「空飛ぶタイヤ」「陸王」なども面白く読んだが、特に「オレたち花のバブル組」に始まった半沢直樹シリーズは、TVドラマに主演した堺雅人の顔を思い浮かべて読むから興味が倍加する。
池井戸潤の作品で感心するのは、キャラクター設定もさることもさることながら、適切な部分にヤマ場があり、そして全体を長すぎず、短か過ぎないヴォリュームにまとめる構想力である。
この作品では勧善懲悪のわかりやすいストーリーに謎解きの要素を加えたが、次の作品ではどんな要素をアクセントにするのか。楽しみである。