この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

「狂っている」としか言いようがない劇薬映画『渇き。』。

2014-06-27 23:28:39 | 新作映画
 中島哲也監督、深町秋生原作、役所広司主演、『渇き。』、6/27、イオンシネマ筑紫野にて鑑賞。2014年26本目。


 ときどき、「これは見るな!」としか言いようがない作品に出会うことがあります。
 この場合の「見るな!」というのは作品の出来の悪さではなく、非道徳的であり、背徳的であるが故です。
 例えば『セルビアンフィルム』や『マーターズ』などがそれに当たります。
 『セルビアンフィルム』は、人としてやってはいけないことを十個挙げたとしたら、五個ぐらい平気でやってる映画ですからね。とても人様には薦められません。

 まぁそういった非道徳的、背徳的な映画は実は枚挙に暇ないのですが、それでもシネコンの大スクリーンでそのような映画を鑑賞できるとは思ってもみませんでした。
 その「見るな!」としか言えない映画のタイトルとは『渇き。』です。

 ともかくもうすべてが狂っているとしか言いようがないんですよ。
 まず登場人物が役所広司扮する主役の藤島をはじめ、全員狂っているんです。
 まともな人間もいないではないですが、まともな人間は全員(男女問わず)レイプされるか、殺されるか、もしくはレイプされて殺されるか、そのいずれかなんです。あ、橋本愛扮する少女はそのどれでもなかったけど、それなりに酷い目には合います。

 まぁ何といっても藤島のキャラクターがひどすぎる。
 「ロクデナシ」という言葉がありますが、そんな表現では生易し過ぎます。何しろ作中二人の女性をレイプするんですからね。
 「人間のクズ」と言ってもいい。

 そして藤島の娘である加奈子が藤島を上回って狂っています。
 具体的に彼女が何をするのかについては明言を避けますが、彼女には善悪の観念が欠けているんです。彼女には何人もの人間が破滅させられます。

 奇しくも二人の行動目的は共通しています。
 二人は愛を求めて行動するんですよね。
 藤島はバラバラになった家族を再生させるために奔走し、加奈子は愛するが故に破滅させずにはいられない。
 この映画にはどこまでも歪な愛が存在します。

 監督の中島哲也も相当狂っているなと思いました。
 こんな歪な愛の物語を極上のエンターティメントに仕上げるなんてまともな人間が出来ることとは思えない。

 そう、この映画は極上のエンターティメントなんです。無類に面白い。
 血塗れで、非道徳的で、背徳的で、まともな人間が一人として出てこない映画にも関わらず、『渇き。』はめちゃめちゃ面白いんですよ。
 こんな映画を面白いと思ってしまう自分も「狂っている」人間の一人なのかもしれません。


 お気に入り度は★★★★★、お薦め度は★(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント (8)
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