団塊の世代の世間話

60年を生きてきた思いを綴った「ゼロマイナス1 団塊の世代の世間話」を上梓し、その延長でブログを発信。

ロング・グッドバイ

2014-05-04 09:12:57 | Weblog
 いまNHKの土曜ドラマで『ロング・グッドバイ』を放送している。レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の傑作が原作だ。
 主人公のフィリップ・マーロウに言わせる有名な科白がある。「強くなければ生きられない、やさしくなければ生きている資格はない」というもので、若い頃は気障な科白だなあ、と思っていた。
 ところが最近になって、よくよくこの言葉を考えてみると、人生のほぼすべてを言い尽くしているように思えてきた。
 強くなければ生きられない、というのは、精神的にも物質的にも自立することを意味している。自立しなければ人間は強くなれない。なにかに頼っていたり、依存していたのでは、一人前とはいえない。
 教育を受けるのは、精神的に自立するためだ。その教育や知識によって、物質的にも自立することができる。ただし、それらはすべて自分のためだ。結果として、自立することが、家族や周りの人々に利することはあるが、基本的には自分にかえってくることを意味している。
 ところが、やさしくなければ生きている資格はない、というのは、愛を意味している。人との関わりの中で、人への思いやり、他者へのやさしさがなければ、その人間が存在している価値はないだろう。
 人に対してなにをするのかは、さまざまなケースがある。結局、自分の存在がどう人と関わることができて、その人に自分のすることが、どういう形で影響を与えるのか、というシーンの中で、もっとも大切なことは、自分がいることによって、なんらかのプラス効果があることであろう。
 その人がいることで、マイナス効果があるとしたら、それは人に迷惑をかけることや、いじめやパワハラなどになるわけだが、プラス効果があるというのは、結局、他者へのやさしさということにまとめられるのではないか。
 人間というのは、究極そういう存在なのだろう、と思う。大金を稼いで、自分のリッチな生活に金を遣ったとしても、自らの強さを誇示するだけだし、自己満足に終わる。
 人とどう関わるかによって、その人もまた止揚できるのであろう。その関わりのキーポイントが、やさしさであるわけだ。
 チャンドラーがどうしてこの科白を言わしめたのかは分からないが、端的に人生そのものを語っている。
 NHKのドラマは裏番組に2時間サスペンスがあって、ハードディスクに溜め込んでいる。5話完結だから、シリーズが終わったあとで、ゆっくりと楽しむつもりだ。こういうのは、あまり人生に関係はないなあ、かな。

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