風間忍の提案で、一度長野の山荘に身を寄せた香たち。
ここは今は亡き忍の母方の祖父の別荘で、今でも時折来ることがあるため、電気ガスも通っているという。
忍の完全なプライベート空間なので、織田の人間には知られていないはず、とのこと。
しかし、祖父の出身地がこの村ゆえ、それを元に探しあてられる可能性がある。月が出るころには<秘密の場所>に移動しよう、ということで話はまとまった。
リビングには、予言に関する研究書類や書籍が山のように積んである。
その本の山のあちこちから、小さな人が数人出てきた。世にいう小人である。
「か……かわいい……」
思わずつぶやく香(ミロクの姿)。
すると、忍の肩に乗っていたアル=イーティルが、
「かわいいっていうのは心外だよ。ただ小さいだけだよ。僕は大きくもなれるんだよ」
すとん、と飛び降りたのと同時に、香とほぼ同じくらいの背の少年が現れた。透き通った肌の美少年。
「ほら。姫の体と同じくらいの大きさだよ。これなら姫にキスすることもできるんだよ」
すっとミロク(香の姿)に近づくと、きょとんとしたミロクの肩に手を置き、顔を寄せようとした、が、
「だよだようるせーよ、ガキ」
「香の体に勝手に触るな」
クリスがアルを押さえつけ、イズミが香の体を引き離す。
「ちぇー」
アルは笑いながら再び小さく戻り、忍の肩にのる。
「アルは、私が子供のころからこの姿でしたので、おそらく年齢は我々よりもずっと上だと思います。聞いても教えてくれないので推察でしかありませんけど」
忍が穏やかに言う。
「どうぞ皆さんお座りください。イーティルのことをお話しいたします」
**
リビングのソファに、香(ミロクの姿)、クリス、イズミ、白龍、忍、ミロク(香の姿)が座る。
リビング続きのキッチンの椅子に、スタン、高村が座る。真田と桔梗は見張りに出ていた。
イーティル星人の中にも、いくつかの種族がある。
その中でも、アルのように人型をつくれる種族は第一種族と言われ、身分が高い。
アーサーの話にあった、自分の体を持たず、他に寄生して生きている種族がイーティルのほとんどである。
イーティルは物に宿ることもでき、地球上における怪奇現象のほとんどはイーティルによるものと言っても過言ではない。
第一種族以外は知的にさほど高くはない。
アルのように人と変わらない高い知性を持ったイーティルが地球上におりてきているという事実は、王家の人間にも知られていない。
第一種族は人前にほとんど出ずに生活している。
風間忍の祖父はこの村の出身で、偶然に第一種族のイーティルたちと親しくなったらしい。
小さい頃、祖父と暮らしていた忍も自然とイーティルと仲良くなっていた。
イーティルの予言には、「月の女王がイーティルを救う」とあるという。
白龍が静かに言う。
「新世界の扉とは、イーティルを自在に操る力を得るということとは考えられませんか?」
すると、
「えーー。僕たちは操られたりしないんだよ」
アルと、アルと同じくらいの少年や少女の形をした小人たちがピョンコピョンコとテーブルの上で飛び跳ねた。
「月の女王は救いの女神と言われているんだよ」
「…………」
一同、うーんと考えこむ。が、結論が出る話でもない。
「とにかく今晩、イーティルたちの<秘密の場所>に行って、もう一度、予言を試してみましょう」
忍に言われ、皆も思い思いの表情でうなずいた。
**
「高村サーン、これこのくらいの大きさでいい?」
スタンが当然のように高村の横で料理の手伝いをしていることが、クリスには気に入らない。
「だーかーらー、なんでお前がここにいるんだよ?」
「オレ料理得意だもーん。いまどき料理くらいできないとね~」
スタンは、香を司に差し出そうとしたリンクスのやり方が気に入らないので家出すると言いだし、昨晩はそのままクリスのマンションに泊まったそうなのだ。
元々、司のことは大嫌いだったので、これ以上命令を聞くのもまっぴらごめん、ということで、司に一泡吹かせるためにも今回の逃走劇に協力すると言い出した。
念のため、こっそりと香に心を読んでもらったが、裏切りの心はないという。
が……。 なぜか、香が途中で真っ赤な顔になった。クリスがなんだなんだと問いただす。
香が黙っていると、スタンが明るく言い放った。
「オレ、香ちゃんの恋人に立候補するからね!香ちゃん、オレのタイプなんだよね~」
「なんだとーー!!」
車の中でギャアギャア騒ぎはじめたクリスに白龍が鉄拳制裁を加え、その場はどうにか収まり、忍からも能力者の協力があることは心強いといわれ、同行が許可されたわけだが……。
山荘のキッチンでは口げんかが続いている。
「だいたいねえ、オレの方が年上なんだからね。えばらないでくれる?」
「一歳しか変わらないだろ! 妙に高村にもなつきやがって……」
「まあまあ、クリス様……」
見かねた高村が仲裁に入る。
「彼のおかげで無事に救出もできたことですし……」
「そういえば、高村さん、『指示があるまで待機』って言われたのに、どうして助けにきてくれたんですか?」
キッチンの椅子に座り、イズミと一緒に地道にさやえんどうのスジ取りをしている香(ミロクの姿)が疑問を口にする。
「待機してろっていうのは、迎えにこいっていう意味なんですよ」
「……暗号?」
「いえ、そういうわけではないのですが、付き合いが長いと言葉の裏を読めるようになります」
ニッコリと高村がいう。
香りはふーん……とうなずき、いいな、とポツリといった。
「いいですか?」
「心を読まなくても心が読めるってことですよね? 私もそうなりたいです」
「香………」
香の心を読む能力に対するトラウマは根深い。
実は内心、予言の成就と引き換えに能力がなくなるとかそういうことが起きてくれないか、と期待している香である。
**
夕食後、眠くなってしまった香(ミロクの姿)。やはり体が10歳児である影響だろう。
月が出るころに<秘密の場所>に移動するという予定だったが、待ちきれずソファーに横になり、うつらうつらとしていたときだった。
「来ます!」
突然の緊迫した白龍の声。バリアーがやぶられたのだ。
「じゃ、<秘密の場所>に行くんだよ」
アルがスッと大きくなると、「こっちだよ~」と裏口から出ていく。
真田と桔梗は山荘に残り、高村は車で待機。
他のメンバーはアルの後をついていく。
山道をぐんぐんと登っていき……たどりついたのは、大きな木の室。
(これまた昔みたアニメであったような……)
香が密かに思ったのも束の間、早く早くとせかされ、その室の中に突き飛ばされ転げ落ちた。
---------------------
木の室は、前に書いたお下げを引っ張られるシーンのアニメと同じく、
某宮崎さんのとこの別の大ヒットアニメのイメージです。
本当はね、車の中での会話とか、
キッチンでわーわーやってる間の白龍と忍の真剣な会話とか、
色々書きたいこともあったけど、キリがないからやめておいた。
次回は10月10日。昔は体育の日でしたね。
ここは今は亡き忍の母方の祖父の別荘で、今でも時折来ることがあるため、電気ガスも通っているという。
忍の完全なプライベート空間なので、織田の人間には知られていないはず、とのこと。
しかし、祖父の出身地がこの村ゆえ、それを元に探しあてられる可能性がある。月が出るころには<秘密の場所>に移動しよう、ということで話はまとまった。
リビングには、予言に関する研究書類や書籍が山のように積んである。
その本の山のあちこちから、小さな人が数人出てきた。世にいう小人である。
「か……かわいい……」
思わずつぶやく香(ミロクの姿)。
すると、忍の肩に乗っていたアル=イーティルが、
「かわいいっていうのは心外だよ。ただ小さいだけだよ。僕は大きくもなれるんだよ」
すとん、と飛び降りたのと同時に、香とほぼ同じくらいの背の少年が現れた。透き通った肌の美少年。
「ほら。姫の体と同じくらいの大きさだよ。これなら姫にキスすることもできるんだよ」
すっとミロク(香の姿)に近づくと、きょとんとしたミロクの肩に手を置き、顔を寄せようとした、が、
「だよだようるせーよ、ガキ」
「香の体に勝手に触るな」
クリスがアルを押さえつけ、イズミが香の体を引き離す。
「ちぇー」
アルは笑いながら再び小さく戻り、忍の肩にのる。
「アルは、私が子供のころからこの姿でしたので、おそらく年齢は我々よりもずっと上だと思います。聞いても教えてくれないので推察でしかありませんけど」
忍が穏やかに言う。
「どうぞ皆さんお座りください。イーティルのことをお話しいたします」
**
リビングのソファに、香(ミロクの姿)、クリス、イズミ、白龍、忍、ミロク(香の姿)が座る。
リビング続きのキッチンの椅子に、スタン、高村が座る。真田と桔梗は見張りに出ていた。
イーティル星人の中にも、いくつかの種族がある。
その中でも、アルのように人型をつくれる種族は第一種族と言われ、身分が高い。
アーサーの話にあった、自分の体を持たず、他に寄生して生きている種族がイーティルのほとんどである。
イーティルは物に宿ることもでき、地球上における怪奇現象のほとんどはイーティルによるものと言っても過言ではない。
第一種族以外は知的にさほど高くはない。
アルのように人と変わらない高い知性を持ったイーティルが地球上におりてきているという事実は、王家の人間にも知られていない。
第一種族は人前にほとんど出ずに生活している。
風間忍の祖父はこの村の出身で、偶然に第一種族のイーティルたちと親しくなったらしい。
小さい頃、祖父と暮らしていた忍も自然とイーティルと仲良くなっていた。
イーティルの予言には、「月の女王がイーティルを救う」とあるという。
白龍が静かに言う。
「新世界の扉とは、イーティルを自在に操る力を得るということとは考えられませんか?」
すると、
「えーー。僕たちは操られたりしないんだよ」
アルと、アルと同じくらいの少年や少女の形をした小人たちがピョンコピョンコとテーブルの上で飛び跳ねた。
「月の女王は救いの女神と言われているんだよ」
「…………」
一同、うーんと考えこむ。が、結論が出る話でもない。
「とにかく今晩、イーティルたちの<秘密の場所>に行って、もう一度、予言を試してみましょう」
忍に言われ、皆も思い思いの表情でうなずいた。
**
「高村サーン、これこのくらいの大きさでいい?」
スタンが当然のように高村の横で料理の手伝いをしていることが、クリスには気に入らない。
「だーかーらー、なんでお前がここにいるんだよ?」
「オレ料理得意だもーん。いまどき料理くらいできないとね~」
スタンは、香を司に差し出そうとしたリンクスのやり方が気に入らないので家出すると言いだし、昨晩はそのままクリスのマンションに泊まったそうなのだ。
元々、司のことは大嫌いだったので、これ以上命令を聞くのもまっぴらごめん、ということで、司に一泡吹かせるためにも今回の逃走劇に協力すると言い出した。
念のため、こっそりと香に心を読んでもらったが、裏切りの心はないという。
が……。 なぜか、香が途中で真っ赤な顔になった。クリスがなんだなんだと問いただす。
香が黙っていると、スタンが明るく言い放った。
「オレ、香ちゃんの恋人に立候補するからね!香ちゃん、オレのタイプなんだよね~」
「なんだとーー!!」
車の中でギャアギャア騒ぎはじめたクリスに白龍が鉄拳制裁を加え、その場はどうにか収まり、忍からも能力者の協力があることは心強いといわれ、同行が許可されたわけだが……。
山荘のキッチンでは口げんかが続いている。
「だいたいねえ、オレの方が年上なんだからね。えばらないでくれる?」
「一歳しか変わらないだろ! 妙に高村にもなつきやがって……」
「まあまあ、クリス様……」
見かねた高村が仲裁に入る。
「彼のおかげで無事に救出もできたことですし……」
「そういえば、高村さん、『指示があるまで待機』って言われたのに、どうして助けにきてくれたんですか?」
キッチンの椅子に座り、イズミと一緒に地道にさやえんどうのスジ取りをしている香(ミロクの姿)が疑問を口にする。
「待機してろっていうのは、迎えにこいっていう意味なんですよ」
「……暗号?」
「いえ、そういうわけではないのですが、付き合いが長いと言葉の裏を読めるようになります」
ニッコリと高村がいう。
香りはふーん……とうなずき、いいな、とポツリといった。
「いいですか?」
「心を読まなくても心が読めるってことですよね? 私もそうなりたいです」
「香………」
香の心を読む能力に対するトラウマは根深い。
実は内心、予言の成就と引き換えに能力がなくなるとかそういうことが起きてくれないか、と期待している香である。
**
夕食後、眠くなってしまった香(ミロクの姿)。やはり体が10歳児である影響だろう。
月が出るころに<秘密の場所>に移動するという予定だったが、待ちきれずソファーに横になり、うつらうつらとしていたときだった。
「来ます!」
突然の緊迫した白龍の声。バリアーがやぶられたのだ。
「じゃ、<秘密の場所>に行くんだよ」
アルがスッと大きくなると、「こっちだよ~」と裏口から出ていく。
真田と桔梗は山荘に残り、高村は車で待機。
他のメンバーはアルの後をついていく。
山道をぐんぐんと登っていき……たどりついたのは、大きな木の室。
(これまた昔みたアニメであったような……)
香が密かに思ったのも束の間、早く早くとせかされ、その室の中に突き飛ばされ転げ落ちた。
---------------------
木の室は、前に書いたお下げを引っ張られるシーンのアニメと同じく、
某宮崎さんのとこの別の大ヒットアニメのイメージです。
本当はね、車の中での会話とか、
キッチンでわーわーやってる間の白龍と忍の真剣な会話とか、
色々書きたいこともあったけど、キリがないからやめておいた。
次回は10月10日。昔は体育の日でしたね。