創作小説屋

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月の女王-37

2014年10月13日 22時09分27秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
 そこは木の根に囲まれた奇跡のような空間であった。
 学校の教室の半分くらいの大きさはある。
 壁も天井も木の根でできていて、床は根と土でできている。
 10年ほど前に小人たちで作り出した空間なのだそうだ。

 その中央あたりに忍と白龍とイズミが立っていて、ミロク(香の姿)は十数人の小人たちと一緒に端の木の根に座っている。
 スタンは奥にある上とつながっている通路の前に立って、上からの侵入者に備えるつもりのようだ。

 網目状になった根の天井からうっすらと月が見えている。

「ここが……秘密の場所?」
「なんか……すごくないか?」

 クリスが自分の両手を見て驚きの声をあげる。
「オーラが、増えていく……」

「木と土と水の力でオーラが増幅されるようなんです」
 忍が穏やかに言う。

「どうでしょう? ここでもう一度試してみませんか? 予言の日はまだ終わっていないのですから」

 考えてみればそうなのだ。今日はまだ香の誕生日から10日目。ミロクの誕生日当日なのだ。


「香さん」
 ミロク(香の姿)に手招きされた。
 月が一番よく見えるのがここの場所だ、と、木の根の壁の端に呼ばれた。

 二人で並んで座り、月を見あげる。

 本当にできるのだろうか。

 不安な香を勇気づけるように、ミロクが香の手をそっと取る。

「一緒に行こうね。香さん」
「………うん」

 香はうなずき、ミロクと向かい合わせになりミロクの両手を握ったまま、昨晩と同じように祈るようにオーラを放出した。



 金色のオーラが部屋中に広がる。
 すぐにミロクと香の体の力がぬけてその場に崩れ落ちた。
 それでも金色のオーラは消えず、部屋中を温かく包み込み続けている。

 クリスとイズミで即座に二人の体を横たわらせる。
 今回は昨晩とは逆に、香の右手側にミロクの体をおくようにした。


 異変はすぐに起こった。
 月明かりが急激に明るくなっていく。

 しかし、それは月明かりではない。


「わあ。月の女王が下りてくるんだよ!」

 小人たちが騒ぎ出す。
 昨晩と同じ、月に似て否なるもの、黄色い大きな球状のものが近づいてきている。


「では、月の戦士の皆さんも……」

 忍が言いかけたときだった。


「うわ!やっばいよ!リンクが来るっぽい!」
 見張りをしていたスタンが叫んだ。

「来るっぽいってなんだ!来るっぽいって!」
「だって近くにいる気配がするんだもん!」

 クリスのツッコミに、スタンがわーわーと答える。

「こんなオーラ全開にしてたら、この場所バレちゃうよ~!」
「入口は一つだ。入ってこようとしたら攻撃しろ!」
「オレの攻撃なんかじゃリンクに効かないよ~~」
「何でもいいから時間稼いでくれ!」

 クリスは言い捨てると、月状のものに向かってオーラを立ち昇らせた。
 白龍、イズミもそれに続く。

 そこへ……

「うわわわわっ気持ち悪いの入ってきたっ」

 スタンが悲鳴をあげる。
 人の手の形をしたものが、天井にへばりついている。
 リンクスが使役している「異形の物」だ。

 しかし、クリス・白龍・イズミはそちらに気を回している余裕はない。
 特に白龍とイズミは、香とミロクの魂の位置を把握しようと必死なので言葉を発することもできない。

 クリスがスタンを振り返り、

「とりあえず攻撃……」

「ダメ!僕たちの仲間だよ!」
「!」
 小人たちに叫ばれて、クリスが押し黙る。

しかし、

「うわっ落ちてきそうっ気持ち悪っ」

 小人たちとクリスの間の微妙な空気も読まず、スタンは叫ぶと、

「わーーやだーーー来ないでーーーっ」

 思いっきり天井に向かってオーラを放った。

 その時だった。

「なに?!」

 クリス、白龍、イズミが叫ぶ。忍が目を見開く。

「!!!」

 スタンから放出されたのは、鮮やかな真紅のオーラ。
 それが、クリスたちの放っているオーラと溶け合い、月状のものに向かって立ち上りはじめた。

「お前……っ」
 クリスが叫ぶ。

「お前、その赤のオーラ、まさか……」

「え?なになに? っていうか、なにこれ!止まらないんだけど!!」
 スタンが自らの手から流れでるオーラを見て驚きの声をあげる。


「やはり……君が本物の月の戦士だったんですね」

 冷静にいう忍の言葉に、一同、は?!と振り返る。

「やっぱりって……どういうことだよ!!」
 オーラを上に向かって放出しつつ、クリスが忍にがなりたてる。

「このタイミングで我々に同行すると言った人物だから、そうである可能性は高いと思っていたのです。予言は絶対ですから」
「………だからスタンの同行をあっさり許したのか」

 本当に食えない奴だよな……と心の中でつぶやくクリス。
 忍は穏やかな笑を浮かべながら続ける。

「スタン=ウェーバー君の出自については私も調査していたのですが、なかなか複雑で辿りきれず……」

「え~別に複雑じゃないよ~?」
 あっけらかんとスタンが言う。スタンから放出される赤いオーラは、天井のあたりでクリスの青・白龍の白・イズミの漆黒と混ざり合い、月状のものへと続いている。

「あのね~生まれてすぐ両親が離婚して、オレは父親に引き取られて、でも父親がすぐ死んじゃって、父親の再婚相手が育ててくれてたんだけど、その人に恋人ができたから施設に預けられて、そこで養子にしてくれるって人が引き取ってくれて、でもその人も無理ってなって、また別の施設に預けられて、そこでウェーバーさんが引き取ってくれたんだけど、ウェーバーさん死んじゃって、また別の施設に入って、それで……」
「……充分、複雑だぞ?」

 クリスが眉を寄せて言った、そのときだった。

 
「君はもしかして……マリアの弟じゃないか?」
「!?」

 驚いて振り向いた先には、悲しいオーラをまとったアーサーがいた。
 先ほど、香とクリスが落ちた方の穴から来たようだ。



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どこで切ったもんかと悩んで、ここで切ってみた。


スタンのセリフの続きは、

それで、その施設がつぶれちゃって、別の施設にうつされて、そこの近所にリンクスが住んでて仲良くなっておうちに入り浸るようになって、3年前に突然超能力が芽生えてからは、リンクスの両親が家に引き取ってくれて、今年の夏休みに入ってからはリンクスと一緒に日本に住んでる。

ってことでした。


香の封印が、儀式をしたにも関わらず完全に解けきらなかった原因は、南の戦士が偽物だったからって裏設定(裏でもないか)があったんですね。
南の戦士が本物だったらならば、儀式後に封印は解けていたはず。

でも、きっと、香にとっては良かったんだと思う。
キョウコとヒトミの呪縛から解かれるためには、一度自分で正面から向き合わないといけなかったんだから。
向き合ったおかげで、香はクリスの協力のもと自ら封印を解きました。

昔、うまくいかなかった人とか、うまくいかなかったこととかに、いつまでも囚われていたらダメなんです。
今、一緒にいる人、今、自分を愛してくれている人、今、やろうと頑張っていること、そのことに目を向けないと。
過去は過去です。今は今です。

……なんて、何を熱弁ふるっているんでしょうか私。
いや、そこらへんちゃんと書いてなかったなあ……なんて急に思いまして;


さて。次で予言が成就します。たぶん。
頑張らないとだ!

次回は10月15日(水)に更新します。たぶん。
コメント
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