香が祈るように手を前で組み、目をつむった。
それから数秒後、バチッと目を見開き……
『アーサー!!』
叫んだかと思うと、アーサーに勢いよく抱きついた。
「え?!」
「げっ」
呆気にとられる周囲をよそに、香はアーサーの頬を手でかこむと、
『会いたかったわ! ちょっと大人っぽくなったわね! また背も伸びたんじゃない? 元気だった? 私がいなくて寂しかったでしょう?』
『………マリア』
アーサーが呆けたように言う。
『マリア……マリア、マリア』
『何よ?』
くるくるとしたいたずらっぽい瞳。香のものであって香ではない。まさしくこの瞳は……
『マリア……会いたかった』
絞り出すように言うと、アーサーは強くマリアを抱きしめた。
『ごめん、マリア。君を助けてあげられなくて……』
『ううん。私が悪いのよ』
マリアはアーサーから体を離すと、アーサーの手を両手でぎゅっと握りしめた。
『あの時ね、ママから、ママは病気でもう長くないから、私をテーミス王家に預けるって言われて』
『え?! 初めて聞いたよ?そんな話……』
『うん。初めてしてるよ。それで、私、どうしても、ママともアーサーとも一緒にいたいって強く強く願ってたら、あいつが現れたの』
『あいつって、あのイーティル?』
『そうそう。あいつ、私のオーラと引きかえに願いを叶えてやるってテレパシーで伝えてきてね、だからオッケーしたんだけど、ひどいのよ!一緒にいるっていうのは、魂だけになってあいつの中に一緒にいるって意味だっていうの! やめてっていっても契約だっていってさ。取り込まれた後も散々散々文句言いまくってやったからあいつ辟易してたわよ。でも、ほら、あの怖いオジサンに使役されるようになっちゃったじゃない? 大変だったのよ~~。あのオジサン人使い荒いんだもん。でもちょっといい男よね、あのオジサン。ほら、なんて言ったかしら、俳優でいたじゃない? 似てるわよね?』
『マリア、マリア』
ふっとアーサーが笑う。
『君はあいかわらずよくしゃべるね』
マリアはニッコリと、
『やっと笑ってくれた』
『マリア……』
『とにかく、あなたが無事でいてくれて良かったわ』
『無事じゃないよ! 君がいなくなって、オレがどんな思いで……』
『泣いて暮らしてたの? あいかわらずね、アーサー』
マリアはくすりと笑うと、背伸びをしてアーサーの首に抱きついた。
『あなたは私がいないとダメなんだから……』
『マリア……』
「えーーーーーー!香ちゃん!何やってんの?!」
いきなり、叫び声がした。遅れてリンクスのバイクでここまで逃げてきたスタンである。
「なんでクリス止めないのーーーー!?」
言われたクリスは、ぶすっとした顔のままで、
「そいつは香じゃない」
「香ちゃんじゃない……?」
『もしかして……あなたが私の弟?!』
「え?!」
香の唇からでる流暢な英語にびっくりしたスタンは、
「なになになになにーー?!」
いきなり香に抱きつかれてますますびっくりしてアタフタする。
「ど、どうしたの? 香ちゃん……」
『会いたかったわ! 私の弟! 名前はなんていうの?』
『え……スタンだよ?』
『そう! 素敵な名前ね。スタン。私はマリア。あなたのお姉さんよ』
『お姉さん……?』
きょとんとしたスタンの頭をマリアはぐりぐりとなでまわすと、
『やだーすっごくかわいいじゃないの!さすが私の弟!かわいいかわいい!!』
「えええええ……っ」
香ではありえない言動。
『本当に……オレの姉さんなの?』
『そうよ! 私はママに引き取られて、生まれたばかりだったあなたはパパに引き取られた。パパは再婚して幸せに暮らしてるから探したらダメって言われてたんだけど……パパは元気にしてるの?』
『ううん。パパは……』
『話してる中、悪いんだけど』
クリスが、割って入る。
『場所を変えるぞ。そろそろ消防と警察がくる』
『消防?警察?』
『これだけ大規模な山崩れがあればな…。オレたちも事情を聞かれたりしたらまずい。こんな真夜中に大人数で何やってたんだって話になる』
『幸い、集落とは逆の斜面なので人的被害はないようですが、山荘のあたりは避難命令が出されたので戻れません』
真田が冷静に説明する。
『これから東京に戻るか?夜中だから道路空いてるんじゃないか?明け方までにはつくだろ』
クリスの発言に、マリアが、え!!っと振り向く。
『ちょっと待って……。あ、あなたクリスでしょ?そうでしょ?』
『……そうだけど』
香の口から英語で話しかけらると妙な感じがする。
『そっかそっか~あなたがクリスね。ふーん』
ニヤニヤしながらマリアがクリスを覗き込む。
『……なに?』
『あ、何でもない。香が怒りだしたから何も言えない』
『な、何を?!』
『まあ、いいからいいから』
言葉と仕草でこんなにも違う人物になるのかと驚くほどの別人っぷりである。
『これから車で長距離移動するのは遠慮したいわ』
『なんで?』
『だって疲れたもの。ね?ミロク』
いきなり話を振られたミロクが目をぱちくりさせながらも、うんうん、と肯く。
「ねえ、忍兄様、あそこには行けない? あの天文台」
「ああ、そうだね。大丈夫じゃないかな……」
忍が視線を真田に向けると、真田が桔梗を促してバイクに乗り込んだ。
先に行って、使用の手配をするらしい。
「天文台?」
みんなの視線に、忍がニッコリとほほ笑む。
「夜空が良く見えますよ。ご案内いたします」
-----------------------
ということで、第6章終わり。
次から最終章。
11月のはじめ、私、誕生日なんですわ。40歳になります。
人生80年の折り返しです。
ので、なんとなく、30代のうちに、10代後半に考えたこのお話を終わらせたいって気持ちになってきました。
ので、ピッチあげて要約しようとあらためて今思った。
けど、さあ、ちゃんと終わらせられるかなーー。
私のお話の考え方って、たいていシーンごと、なんです。
書きたいシーンと書きたいシーンをつなぎ合わせていく感じです。
なので、このシーンを書くためにはどう話を持っていけばいいんだ?
ってことに頭悩ませたりします。
次から最終章。あと書きたいシーンっていったら
・クリスの頬をつねる香
です。さて、どうやって持っていくかな^^;
それから数秒後、バチッと目を見開き……
『アーサー!!』
叫んだかと思うと、アーサーに勢いよく抱きついた。
「え?!」
「げっ」
呆気にとられる周囲をよそに、香はアーサーの頬を手でかこむと、
『会いたかったわ! ちょっと大人っぽくなったわね! また背も伸びたんじゃない? 元気だった? 私がいなくて寂しかったでしょう?』
『………マリア』
アーサーが呆けたように言う。
『マリア……マリア、マリア』
『何よ?』
くるくるとしたいたずらっぽい瞳。香のものであって香ではない。まさしくこの瞳は……
『マリア……会いたかった』
絞り出すように言うと、アーサーは強くマリアを抱きしめた。
『ごめん、マリア。君を助けてあげられなくて……』
『ううん。私が悪いのよ』
マリアはアーサーから体を離すと、アーサーの手を両手でぎゅっと握りしめた。
『あの時ね、ママから、ママは病気でもう長くないから、私をテーミス王家に預けるって言われて』
『え?! 初めて聞いたよ?そんな話……』
『うん。初めてしてるよ。それで、私、どうしても、ママともアーサーとも一緒にいたいって強く強く願ってたら、あいつが現れたの』
『あいつって、あのイーティル?』
『そうそう。あいつ、私のオーラと引きかえに願いを叶えてやるってテレパシーで伝えてきてね、だからオッケーしたんだけど、ひどいのよ!一緒にいるっていうのは、魂だけになってあいつの中に一緒にいるって意味だっていうの! やめてっていっても契約だっていってさ。取り込まれた後も散々散々文句言いまくってやったからあいつ辟易してたわよ。でも、ほら、あの怖いオジサンに使役されるようになっちゃったじゃない? 大変だったのよ~~。あのオジサン人使い荒いんだもん。でもちょっといい男よね、あのオジサン。ほら、なんて言ったかしら、俳優でいたじゃない? 似てるわよね?』
『マリア、マリア』
ふっとアーサーが笑う。
『君はあいかわらずよくしゃべるね』
マリアはニッコリと、
『やっと笑ってくれた』
『マリア……』
『とにかく、あなたが無事でいてくれて良かったわ』
『無事じゃないよ! 君がいなくなって、オレがどんな思いで……』
『泣いて暮らしてたの? あいかわらずね、アーサー』
マリアはくすりと笑うと、背伸びをしてアーサーの首に抱きついた。
『あなたは私がいないとダメなんだから……』
『マリア……』
「えーーーーーー!香ちゃん!何やってんの?!」
いきなり、叫び声がした。遅れてリンクスのバイクでここまで逃げてきたスタンである。
「なんでクリス止めないのーーーー!?」
言われたクリスは、ぶすっとした顔のままで、
「そいつは香じゃない」
「香ちゃんじゃない……?」
『もしかして……あなたが私の弟?!』
「え?!」
香の唇からでる流暢な英語にびっくりしたスタンは、
「なになになになにーー?!」
いきなり香に抱きつかれてますますびっくりしてアタフタする。
「ど、どうしたの? 香ちゃん……」
『会いたかったわ! 私の弟! 名前はなんていうの?』
『え……スタンだよ?』
『そう! 素敵な名前ね。スタン。私はマリア。あなたのお姉さんよ』
『お姉さん……?』
きょとんとしたスタンの頭をマリアはぐりぐりとなでまわすと、
『やだーすっごくかわいいじゃないの!さすが私の弟!かわいいかわいい!!』
「えええええ……っ」
香ではありえない言動。
『本当に……オレの姉さんなの?』
『そうよ! 私はママに引き取られて、生まれたばかりだったあなたはパパに引き取られた。パパは再婚して幸せに暮らしてるから探したらダメって言われてたんだけど……パパは元気にしてるの?』
『ううん。パパは……』
『話してる中、悪いんだけど』
クリスが、割って入る。
『場所を変えるぞ。そろそろ消防と警察がくる』
『消防?警察?』
『これだけ大規模な山崩れがあればな…。オレたちも事情を聞かれたりしたらまずい。こんな真夜中に大人数で何やってたんだって話になる』
『幸い、集落とは逆の斜面なので人的被害はないようですが、山荘のあたりは避難命令が出されたので戻れません』
真田が冷静に説明する。
『これから東京に戻るか?夜中だから道路空いてるんじゃないか?明け方までにはつくだろ』
クリスの発言に、マリアが、え!!っと振り向く。
『ちょっと待って……。あ、あなたクリスでしょ?そうでしょ?』
『……そうだけど』
香の口から英語で話しかけらると妙な感じがする。
『そっかそっか~あなたがクリスね。ふーん』
ニヤニヤしながらマリアがクリスを覗き込む。
『……なに?』
『あ、何でもない。香が怒りだしたから何も言えない』
『な、何を?!』
『まあ、いいからいいから』
言葉と仕草でこんなにも違う人物になるのかと驚くほどの別人っぷりである。
『これから車で長距離移動するのは遠慮したいわ』
『なんで?』
『だって疲れたもの。ね?ミロク』
いきなり話を振られたミロクが目をぱちくりさせながらも、うんうん、と肯く。
「ねえ、忍兄様、あそこには行けない? あの天文台」
「ああ、そうだね。大丈夫じゃないかな……」
忍が視線を真田に向けると、真田が桔梗を促してバイクに乗り込んだ。
先に行って、使用の手配をするらしい。
「天文台?」
みんなの視線に、忍がニッコリとほほ笑む。
「夜空が良く見えますよ。ご案内いたします」
-----------------------
ということで、第6章終わり。
次から最終章。
11月のはじめ、私、誕生日なんですわ。40歳になります。
人生80年の折り返しです。
ので、なんとなく、30代のうちに、10代後半に考えたこのお話を終わらせたいって気持ちになってきました。
ので、ピッチあげて要約しようとあらためて今思った。
けど、さあ、ちゃんと終わらせられるかなーー。
私のお話の考え方って、たいていシーンごと、なんです。
書きたいシーンと書きたいシーンをつなぎ合わせていく感じです。
なので、このシーンを書くためにはどう話を持っていけばいいんだ?
ってことに頭悩ませたりします。
次から最終章。あと書きたいシーンっていったら
・クリスの頬をつねる香
です。さて、どうやって持っていくかな^^;