要約。説明回。
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最終章 新世界
ドーム型の天文台についた一行。高村と桔梗を見張りに残し、中へと入っていく。
『天文台なんてロマンティックね~~』
キャッキャッとはしゃぎながら、マリア(香の姿)がアーサーに腕をからめている。
それをムーーーーっとした顔で、なるべく見ないようにしているクリスとスタン。
スタンはリンクスと別れ、ここまではアーサーの車に同乗してきた。
その道中にマリアとのことを聞いたため、クリス同様、三年ぶりの恋人たちの再会を邪魔するのも気が引けて何も言えないらしい。
『そういえば、リンクス=ホウジョウはどうしてあそこにいたんだ?』
ふと気が付いて、クリスが尋ねると、
『司の伝令に予言のこと伝えた後で山崩れに気が付いて、オレのこと心配で戻ってきたんだって~~』
嬉しそうに言うスタン。
山崩れに足を取られていたところを助けられたらしい。その後、バイクの後ろに乗せられて皆のところまで連れてきてもらえた、が、
『でもまた、司サマに報告~~とか言って行っちゃったよ』
わかりやすくガッカリする。
『お前、これからどうすんの?』
『リンクが司の部下やめるまでお世話になります』
『………それいつ?』
『さあ?』
『………』
そんな会話をしている中、織田家の月光の間によく似た星の見える部屋に通された。元々ここをモデルに月光の間を作ったらしい。
『さて、マリアさん。目的はなんですか?』
部屋に通され、各々好きな場所に座った時点で、忍がマリア(香の姿)に向かって問いかける。
『あら、バレてた?』
えへ、とマリアが舌を出す。
『東京に帰りたくなかった理由があるんですよね?』
『東京に帰りたくないっていうより、これからしばらく、月の姫、王子、戦士のみんなは一緒にいてほしかったの』
『なぜ?』
『これから、予言の総仕上げをするからよ』
にっこりとマリアはほほ笑んだ。
『ミロク、月の女王の話、みんなに伝えてあげて』
「……うん」
緊張した面持ちでミロクが話し出した。
***
月の女王の内部は宇宙船のようであった。
香と合体したミロクが、月の女王の中に入り、誘導に従ってコンピューターを起動させると、地球から多数の生命体が流れこんできた。
魂たちは、球体の中で揺蕩い、個でありながら全であり、全でありながら個である、という不思議な状態になっていた。
月の女王とは……
3000年前、テーミス王家とデュール王家の能力者により作られた、イーティルに対する贖罪の証である。
地球よりはるかに進んだ科学力を持ち、魔法力まで有していたテーミス星とデュール星。
双方の利権争いから滅ぼしてしまったイーティル星を復活させるため、科学力と魔法力を結集して作り上げられたシステム。
月と似た外観にちなみ「月の女王」と名付けられた。「つき」という言葉がイーティル語で「救い」を意味することにも寄っている。
月の女王が、イーティル星の浄化終了時に合わせ、遺伝子上に組み込まれた月の姫、月の王子、月の戦士の魔法力を覚醒させる。
そして……
月の姫らの力で全テーミス人・デュール人のオーラ力すべてが月の女王に送り込まれることにより、イーティル星は完全に復活する。
テーミス人とデュール人はオーラの力を失い、地球人と等しくなる。これからは地球人として地球という新世界を生きていくことになる。
***
予言の全貌に誰もが絶句した。
「オーラを送り込む……? いつ?」
「これから。夜明け前には」
クリスの問いに、ミロクがこっくりとうなずく。
再び訪れる沈黙……。
それを破るかのように、マリアが明るく言い出した。
『それでね、たぶん、香の魂を抜け出す特殊能力もそのとき消えちゃうと思うから、今のうちに私、アーサーの中にうつろうと思って。で、皆さんにお願いがあるの』
『…………なんだ?』
マリアはアーサーの腕にギュッと抱きつくと、
『同じ肉体に魂が入ってしまうと、こうやって抱きしめたりできなくなるでしょ? だから今のうちに色々したいから、二人っきりにさせて』
『色々ってなんだ!色々って!!』
『わーーーやらしいーーー!!』
予想通り、クリスとスタンが大騒ぎする。
アーサーは苦笑いを浮かべている。
『お前も何か言え!』
クリスに指名されたイズミは冷静に、
『香はなんていってるんだ? 香次第だと思うが』
『香は……』
マリアは人差し指でとんとんと頭をつつくと、
『香は目をつむるって言ってくれてる~~』
『…………』
クリスとスタンが顔を見合わせ、ため息をつく。
『そこでイヤって言えないのが香だよな~~』
『優しいんだよね』
渋々了承する2人。
『5分だけだからな!』
『あんまりすごいことしないでよー』
『わかってるわかってる~~』
クリスとスタンの声を背に、マリアはアーサーの腕を取って部屋から出て行った。
『ほんとに大丈夫かな……』
『5分たったら様子見に行くぞ』
『見に行って……してたらどうする?』
『してたらって何を?』
『何をってそりゃ……』
『………』
再び顔を見合わせるクリスとスタン。
『いや、まさか……』
『まさか……ね』
どちらからともなくマリアとアーサーの消えていったドアに向かって歩き出す。だんだん早足になっている。
ドアノブに手をかけようとした、その時。
「!?」
悲鳴が聞こえてきた。
「香?!」
「香ちゃん?!」
あわててドアを開けると……目に入ったのは、床に倒れているアーサー。その横に立つリンクス=ホウジョウ。
菅原司。
そして、司に捕えられている香の姿であった。
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ここで設定説明…。
司の母親は、ベタに銀座のクラブのママ。
今も現役バリバリ。織田家から多額の融資を受けていて、安定生活。
織田家の中でも多少の権力を持っている。
忍の母親は、予言の研究者・風間氏の一人娘。
予言のことについて調べにきた織田将と恋に落ち、忍をもうける。
忍が幼いころに病死。
ミロクの母親は、正妻。織田将のはとこにあたる。
身体的にも精神的にも病弱で入退院を繰り返している。
忍が織田家に引き取られたのと同時期に結婚。
忍のことを気に入っており、ミロクの後見人にはぜひ忍を……と思っている。
そんな感じです。
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最終章 新世界
ドーム型の天文台についた一行。高村と桔梗を見張りに残し、中へと入っていく。
『天文台なんてロマンティックね~~』
キャッキャッとはしゃぎながら、マリア(香の姿)がアーサーに腕をからめている。
それをムーーーーっとした顔で、なるべく見ないようにしているクリスとスタン。
スタンはリンクスと別れ、ここまではアーサーの車に同乗してきた。
その道中にマリアとのことを聞いたため、クリス同様、三年ぶりの恋人たちの再会を邪魔するのも気が引けて何も言えないらしい。
『そういえば、リンクス=ホウジョウはどうしてあそこにいたんだ?』
ふと気が付いて、クリスが尋ねると、
『司の伝令に予言のこと伝えた後で山崩れに気が付いて、オレのこと心配で戻ってきたんだって~~』
嬉しそうに言うスタン。
山崩れに足を取られていたところを助けられたらしい。その後、バイクの後ろに乗せられて皆のところまで連れてきてもらえた、が、
『でもまた、司サマに報告~~とか言って行っちゃったよ』
わかりやすくガッカリする。
『お前、これからどうすんの?』
『リンクが司の部下やめるまでお世話になります』
『………それいつ?』
『さあ?』
『………』
そんな会話をしている中、織田家の月光の間によく似た星の見える部屋に通された。元々ここをモデルに月光の間を作ったらしい。
『さて、マリアさん。目的はなんですか?』
部屋に通され、各々好きな場所に座った時点で、忍がマリア(香の姿)に向かって問いかける。
『あら、バレてた?』
えへ、とマリアが舌を出す。
『東京に帰りたくなかった理由があるんですよね?』
『東京に帰りたくないっていうより、これからしばらく、月の姫、王子、戦士のみんなは一緒にいてほしかったの』
『なぜ?』
『これから、予言の総仕上げをするからよ』
にっこりとマリアはほほ笑んだ。
『ミロク、月の女王の話、みんなに伝えてあげて』
「……うん」
緊張した面持ちでミロクが話し出した。
***
月の女王の内部は宇宙船のようであった。
香と合体したミロクが、月の女王の中に入り、誘導に従ってコンピューターを起動させると、地球から多数の生命体が流れこんできた。
魂たちは、球体の中で揺蕩い、個でありながら全であり、全でありながら個である、という不思議な状態になっていた。
月の女王とは……
3000年前、テーミス王家とデュール王家の能力者により作られた、イーティルに対する贖罪の証である。
地球よりはるかに進んだ科学力を持ち、魔法力まで有していたテーミス星とデュール星。
双方の利権争いから滅ぼしてしまったイーティル星を復活させるため、科学力と魔法力を結集して作り上げられたシステム。
月と似た外観にちなみ「月の女王」と名付けられた。「つき」という言葉がイーティル語で「救い」を意味することにも寄っている。
月の女王が、イーティル星の浄化終了時に合わせ、遺伝子上に組み込まれた月の姫、月の王子、月の戦士の魔法力を覚醒させる。
そして……
月の姫らの力で全テーミス人・デュール人のオーラ力すべてが月の女王に送り込まれることにより、イーティル星は完全に復活する。
テーミス人とデュール人はオーラの力を失い、地球人と等しくなる。これからは地球人として地球という新世界を生きていくことになる。
***
予言の全貌に誰もが絶句した。
「オーラを送り込む……? いつ?」
「これから。夜明け前には」
クリスの問いに、ミロクがこっくりとうなずく。
再び訪れる沈黙……。
それを破るかのように、マリアが明るく言い出した。
『それでね、たぶん、香の魂を抜け出す特殊能力もそのとき消えちゃうと思うから、今のうちに私、アーサーの中にうつろうと思って。で、皆さんにお願いがあるの』
『…………なんだ?』
マリアはアーサーの腕にギュッと抱きつくと、
『同じ肉体に魂が入ってしまうと、こうやって抱きしめたりできなくなるでしょ? だから今のうちに色々したいから、二人っきりにさせて』
『色々ってなんだ!色々って!!』
『わーーーやらしいーーー!!』
予想通り、クリスとスタンが大騒ぎする。
アーサーは苦笑いを浮かべている。
『お前も何か言え!』
クリスに指名されたイズミは冷静に、
『香はなんていってるんだ? 香次第だと思うが』
『香は……』
マリアは人差し指でとんとんと頭をつつくと、
『香は目をつむるって言ってくれてる~~』
『…………』
クリスとスタンが顔を見合わせ、ため息をつく。
『そこでイヤって言えないのが香だよな~~』
『優しいんだよね』
渋々了承する2人。
『5分だけだからな!』
『あんまりすごいことしないでよー』
『わかってるわかってる~~』
クリスとスタンの声を背に、マリアはアーサーの腕を取って部屋から出て行った。
『ほんとに大丈夫かな……』
『5分たったら様子見に行くぞ』
『見に行って……してたらどうする?』
『してたらって何を?』
『何をってそりゃ……』
『………』
再び顔を見合わせるクリスとスタン。
『いや、まさか……』
『まさか……ね』
どちらからともなくマリアとアーサーの消えていったドアに向かって歩き出す。だんだん早足になっている。
ドアノブに手をかけようとした、その時。
「!?」
悲鳴が聞こえてきた。
「香?!」
「香ちゃん?!」
あわててドアを開けると……目に入ったのは、床に倒れているアーサー。その横に立つリンクス=ホウジョウ。
菅原司。
そして、司に捕えられている香の姿であった。
------------------------
ここで設定説明…。
司の母親は、ベタに銀座のクラブのママ。
今も現役バリバリ。織田家から多額の融資を受けていて、安定生活。
織田家の中でも多少の権力を持っている。
忍の母親は、予言の研究者・風間氏の一人娘。
予言のことについて調べにきた織田将と恋に落ち、忍をもうける。
忍が幼いころに病死。
ミロクの母親は、正妻。織田将のはとこにあたる。
身体的にも精神的にも病弱で入退院を繰り返している。
忍が織田家に引き取られたのと同時期に結婚。
忍のことを気に入っており、ミロクの後見人にはぜひ忍を……と思っている。
そんな感じです。