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(BL小説)風のゆくえには~自由への道3-2

2015年01月07日 12時24分59秒 | BL小説・風のゆくえには~ 自由への道

「あれ? この2人、もしかして付き合ってる?」

 そう気がついたのは、私が初めて慶君に話しかけた日から一か月ほどたったある日。
 偶然見てしまったのだ。
 お釣りを渡す慶君の指が、受け取った桜井浩介の手をほんの一瞬、キュッと掴んだところを。



 喫茶『アマリリリス』
 私の通う大学の横浜キャンパスの最寄り駅近くの、少し横道に入ったところにある喫茶店。

 私は二年次から都内のキャンパスに通っているので、本来はここまで来る必要はどこにもない。
 でも。サークルの女の子達に連れてきてもらって以来、すっかり常連の一人となってしまった。

 外国映画に出てくる山小屋のような雰囲気。珈琲の香しい匂い。女子大生の華やかな笑い声。包容力のある瞳をしたふくよかな女店長。

 そして。女の子たちが密かに『アマリリリスの天使』と呼んでいるアルバイトの美少年(青年?)。
 それから。カウンターの片隅でいつも本を読んでいる寡黙で影のある大学生で、密かに『カウンターの君』とあだ名されている常連客。

 まるで舞台の一幕のよう。

 私が常連になったことで、「『氷の姫』がキャストに加わったわね」と、現在進行形の恋人、国中綾さんに言われた。
 氷の姫、というのは、私達が所属している演劇サークルの昨年の舞台での私の役柄。その舞台以来、みんな私のことを『姫』と呼ぶ。

 役柄同様、私は男嫌いで有名だったので、アマリリリスの天使をデートに誘った話は瞬く間に広がり、綾さんにまでバレてしまった。
 綾さんと付き合っていることはみんなには秘密にしている。同性の恋人が偏見の目にさらされることは今までお腹いっぱい味わってきた。私はそれでも構わないのだけれど、就職活動中の綾さんに迷惑がかかることだけは避けたい。それに秘密の恋というのもなかなかそそられるものがあって、それはそれでおいしかったりする。
 綾さんも私も束縛しない主義なので、お互い適当に遊びつつも良い関係を続けている。綾さんはどこからどこまでもまさに理想の相手だった。


 憧れの監督の舞台のオーディションを「男性経験がないから色気がない」ということを理由に落とされ、それなら男と付き合ってやる!と意気込んでいたところに、アマリリリスの天使の噂を聞いた。同じ大学の一年生。名前は渋谷慶。ファンになって通い詰めている子達も多いらしい。

 実際に見てみて納得した。天使というだけあって中性的できれいな顔立ちをしている。おそらく身長も165cmない。
 この子なら男男していないから拒否反応起こさず付き合えるかな?と思って、さっそく声をかけてみたけれど、あっさりと振られてしまった。好きな人がいるそうだ。

 でも、店の雰囲気が気に入ったこともあり、ちょくちょく珈琲を飲みにいくようになった。
 はじめは気まずいかな?と思ったけれど、天使はそんなことがあったとは露とも思わせない営業スマイルで出迎えてくれる。そこも気に入った。

 そんな中、『カウンターの君』の存在も気になりはじめた。
 自分自身も秘密の恋をしているせいか、カウンターの君が背中いっぱいで天使の動向を感じようとしていることに気が付いてしまったからだ。

(こいつ。天使に片思いしていて、ここに通いつめているんだな)

 そう結論づけたのも無理もないことだと思う。だって。この2人、店内では一切話したりしない。ほとんど目も合わせない。

 だから。レジで一瞬手を握ったシーンを見られたのは奇跡的だった。

 あの日。店が急に混んできて、新たな客が来た際にはもう満席だった。すると、来たばかりだったはずのカウンターの君が、珈琲を一気飲みして、サッと立ち上がったのだ。おかげでその客はカウンターに案内され入店でき、そして……

「ありがとうございました」

 天使が極上の笑顔でカウンターの君に釣銭を渡したのだけど……
 その時。その白い指がキュッとカウンターの君の手を掴んだ。ほんの一瞬だったけれど、絶対、掴んだ!

 掴まれたカウンターの君は、少し目を見開き、それから柔らかい幸せそうな微笑みを浮かべた。
 この反応。片思いの奴のする反応じゃない。
 これは。両想いの、恋人同士のやり取りだ。




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ダメだ。時間がないからここまで。
うーん。ダラダラと書いちゃったよー。
もっとコンパクトに分かりやすく書けないもんかなあ私。


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コメント (2)
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