先日、BSの映画チャンネルを何気なく回したら、
映画「あ・うん」を放送していました。
向田邦子さん原作ですね。
映画を、というより画面の冨司純子さんの
きもの姿があまりにきれいでつい見てしまった。
市松格子に縞の帯。
帯のほうはうまく映らなかった。
冨司さんのきれいなこと。
映画は1989年制作だから28年前。
このとき43,4歳。
わたしは、え~~と、子育てでもっとも忙~、
君のことはいいの、はい。
若いときの彼女もいいけど、このときが
もっとも美しいのでは?
40代の女性ってホント、きれい。
もっと大事にすればよかった、40代のワタシ。
君のことはいいの、はい。
南京陥落の年1937年(昭和12年)の東京を舞台に
一人の女性を真ん中に二人の男(健さんと坂東)、
ただし女は坂東と結婚しているといったお話。
(役名と役者名が一緒になっているけど)。
健さん扮する門倉は親友の奥さんに思いを寄せている。
向田ファンにはすっかりおなじみです。
紬にやはり紬のベージュ帯。
帯揚げと帯締めを臙脂で統一、というおしゃれぶり。
前にも見たことあるんですね。
でもきものに興味がなかった頃で、
向田さんの作品にしては甘い、というか、
女性(富司)も、門倉に好かれていることが
わかっているからでしょうか、
どこか媚びがあって、わざとらしい。
「かわうそ」などの作品の辛辣さがない。
~~なんて思ってました。
縞紬(木綿?)に矢の字が可愛い。
今回も、戦争中のサラリーマンの奥さんが
着るにはいい着物過ぎるし、
昭和の香りたっぷりのおうちも
懐かしくも素敵だけど、
どこか消毒したようなきれいさ~~。
三角関係とはいえ、あくまでプラトニックの
ファンタジーっぽい。
ちゃぶ台に刺し子の布巾と芸も細かい。
健さん(門倉)の妻役は宮本信子さん。
夫に愛人がいると知って慌ててきもの
着たらしく~~。
冨司さんの格子帯。どちらも帯板なし、だね。
水玉の半襟が可愛い。
ところがドラマのラスト近く、
娘(富田靖子)の恋人(真木蔵人・懐かしい)が
召集されることになって、別れの挨拶に来たとき、
「憲兵隊ににらまれた人間は、
生きて帰れないというからな」
と、門倉がつぶやく。
これまできれい事だったお話が
びりびりと破けて戦争、現実がいきなり現れる。
舞台は反転、天国が破れて地獄が
垣間見える~~。
ぞっとしました。
新宿の音楽喫茶を「らんぶる」を連想させる
喫茶店。二階に上がったところの、あの席ね。
これまでのファンタジーは、破られるために
あったのね。
だからこその夢物語だったのね。
「~今晩は帰ってこなくていいよ、俺が責任を持つ」
という門倉。
どう責任取るんだ、なんてね。
「さと子ちゃんにとっては今夜が一生分だな」
不覚にも、ここで胸を締め付けられた。
いえ、一生を一晩で生きる女性に、というより、
「戦争反対」で戦争に行く若者のことを思って。
これは「お国のために戦います」と出征するより、
何倍も辛いでしょう。
ものすごいいじめと本人の葛藤、
凄惨な死が待っているわけで。
ジャワに「栄転」が決まった夫と同行すると
言う妻。
会社は倒産寸前の門倉。
この人たちも、このあと悲惨な人生が
待っているわけで。
そんなわけで、
涙ぐみながらタイトルバックを見ていたら、
森田空美先生のお名前が。
そういえば、森田先生っぽいきものだったよなと。
でも、雑誌などと違い、冨司さん、襟周りなど、
なんと自分流に着崩していらっしゃることか。
この「美しい崩し」、大いに参考になります。
なんだっけ、これ、そう紙芝居!知ってる?
健さん、登場しないのも寂しいので。
珍しいオールバックの健さんを。
というわけで、なにかと物騒なこの頃、
戦争、起きてほしくない、
と改めて思った紫苑でした。
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