昨日の名人戦第3局は渡辺明名人が藤井聡太竜王を下し、1勝2敗としました。
際どい終盤戦になりましたが、最終盤では渡辺勝勢に。3三の地点に角を打てば藤井玉は助からず、打った角が守りにも効いていて渡辺玉の詰みはなくなります。
それほど難しい手とは思えず、決断の良い渡辺名人なら10分、勝利に直結する手なので慎重になったとしても、30分あれば充分なはずでしたが、実際には1時間30分の長考になりました。
終局後のインタビューで「決断がつかなかった」と心の迷いを正直に口にしました。
それは何故かと言えば、これまで藤井竜王の強さをまざまざと見せつけられて、相手を過度に恐れてしまったためでしょう。3勝18敗。この対局前までの対戦成績です。ここまでの力の差はないはずですが、これまでの渡辺名人の将棋人生で初めて太刀打ち出来ない相手が怪物・藤井聡太でした。
しかし、とにかく勝てたという事実は大きい。昨日負けていたら事実上終わりでしたが、これで1勝2敗。面白くなりました。
藤井びいきの私でさえ、少し苦しんで名人になった方が将来を考えればいいのではないかという思いがありました。第4局以降も名人戦にふさわしい熱戦を期待しています。
ところで藤井竜王の対局姿勢に変化がみられました。最終盤になると、体の上下動が大きくなり、相手にも落胆ぶりが伝わってしまうのですが、昨日は最後まで体を動かさず将棋に集中していました。もしかしたら、それが渡辺名人の大長考を呼び込んだ可能性があります。将棋の完成度は年齢より遥かに成熟しているのですが、勝負師としては年相応で成長過程にあるのだと思います。昨日は彼の心の成長を見たようで嬉しくもありました。