なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

以前、輸血後に急変した患者さん

2021年08月08日 | Weblog

 金曜日に73歳男性が自宅で動けなくなっているのを、訪問した妹さんが発見して救急要請した。

 救急当番の内科の若い先生が診たが、昼から新型コロナワクチンの問診に出かけるので(大規模接種会場)、後を引き継いだ。

 名前に見覚えがあった。7年前に貧血(Hb5.7g/dl)で開業医の先生から紹介されて、当時いた内科の若い先生が担当した(現在は他の病院の総合診療科で活躍されている)。多発性骨髄腫と判明して、血液内科のある病院へ紹介予定だった。

 輸血した後に呼吸困難から心肺停止に陥った。心肺蘇生術から自己心拍が戻り、人工呼吸管理になった。さらに人工呼吸から離脱することができた。無事に、県内有数の市立病院の血液内科へ転院となった。

 

 輸血の重篤な副反応である、輸血関連急性肺障害(transfusion-related acute lung injury:TRALI)としていた。しかし入院時から心拡大・胸水貯留もあったので、心不全や輸血関連循環過負荷(transfusion associated circulatory overload:TACO)なのかもしれない。

 

 血液内科への通院は途中で中断してしまっていた。多発性骨髄腫は治療しても完治はしないはずだが、中断してしまえば当然治ってはいない。

 今回Hb8g/dl台なので緊急の輸血は要しない。胸部X線・CTで両側肺の背側に浸潤影と胸水貯留(胸膜炎か随伴性胸水)を認めた。肺炎の治療をして経過をみることにした。

 頭部CTを見ると、年齢以上に脳委縮が目立ち、発言内容も理解し難い。認知症相当で、血液内科のある病院への搬送も難しいようだ。以前の入院時も随分と荒っぽいキャラクターの方だったと記憶している。

 妹さんが生活の面倒をみていて、弟さんは経済的に支援していたそうだ。できる範囲で治療するが、多発性骨髄腫の問題もあり、思わしくない結果になる可能性があると伝えた。

 病状が安定しても、到底一人暮らしができる状態ではないので、施設入所を目指すことになる。妹弟の関わりはずっと続くのだろう。

 

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