血液透析を受けている61歳男性が、前日からの発熱で8月2日(月)に発熱外来を受診した。発熱以外に症状は非特異的な倦怠感だった。
発熱外来担当は外科医で、新型コロナウイルスの抗原検査を行った。陰性だったので、胸部X線・血液検査に進んだ。胸部単純X線では肺炎を指摘する所見はなかったが、白血球9900・CRP12.5と炎症反応の上昇を認めた。肝機能は正常域で胆道系疾患は否定したようだ。
アセトアミノフェンと抗菌薬を処方して、翌日内科外来を受診するようにと指示していた。抗菌薬はモキシフロキサシン(アベロックス)だった。
アベロックス処方は、内科で透析患者さんの肺炎で使用していたのを知っていたのだろうか。内科で使用していたのは、地域の基幹病院呼吸器内科に肺炎の透析患者さんを紹介した際に、調整不要で使いやすいと勧められたからだった。
翌8月3日に内科外来を受診した。胸部CTで見ると左上葉(S3)に軽度の浸潤影を認めたが、咳・痰はほとんどなかった。これが発熱の原因と決めていいか確定できない。血流感染を否定するために、血液培養2セットを提出した。
入院はしたくないという。セフトリアキソン1gの点滴静注を追加して、翌日(透析日)に受診して外来か入院か相談することにした。
8月4日は完全に解熱はしていないが、解熱傾向で倦怠感は軽減してきていた。ただ血液検査でCRP25.5と高値を呈して、検査室から異常値の報告がきた。
CRPが発症から一番上がるころに相当することと、血中に停滞するために高値になっていると思われた。セフトリアキソン1gを追加して、モキシフロキサシン継続とした。
8月6日には解熱して、全身状態はかなり通常に戻っていた。CRP12.1と低下して始めていた。外来治療継続とした。8月11日の外来はまったく普通の様子で診察室に入ってきた。CRP4.0と軽快していた。血液培養2セットは陰性だった。
連休が入ったので、抗菌薬投与は9日と通常の1週間より長くなった。その日で治療は終了とした。透析患者さんの検査値は解釈が難しいが、全身状態をみて判断したのが妥当だったようだ。