85歳女性は、高血圧症・心臓バイパス手術後で内科外来に通院していた。退職した医師から回ってきたが、当方が診るようになってからも大分経つ。
夫が運転する車で病院に通ってきていた。奥さんが診察を受けるのを待っている間に、病院内をうろうろと歩いては迷っていた。奥さんがナビ役をしていたが、事故を起こさないか心配だった。
その夫が2~3年前に亡くなって(他院通院なので詳細は不明)、一人暮らしになった。寂しいとは言っていたが、元々活発な方で、毎日自宅横の畑仕事をしていた。
一人でタクシーで通院していたが、今年の2月に娘とその夫がいっしょに診察室に入ってきた。認知症で困っているという。毎日何度も電話してきて、同じ話を続けているそうだ。ご本人は、そんなことはしていないと憤慨していた。
精神科に紹介してほしいというので、頭部MRIの画像を入れて、診療情報提供書を出した。MRIでは年齢の割に、それほど萎縮がないように見えるが、VSRADで見ると海馬領域が特異的に萎縮していた。長谷川式は9/30点と驚くほど低かった。
改めて振り返ると、以前と違って来ていた。
不眠症としてブロチゾラム(レンドルミン)を半錠毎日内服している。心不全症状はないが、頭が重い・作業の後に腰・膝が痛い・胃腸の調子が悪いと、毎回ひと通り症状を訴える。それで何か薬を増やしてほしいというわけではなく、話をするとすっきりするということだった。
半年前からそれらの訴えをすることは少なくなり、「特に変わりなく睡眠薬を飲めば眠れる」とだけ言ってあっさり診察室を出るようになっていた。それまでの15分くらい話を聞くのがなくなっていたが、診察する方としてはかえって助かるので、変化を意識していなかった。
その後、介護施設に入所することになったが、施設の面接の日に施設の駐車場から逃げ出した。隣の市内の施設なので、あわてて捕まえて車に乗せたのだろう。施設からは、そのような人は入所させられませんと言われた。
その後、精神科病院にお願いしていたのがやっと空いて(家族としては)めでたく入院できるようになった。精神科病院だと本人の同意がないと手続きがいるはずだが、その辺は専門なので慣れているのだろう。
入院前に新型コロナの検査があり、陰性確認してから入院になるというのが、今どきだと思った。