なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

非代償性肝硬変(C型肝炎+アルコール性)

2018年12月21日 | Weblog

 水曜日に救急室で、地域の基幹病院呼吸器内科から紹介された高齢男性を診ていた。COPDで近くの医院から紹介されて、先方の外来を受診した。先月に肺炎で入院しているが、今回は肺炎に加えて以前からの腰痛の悪化で動けなくなっていた。

 入院ベットがないことと、腰痛で入院すると長くなりそうなので(?)、外来から直接当院入院を依頼された。当院向きの入院なので引き受けた。紹介した呼吸器内科の先生とは、先週感染管理の相互評価で訪問した時に会ったばかりだった。重症感染症や間質性肺炎は紹介されてもらい、高齢者の誤嚥性肺炎・肺炎治癒後のリハビリ・肺癌の緩和ケアは当院で引き受けるという関係でやっている。

 

 その時に、呼吸困難(体動困難も)で内科外来を受診した(初診)51歳女性が、外来から救急室に運び込まれた。内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が呼ばれていた。C型肝炎とアルコール性の肝硬変で、地域の基幹病院消化器内科(肝臓外来)に通院していたが、9月から通院を中断していたそうだ。

 通院中断の理由は「怒られるから」。確かに禁酒できないで、肝機能が改善しなければ、優しい扱いにはならないだろう。1週間前から病状が悪くなりすぎて、飲酒もできなかった。禁酒による症状が出た(幻覚妄想)が、その期間は自宅で過ごしたので、それはもう治まっていた。

 CTで見ると、胸腹水が大量に貯留していた。AST224・ALT76という比率からはアルコール性がメインと思われた。総ビリルビン5.0と黄疸があった。左肺は胸水貯留だが、右肺は肺うっ血・水腫なのか、ちょっと不思議な像を呈していた。著明な低酸素血症を呈している。

 当院の消化器科医とも相談して、結局救急搬送になった。

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鼠径ヘルニア嵌頓

2018年12月20日 | Weblog

 今日の午前中は救急当番だった。内科クリニックから、嘔吐が続いて脱水症を呈していると89歳女性の救急搬送依頼が来た。3日前から嘔吐が続いて、食事摂取ができないという。普段は降圧薬1剤のみ内服しているが、内服できないので血圧が190/100と高値だった。

 認知症はあるが、一人暮らしをしていた。娘二人が来て世話をしているそうだ。難聴はあるが、問いかけには答えられた。頭痛・胸痛ないという。腹痛はと訊くと、う~んという感じで少なくとも激痛はない。腹部は平坦に見えるが、下腹部に腸管が少し盛り上がっている。そして、左鼠径部に腫瘤がぽっこりとあった。(体型は痩せていて、閉鎖孔ヘルニアをきたすような老女)

 触診すると腸管だった。さすがにそこには圧痛がある。軽く押し込もうとしても戻らない、というか動かない。外科医に来てもらった。用手的にむにゅむにゅとやっていたが戻らない。手術予定で外科入院となった。NGチューブを挿入して、消化液をできるだけ吸引して、明日手術になるようだ。

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普通に急性虫垂炎

2018年12月19日 | Weblog

 昨日は内科当番で、当直は大学病院からバイトで来ている外科医(大学院生)だった。ベット稼働率の悪い当院も、時節柄か最近入院が増えている。一人くらい内科入院の連絡が来るかと思っていたが、来なかった。入院は一人だけで、8歳男児が急性虫垂炎で外科入院していた。

 当日の朝から腹痛があったが、学校に行った。帰宅して午後4時ごろから腹痛が増強して、午後7時に当院の救急外来を受診した。右下腹部に圧痛と反跳痛を認めた(デファンスはなし)。

 腹部単純CTで、本来腹腔内の脂肪が少ないので読影しがたいはずだが、腫大した虫垂(糞石あり)が描出されて、診断は容易だった。白血球15200・CRP0.4と急性期の炎症所見を呈していた。腹水貯留もなく、緊急手術の適応はないので、経過をみて本日手術となった。 

 

 

 昨夜は入院している胆管癌の82歳男性が夜間せん妄で大暴れした。抗精神薬3種類を使用しているが、結局ミダゾラム注でやっと治まった。就寝前の処方を追加してみるが、今晩はどうなるか。 

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ASO

2018年12月18日 | Weblog

 先週の木曜日に右下肢のASOで外科に紹介になった85歳男性。別の患者さんを診に救急室に行った時に搬入されたので、ちょっと診察させてもらった。

 先月から右足趾の潰瘍で近くの病院で治療していたが、治らなかった。地域の基幹病院の皮膚科に紹介されて、右下肢の冷感に気づかれて、外科に回されていた。大学病院の血管外科の先生が出張で来ていて、ASOで手術適応と診断された。地域の中で血管外科医のいる病院として当院に紹介されたという経緯だった。

 足趾に潰瘍はあるが、壊疽ではない。右下肢は膝上から末梢にかけて冷感があり、触っただけで血流障害とわかる。緊急手術の適応ではないので、必要な検査をして今週の待機手術となった。造影CTで右下肢の浅大腿動脈に23cm、膝窩動脈に2.5cmの閉塞を認めた。動脈の3次元構成をしてもらうときれいな絵ができる。

 認知症があり、救急室でもCTの時も騒いでいた。すぐに下肢を曲げようとするので、声掛けをしながら何とか放射線技師さんが撮影した。外科医は術後が思いやられると嘆いていた。

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血液培養陽性(MSSA・MRSA)

2018年12月17日 | Weblog

 先週入院した高齢女性の血液培養(2セット中2セット)からブドウ球菌が検出された。

 C型肝硬変の89歳女性からはメチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)が検出された。今年の7月に完全房室ブロックで心臓血管センターのある専門病院に搬送されて、心臓ペースメーカー植え込み術を受けている。心エコー(経胸壁)では心臓の弁やリードに明らかな疣贅は指摘できなかった。ペースメーカー本体の植え込み部位の炎症所見はない。

 入院時の胸部CTで両側肺に淡い陰影があり、肺うっ血・水腫疑いと判断していた。一部に肺炎の浸潤影様に見えるかと思ったが、ブドウ球菌の肺炎は考えにくい。心内膜炎の疑い、リードなどのペースメーカーデバイス感染疑いになってきた。循環器科医と相談したが、心エコー検査を2回・3回と繰り返してみるしかないと言われた。

 血液培養提出後からセフトリアキソンを開始して、翌日にはあっさり解熱して元気になっていた。MSSAの心内膜炎だとセファゾリンに切り替えになるが、末梢血管が見えにくい(確保し難い)のと、手間を考えるとセフトリアキソン1回(高齢+CKD)が助かるけど。

 

 右下腿蜂窩織炎で皮膚科に入院した88歳女性も、セフトリアキソンで治療が開始されていた。セファゾリンですかと皮膚科医に言ったところ、セフトリアキソンで開始したいと言われた。内科でも蜂窩織炎のようだが、尿路感染も考えられるという時にセフトリアキソンで開始したりしている。

 入院後高熱が続き、血液培養からメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)が検出された。ST・MINO・FOM・アミノグリコシドにお感受性があり、市中感染型のMRSAと判断された。血液培養で検出されたこともちょっと想定外だったが、(蜂窩織炎の起炎菌はブドウ球菌・連鎖球菌だが)MRSAはまったく想定外だった。

 抗菌薬をバンコマイシンに切り替えてからは解熱してきた。ブドウ球菌なので、心エコー検査や、腰椎MRIも検査してもらうことにした(ずっと以前からとはいえ腰痛症があり、確認が必要になった)。内科で引き取ることも考えて、いっしょに診せてもらう。

 

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街場の血液学~血小板の異常を診る

2018年12月16日 | Weblog
CareNeTV
街場の血液学
 宮崎医院 宮崎 仁先生
 
第6回 血小板の異常を診る
 
血小板増加
 
Case 84歳女性
 白血球9300(分葉核球68.7%、好酸球2.8%、好塩基球0.3%、リンパ球24.4%、単球3.9%)、Hb13.2%、血小板76.4万
 ・好中球アルカリホスファターゼ(NAP)活性正常
 ・BCR/ABL(FISH)陰性
 ・JAK2遺伝子変異陽性
 読み方
 ・白血球著増なし
 ・白血球分画正常
 ・血小板著増
 ・BCR/ABL陰性
 診断:本態性血小板血症
 
血小板増加の鑑別
 血小板増加45万/μl以上(実際は60万以上が続かないと有意にとらない気がする
 (一過性?)
 ・生理的増加?
 ・反応性
 ・クローナル
 
反応性血小板増加症を来す病態
 1.鉄欠乏(一番頻度が高い)
 2.脾臓摘出後
 3.外傷・外科手術後
 4.感染症
 5.慢性炎症性疾患
 6.リウマチ・膠原病関連疾患
 7.悪性腫瘍
 8.リンパ増殖性疾患
 9.その他
 
血小板増加を来すクローナルな血液疾患
 1.本態性血小板血症(ET)
 2.慢性骨髄性白血病(CML)
 3.真性多血症(PV)
 4.原発性骨髄線維症(PMF)
 5.骨髄異形成症候群(MDS)(一部)
 
本態性血小板血症の頻度
 ・クローナルな増加のなかでは45%
 ・血小板増加症全体でみると5%(今まで2例しか経験してない。
 
血小板増加症のポイント
 ・血小板増加症の大半は反応性(二次性)であり、原因となる基礎疾患がある
 ・本態性血小板血症(ET)などの骨髄増殖性腫瘍に由来するものは全体の10~20%にすぎない
 ・一過性の血小板増加も多いので、血小板数を経時的に追うことが大切

血小板減少
 
Case 30歳男性
 検査で指摘、症状なし
 白血球数4600、Hb15.9、血小板数1.1万、凝固系検査正常
 診断:EDTA依存性偽性血小板減少症(有名だがそんなにはないと思う
  採血管内の血小板凝集
  EDTA以外の抗凝固薬(フッ化Na、クエン酸Na、ヘパリン)を用いた板採血管で再検査すると血小板数は正常

薬剤性血小板減少症を来す薬剤
 1.ヘパリン
 2.キニン、キニジン
 3.抗リウマチ薬(金製剤、D-ペニシラミンなど)
 4.抗菌薬(ST合剤)
 5.抗けいれん薬(バルプロ酸、カルバマゼピン、フェニトインなど)
 6.H2ブロッカー(シメチジンなど)
 7.鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)
 8.利尿薬(サイアザイド系利尿薬)
 9.抗がん剤/免疫抑制剤
 
Case 30歳女性
 1カ月前から点状出血、紫斑。2日から鼻出血。
 白血球4800、Hb13.2万、血小板1.1万、凝固系検査正常
 診断:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
 
ITP診断のポイント
 ・血小板少(<10万/μl)あり
 ・偽性血小板減少症ではない
 ・末梢血スメアでMDSを疑わせるような形態以上(dysplasia)なし
 ・貧血なし
 ・白血球数正常
 ・血小板減少を来しうる各種疾患を否定できる(ITPは除外診断)
 
血小板減少に対する対応(ほかの血球に異常がない場合)
 ・血小板数10万以上で「出血症状なし」なら経過観察
 ・血小板数5~10万なら精査
 ・血小板数5万以下なら精査・治療
 ・血小板数2万以下なら緊急の対応が必要
 血小板数10万未満が続けば、PAIgG・抗血小板抗体を測定した上で血液内科へ紹介している。すでに診断がついている患者さんが1名外来通院していて、プレドニン5mg/日で安定している。
 
血小板減少症のポイント
 ・血小板数のみが低下しており、それに見合うだけの出血症状がない場合は、偽性血小板減少症を疑う
 ・ITPと診断するためには、血小板減少を生じる可能性のある病態を除外する必要あり
 ・血小板数2万以下では、緊急の対応を
 
ぶらなび 血液疾患診療ナビ: あなたが診ても,ここまでわかる!
 
 プライマリケア学会のセミナーで宮崎先生のワークショップに出た。著者サイン入り。
 
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蜂窩織炎・肝硬変

2018年12月15日 | Weblog

 水曜日の夕方高熱で88歳女性が救急搬入された。救急当番の外科医が診て、血液検査で延焼反応上昇(白血球数12400・CRP5.4)を認めたが、肺炎や尿混濁はなかった。

 腰痛もあることから、化膿性脊椎炎を疑って整形外科医に相談されたが否定された。以前から腰痛はあり、高熱のために増強されたものという判断だった。

 次に内科に相談された。右下腿の発赤・腫脹があり、蜂窩織炎の可能性があるがどうか、という。確かに肺炎・尿路感染症は否定的で、関節炎でもない。手足・眼に敗血症性血栓塞栓もない。足趾間に白癬症もありそうで、蜂窩織炎でいいようだ。熱はあるが、バイタルは安定して、患者さんは問いかけにハキハキと答えた。

 左下腿は発赤はないが、色素沈着があり、以前左下腿に蜂窩織炎を起こしたのかもしれない(皮膚科医院にふだんから通院している)。最近は皮膚科医で四肢の蜂窩織炎を診ているので、連絡して皮膚科入院で診てもらうことになった。

 

 外科医から、軽度の肝機能障害もあり、画像(胸腹部単純CT)で肝臓が小さいがと言われた。AST 46・ALT 26・ALP 490・GTP 152・総ビリルビン2.4とどちらかと言えば胆道系酵素優位な異常を認めた。画像では胆道系に異常を認めないが、肝臓は右葉萎縮して左葉肥大を認めて、肝表面に明らかな凹凸がある。脾腫もあった。

 B型・C型肝炎はなく、アルコール性でもない。おそらく原発性胆汁性肝硬変と判断された。血液検査でミトコンドリア抗体と抗核抗体を追加で出してもらった。内科医院に通院しているが、肝臓に関する処方はなかった。抗体検査で確定すればウルソを処方する。

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肺炎・心不全?

2018年12月14日 | Weblog

 水曜日に、外来で診ているC型肝硬変(非代償性)の89歳女性が高熱で救急搬入された。内科の別の先生が診ていたが、すでにひとり救急から入院させていたので、当方が入院治療を引き受けた。さらにまた別の患者さんが救急搬入される連絡が入ったところだった。

 難聴はあるが、年齢の割に元気な方だった。非代償性肝硬変に加えて慢性腎不全(血清クレアチニン1.3~1.5程度)もある。さらに今年7月は、週末の夜間に完全室ブロックで受診して、心臓血管センターのある専門病院で心臓ペースメーカー植え込み術を受けていた。

 すでに検査はされていて、白血球数16100・CRP0.5と感染症の初期を想起させる結果だった。胸部CTに淡いスリガラス様の陰影が広がっていて、これは何だろうということになった。BNPが普段(100台)より高い300に上昇している。肺うっ血・水腫の陰影のように思われた。左下葉の一部に肺炎の浸潤影ととれるところもある。酸素飽和度の低下はなく、酸素吸入は不要だった。下肢の浮腫はない。

 尿混濁はなく、胆道感染らしくもなく、関節炎・蜂窩織炎もない。確定診断とも言い難いが、肺炎・心不全で内科入院とした。ふだんの内服にラシックスとサムスカが入っているが、ラシックスを静注して、セフトリアキソンを開始した。

 搬入時は、呼びかけると開眼して問いには答えるが、活気がなかった。翌日には解熱してきて、いつものようなぶっきらぼうな言い方で答える様になった。入院した日の夕食は介助で無理しない程度にと病棟看護師さんに言っていたが、9割方食べていた。翌日からも完食している。丈夫なものだ。

 

 救急室で血液培養2セットを提出していたが、今日2セットからグラム陽性球菌が検出されたと報告がきた。セフトリアキソンが効いているようなので、そのまま継続で結果(最終報告)待ちにした。心エコー(経胸壁)ではペースメーカーリードを含めて明らかな疣贅はないという報告だったが、poor studyと付記されていた。敗血症性血栓塞栓はない。

 10月に下肢(足関節~下腿遠位)の蜂窩織炎で入院していて、それが心内膜炎の原因になった可能性も考えられる。循環器科医と相談して、(経胸壁ではあるが)心エコーを来週以降に(何度か)再検することになった。

 心不全・肝不全・腎不全はあるが、元気な89歳だ。

 

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前立腺癌緩和ケア

2018年12月13日 | Weblog

  12月3日に地域の基幹病院緩和ケア科から、前立腺癌・肝転移・骨転移の84歳男性が転院してきた。奥さん(元看護師)と二人暮らしだが、その奥さんは90歳前後の伯母2人を泊まり込みで介護していた。夫の介護まで手が回らず、在宅介護困難ということで当院転院で入院治療継続となった。

 画像が送られて来てなかったので、翌日血液検査と胸腹部CTで確認してみた。PSAが277と上昇して、肝臓全体に多発性転移があり、骨盤・脊椎・肋骨にも転移を認めた。前立腺癌は膀胱内に浸潤していた。癌性疼痛にフェントステープ1mgが使用されていて、疼痛は治まっているようだ。

 前立腺癌は経過が長いので、当初は入院期間が長くなったらどうするかとも考えていた(療養型病床への転院など)。しかし、入院後食欲はなく断続的に嘔気もある。顔色が悪く、会話もだるそうにしていた。当院での入院期間で緩和ケアが終了になりそうな見込みだ。

 糖尿病はないので、予後3か月の見込みとして、大津秀一先生流のステロイドを投与することにした。デカドロン少量内服で、少し食欲が出て、顔色と表情が良くなった。

 病状が安定していれば、年末年始に自宅に外泊の予定だったが、看護師さんから今の病状では自宅外泊は早い方がいいと言われた。介護タクシーでの往復も大変だが、奥さんと相談することにした。

 

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ウェルニッケ脳症?

2018年12月12日 | Weblog

 地域の基幹病院から54歳女性が月曜日に転院してきた。先月初めに近くの診療所から、肝機能障害で消化器内科に、下肢の脱力で脳神経内科に紹介される予定だったが、その前に意識障害で救急搬入されていた。

 消化器内科に入院して、肝機能障害はアルコール性肝障害と判断された。アルコール多飲が続いていて、食事摂取も不規則というか偏食があった。脳神経内科で経過からウェルニッケ脳症と診断された。ビタミンB1補充で意識障害は軽快したが、下肢脱力・運動失調が続いた。記銘力障害・見当識障害・作話があり、コルサコフ症候群相当だった。

 さらに発熱が続いて、左胸水貯留があった。呼吸器内科で精査して、塗抹陰性・結核菌PCRは陰性だったが、胸水のADA上昇から結核性胸膜炎と診断された。INH・RFP・EBの3剤が開始された。肺外結核で排菌はしていないので、大部屋管理だった。

 先週入院主治医の消化器内科ではなく、胸膜炎を診た呼吸器内科医から電話がきて、転院を依頼された。アルコール性肝障害が改善して、ウェルニッケ脳症はビタミンB1補充で経過をみるだけなので、あとは結核性胸膜炎で呼吸器内科の問題になる。退院して外来通院できれば抗結核薬継続だが、運動失調で歩行できないので退院のめどがつかない。リハビリを入れると長期の入院になるので、当院紹介としたのだった。

 2か月ちょっと当院で入院治療したとして、その後はどうなりますがと訊いた。「あっ」と言われたが、「確認してまた依頼します」、となった。年齢的に介護保険の適応になるかどうかわからないし、施設入所というのも考えにくい。夫と娘の3人家族だが、日中はひとりになる。入院期間は限定的で、その後は症状があまり改善しない場合でも自宅退院になることを家族に伝えました、ということで診療情報提供書が送られてきた。特に断る理由もないので引き受けた。

 転身してくると、確かに偏食で好き嫌いが激しい。できる範囲で食事の工夫してもらうことにした。会話自体はスムーズだが、「夫は大学教授」とか「よさこい祭りがあるので」とか、適当なことをしゃべりつづける。転院前から体幹抑制されていて、当院でも継続して経過をみることにした。試しに長谷川式をしてみると、8点だった。

 送られてきた頭部MRIを見ると。ウェルニッケ脳症の変化はなかった。問い合わせて、放射線科の読影レポートを取り寄せると、やはり「ウェルニッケ脳症の所見は認めません」とあった。診療情報提供書にある入院時のビタミンB1の値も正常域だった。

 どうも臨床診断らしいが、発症状況や症状は確かに合っている。今度夫が来院した時に、発症前の様子を詳しく訊いてみることにした。リハビリの指示が入らないので、PTさんは苦労している。

 現実的に自宅退院は難しそうで、療養型病床や場合によっては精神科病院にお願いするしかないかもしれない。

 

 

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