なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

外傷性血胸

2018年12月11日 | Weblog

 昨日の月曜日の朝に患者さんを乗せた救急車が出ていくのが見えた。救急室から直接高次医療機関に搬送されたのかと思ったが、救急室の看護師さんに訊くと、外科で入院していた患者さんが大学病院になったという。

 内科日直をしていた先週の土曜日に、乗っていて脚立が倒れてその脚立で左側胸部を打撲した中年の男性が外科の救急外来を受診した。胸部CTで左肋骨が複数骨折していた。バイタルと検査は問題なく(白血球増加はある)、週明けに外来受診として帰宅となった。

 その患者さんは、翌日の日曜日の夜間に胸痛で救急搬入された。胸部CTで左血胸を認めて、胸腔ドレーンが挿入されて入院になった。600mlの血液が排出して、その後も血液の排出が続き、月曜日の朝には血圧が90mHg台になって、Hb9g/dlに下がった。開胸治療が必要となり、呼吸器外科のある大学病院へ救急搬送となったのだった。

 

 後から画像を見ると、初診時に少量の血胸があり、経過をみるために入院が必要だったようだ。PTLSのテキストによると、大量血胸では排液量が1000ml/即時、1500ml/時×1時間、200ml/時×4時間の出血の場合(輸血をしないとバイタルサインが保てない)には開胸を行うとある。今回は200ml/時×4時間に相当する。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原因不明の腹痛・血便

2018年12月10日 | Weblog

 先週土曜日の日直の時に、35歳男性が右上腹部痛で受診した。動くのもつらいくらいの疼痛だったが、腹部は案外平坦・軟で圧痛は軽度だった。ご本人はまた胆石の痛みが来たと言っていた。

 20歳頃から断続的に血便(赤黒色)があるという。内科医院から地域の基幹病院消化器内科に紹介されたこともあるが、仕事の都合で予定された大腸内視鏡検査は受けていない。

 今年の6月に右上腹部痛で救急外来を受診していた。腹部エコーは全体にpoor studyだが、胆嚢内に小結石があるようにも見えた。翌日に消化器科外来を受診した時には腹痛は治まってきていた。仕事の都合で入院できないと外来治療になった。その時も、その後は受診せず、勧められた大腸内視鏡検査は受けていない。

 土曜日の腹部造影CTでは、収縮した胆嚢が描出されて、胆嚢結石とも胆嚢炎ともいえなかった。胆道系の拡張もない(脂肪肝は目立つ)。上行結腸に多発性憩室を認めるが憩室炎とはいえず、虫垂も正常だった。腹部エコーはやはりpoor studyで胆嚢も良く見えない。 

 入院後は右上腹部痛は軽快して、違和感程度になった。腹部エコー再検で胆嚢は十分に描出されて、胆嚢結石はなかった。病室から職場に携帯電話で連絡して、仕事の指示を出していた(希望で個室にいた)。建設業で自分がいないと仕事が止まってしまうといのは本当らしい。すぐに退院したいが、今日中に内視鏡検査が全部できませんかという。

 内視鏡担当の先生に相談して、まず上部消化管内視鏡検査をして、それから腸管洗浄液を飲んで、午後に大腸内視鏡検査をしてもらえることになった。上部は異常なし。大腸は下行結腸に軽度発赤があるだけだった。

 疑っていた潰瘍性大腸炎は否定された。小腸クローン病は否定できないが、そうだとしてここまで10年以上の経過で、これといった合併症も起きていない点では否定的なのか。小腸のvascular ectasia?。血便の症状が続くときは、小腸検査(カプセル内視鏡かバルーン内視鏡)を受けもらうしかないが、これは専門病院に行かないとできない。

 結局血便の原因も、右上腹部痛も原因が不明のまま退院となった。腹痛はまだ2回なので、血便と同時に起きるのか、別個に起きるのか関係ははっきりしない。

 入院時から絶食だったので、病院では一食も食べないで退院することになる。普通は食事を出して、悪化しないことをみてから退院になるものだが。退院する時は元気に歩いて行った(母親が慌ててあとから追いかけて行った)。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

重症急性膵炎

2018年12月09日 | Weblog

 先々週の月曜日の夜間に入院した急性膵炎の45歳男性。腹痛に対して、アセリオ1000mg点滴静注を2回、ソセゴン15mg静注を2回行った。その後は腹痛は自制可となったが、腹部膨満が続いてしゃっくりもしていた。

 腹部のコンパートメント症候群を疑ったが、圧痛があるが腹膜刺激症状はなかった(後腹膜の問題だから?)。頻脈気味ではあるが、血圧は安定して、酸素吸入もしなかったので、当院入院で経過をみた。

 腹部造影CTを再検すると、膵周囲の浸出液は広がって、腎下極以遠の後腹膜にまで及んでいた。膵造影不良域はないが、CT分類ではGrade 2相当で重症になる。

 血清アミラーゼは入院後すみやかに低下して正常域になった。血清アミラーゼは重症度分類に入っていないが確かに使えないのだった。重症度判定基準では血清Ca低下とCRP高値が当てはまり、SIRS診断基準はぎりぎり当てはまるかどうか。3項目以上は重症になる。

 このCT像を呈した時、腹部膨満は軽減してきていた。酸素吸入をしていないのと、血圧が安定していたので、そのまま診てきたが、高次医療センターに搬送すべきだったのかもしれない。

 CRPは50まで上昇して、その後は30、20と軽減してきた。乏尿になったわけではないが、途中から尿が気持ちよくできるようになりました、寝返りが楽にできるようになりました、と臨床経過が軽快していること話してくれたことも、そのまま経過をみた大きな要因になった。

 

  

 金曜日に内科専攻医の基幹病院である医療センターの統括責任者の先生(消化器内科)が、研修指導の打ち合わせと専攻医の症例進捗状況確認で来られた。ちょっとこの症例に話をしたところ、重症急性膵炎は全身管理が必要となり集めているので、送ってくださいと言われた。

 すでに食事(膵臓食全粥)も出しているが、2週目以降に仮性嚢胞などの合併症が起きてくることもあり、転院をお願いする可能性はまだまだある。当院で診られるぎりぎりの症例だ。

 機会飲酒だが、発症前日にアルコール多飲があったのと、高中性脂肪血症を放置していて入院時は中性脂肪2800と上昇していたのが原因と思われる。胆嚢内に小結石が2個あり、総胆管に一時的に嵌頓して排石した可能性もあるが(MRCPで総胆管に結石はない)。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

感染性大動脈瘤

2018年12月08日 | Weblog

 金曜日に内科の若い先生に相談された69歳男性は、思いがけない展開になった。

 血液透析を受けている患者さんで、1週間続く鼻汁と発熱(38~39℃の高熱)で2日前に水曜日に内科新患を受診した。咽頭発赤は軽度だが、後鼻漏を認めて、頬部に叩打痛があった。検査で白血球数10700・CRP11.9と炎症反応の上昇があった(前日の透析の時にも白血球数8500とふだんの3000台より倍増して、CRP7.5と上昇していた)。細菌性副鼻腔炎として抗菌薬(ABPC/CVA)を処方して、2日後に再受診としていた。

 金曜日の再受診時にも高熱が続いていた。検査で白血球数15200・CRP19.4と悪化していた。患者さんの全身状態は悪くないが、副鼻腔炎でいいのかということになった。

 CTの検査で有意な副鼻腔炎らしい所見はなかった。肺炎のチェックもあるので胸部も含んでいたが、大動脈弓の外側に病変があった。airもあるようだが、単純CTなのでそれ以上のことはわからない。

 発熱・炎症反応上昇からは感染症と考えられた。縦隔の炎症性病変となると、縦隔炎・縦隔膿瘍になる。鼻炎症状があることから、耳鼻咽喉科で診るような上気道疾患から波及した可能性がある。しかし耳鼻咽喉科で診察してもらったが、これといった病変なかった。気管・気管支病変からの波及、食道からの波及なのか。

 透析を担当している外科の先生に相談して、ガストロガラフィンによる食道造影が行われたが、食道病変はなかった。気管・気管支の病変は否定できないが、院内で気管支鏡検査はできない。

 外科医がMRIをオーダーした。放射線科のMRIに詳しい技師さんが担当してくれて、大動脈につながる動脈瘤が描出された。単なる瘤ではなく感染性大動脈瘤になる。心臓血管センターのある専門病院に紹介搬送となった。(この患者さんは以前CABGを受けている)

 金曜日のちょうど時間外に入った時で、外科医のみごとな診断だった。造影CTができれば一発だったはずだが、大分回り道をしてなんとかたどり着いた。

 それにしても、引き受けてくれた心臓血管外科はどう対応するのだろうか。まずは血液培養を採取して抗菌薬投与からだと思うが(当院でも最初に相談を受けた時に血液培養は2セット提出していた)。

 水曜日に、昨日から前胸部の上部が何となくおかしいという症状があった。確認すると、違和感程度で痛みというほどではないが続いていたそうだ。後から思うと、重要な症状だった。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くも膜下出血

2018年12月07日 | Weblog

 水曜日に意識障害の83歳女性が救急搬入された。救急当番はちょうど神経内科医(ひとり科長)だった。頭部CTでくも膜下出血を認め、右前頭部内側に出血していた。右前頭動脈に脳動脈瘤があったのだろうか。すぐに脳神経外科に救急搬送されたが、手術できるかどうかわからない。いずれにしても急性期の治療後に当院に戻ってくるのだろう。

 この患者さんは4年前に内科医院の紹介で、当院頭部MRI検査を受けていた。陳旧性ラクナ梗塞を認めたが、新規の脳血管障害はないと放射線科で読影されていた。その時のMRAで、脳動脈瘤はない。そこからの4年間に脳動脈瘤ができたことになる。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

肝海綿状血管腫

2018年12月06日 | Weblog

 昨日、内科の若い先生(地域医療研修の専攻医)に77歳女性の肝腫瘍について相談された。もともと不全片麻痺がある方で、ふらついて腰部を打撲した。経過をみるために先月末に入院になっていた。

 入院時の画像検査で、頭部CTとともに肺炎などのを有無をみるために胸腹部CTも撮影したところ、肝臓内に巨大な腫瘤があった。放射線科の読影レポートで造影CTを勧める、となっていたので、改めて腹部造影CTを行っていた。

 肝右葉全体に低濃度腫瘤があり、辺縁部は造影されて、内部は徐々に造影されていた。中央部には不整な低吸収域がある。診断は肝巨大海綿状血管腫。

 これに関しては無症状だった。肝機能検査では胆道系酵素の上昇を認めるが、トランスアミナーゼは正常域だった。これは本人と家族にお話して、希望があれば高次医療機関に紹介するが、経過をみるしかないと思われる。

 週1回は研修の基幹病院である医療センターに戻るので、消化器内科の肝臓専門医に訊いてみては、と伝えた。肝臓専門医は肝炎と肝細胞癌の専門家だが、こういうのはあまり診ていないかもしれない。

 

 

 昨日は赤十字病院で開催された倫理研修会に出席した。テーマは「現代の看取りについて」。大学の医療倫理学の教授が講演された。病状の悪化した、あるいは経口摂取できなくなった高齢者にどこまで治療するかという問題になる。

 法制化は難しく、簡単なガイドライン(人生に最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン)はあるのものの、結局は患者さんごと、家族ごとのケースバイケースになる。施設勤務の先生方も参加されていた。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パキスタン人の受診

2018年12月05日 | Weblog

 昨日は内科当番だった。午後11時に当直の先生(大学病院外科からのバイト)から連絡がきた。慢性硬膜下血腫の76歳女性が受診して、一晩経過をみたいが、扱いは内科になるのか外科になるのかという。

 頭蓋内血腫が内科に入院することはないので、どちらかといえば外科だと思うが、軽度でなければ紹介した方がいいのではないですか、とお伝えした。結局外科の当番の先生に連絡して、一晩当院で過ごして午前8時半過ぎに地域の基幹病院脳外科へ転送となった。

 先月初めに頭部打撲の既往があった。昨夜は左下肢脱力で受診していた。数日前から症状が出始めて、夜間に受診したくらいだから進行してきたのだろう。会話は可能だったようだ。

 当直医は、「一晩みてから搬送した方が、お互いにハッピーですから」と言っていたが、これはすぐ脳外科のある病院に搬送してもいいんじゃないだろうか。大至急手術になるのでなければ、確かに紹介される脳外科は日中の方が助かるとは思うが。慢性硬膜下血腫に新規出血が加わったように見えるし、midline shiftがあるのは怖い。

 

 

 月曜に、45歳のパキスタン人男性が喘息発作で内科新患を受診した。ご本人は日本語がちょっとしかわからない。付いてきた19歳の息子さんは日本語を話せるので助かった。喫煙者で、胸部CTでみると、軽度だが気腫性変化がある。肺炎はなかったが、(ウイルス)感染を契機にしたCOPD+喘息と判断された。喘息発作は初めてらしい。

 新患担当の先生がネブライザーを2回したが、治まっていなかった。ネオフィリンとステロイド(デカドロン)の点滴をして、少し経過をみると喘鳴は消失しないが、かなり治まってきた。外来治療希望なので、翌火曜日に来てもらった。軽度に喘鳴があったが7割は軽快したという(別の日本語がわかるパキスタン人が付いてきていた)。

 ステロイド内服を数日分のみ追加して、気管支拡張薬・抗ロイコトリエン薬に吸入ステロイド(ICS/LABA)で1週間後に再受診とした。その付いてきた65歳男性から、自分も糖尿病の薬を2か月中断しているので、処方してほしいと言われた。

  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

悪性リンパ腫

2018年12月04日 | Weblog

 今年の7月に地域の基幹病院腫瘍内科から73歳女性が紹介されてきた。昨年から悪性リンパ腫(濾胞性リンパ腫)で経過をみていたが、今後は当院に外来フォローから終末期の入院までお願いしたいという内容だった。

 昨年の7月に下肢の浮腫で内科医院を受診した。病院に依頼したCTで両側腋窩・傍腹部大動脈・鼠径部のリンパ節腫脹を認めて、リンパ腫が疑われた。腫瘍内科に紹介されて、リンパ節生検で濾胞性リンパ腫と診断された。

 患者さんは化学療法は希望せず、ステロイド(プレドニン10mg/日)を処方したところ、下肢の浮腫は軽減したそうだ。ただこの患者さんは認知症があり、病状を理解できない。面倒なことはしたくない、ということだったようだ。

 7月から当院内科外来に通院していた。左下顎のリンパ節腫脹を気にしていたが、食事摂取には支障なかった。患者さんは独居(独身)で近くに住んでいる兄弟が連れてきてくれた。

 先月から両側下肢浮腫が悪化して、CTでみると傍大動脈・鼠径部のリンパ節の腫大が進行していた。その時点ではまだ食欲があったが(入院はしたくないと言われた)、今月になって食欲が低下してきた。下肢の浮腫も変わらない。

 入院しますかというと、今日はいやだという。今日も付き添ってきた兄弟があきれるくらいに、この日はだめでこの日ならいいがやっぱりだめでと言い続けて、結局明後日入院するということになった。

 こういう場合はできるだけ長く自宅で過ごすことを優先的に考えるが、あまり長く自宅にいると急変して心肺停止で救急搬入になることがある。

 治るまでどのくらいかかりますか、と何度も訊いていたので、自分の病状はわかっていない。かえっていいのかもしれない。看護師さんが入院の準備について説明している時に、兄弟の方をよんでお話しすると、「もうわかってますから。明後日は間違いなく連れてきます。」と言われた。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳梗塞、前立腺癌

2018年12月03日 | Weblog

 昨日の日曜日の日直は消化器科医で、その日は内科当番だったが、新入院の連絡はなかった。今日画面で確認すると、救急外来受診数自体が少なかったようだ。

 夕方に施設入所中の86歳女性が意識低下で受診して、新規の小脳梗塞と診断された。家族の希望もあり、地域の基幹病院へ転送されていた。教科書的には、小脳梗塞は脳浮腫が悪化すると脳ヘルニアをきたすので、脳外科の扱いになる。

 施設の共同ルームに来なかったことに職員が気づいて発見していた。脳梗塞の既往があるが、歩行はできていた。心房細動があり、いずれも脳塞栓症のようだ。急性期を過ぎると、リハビリ目的で当院に戻ってくるだろう。

 

 今日は救急当番の内科の先生が、脳梗塞の66歳男性を入院させた。数日前から左片麻痺があったが、受診はしていない。今日は民生委員の方が連れてきてくれた。

 MRAで右中大脳動脈(MCA)が閉塞して、MCA領域に梗塞巣が散在している。MCA全体の脳梗塞に陥るか、まだらな状態で踏みとどまるか。社会的に問題のある患者さんのようで、ソーシャルワーカーの介入が必要だ。

 

 

 今日は基幹病院の緩和ケア科から、前立腺癌・肝転移・骨転移の84歳男性が転院してきた。元市役所職員の患者さんはかなり気難しそうだ。奥さんは元看護師さんだが、90歳前後の伯母2人を泊まり込みで介護していた。介助で車いすがやっとの夫まで介護するのは困難と判断して(それまで夫婦でそちらの家に泊まり込んでいた)、緩和ケア科の先生が当院への転院を勧めたそうだ。

 画像が送られて来てないので、どのくらいの予後が見込まれるか判断しがたい。癌性疼痛にオピオイドを使用していて施設入所はできないので、低め安定で過ごした場合はさらに療養型病床のある病院にお願いするかもしれない。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高齢者のてんかん(講演会)

2018年12月02日 | Weblog

 木曜日にてんかんの地域医療連携セミナー行ってきた。てんかんを専門とされる脳神経内科医と脳神経外科医が講演があった。

 

 最初に脳神経内科の先生が、てんかんの新薬の話をされた。

 第3世代の3LPを使用して下さいという話だった。3LPは、Lで始まるレベチラセタムLevetiracetam(商品名イーケプラ)・ラモトリギンLamotrigine(商品名ラミクタール)・ラコサミドLacosamide(商品名ビムパット)とPで始まるペランパネルPerampanel(商品名フィコンパ)

 これらは作用が強いというよりは副作用が少なく、他剤との相互作用が(薬によるが)少ない。古典的なフェニトイン・バルプロ酸・カルバマゼピンではなく、最初から第3世代を使用して下さいという。ただし薬価が高いので、自己負担が1割になる自立支援医療の申請をするよう勧めていた。

 てんかん講座の教授から紹介された患者さん2名はさっぱり発作が治まっておらず、てんかん薬を変更して何とか改善したという話で、会場の笑いをとっていた。難治性てんかんで専門医も治療に苦慮するレベルの話だが。

 

 その後に脳神経外科医の先生が「高齢者のてんかん」の話をされた。

 てんかん発作型分類(2017)では、焦点発作(以前の部分発作)と全般発作があり、焦点発作は覚醒(以前の単純)と意識減損(以前の複雑)に分かれる。

 てんかん病型分類(1989)では焦点性・全般性がそれぞれ、特発性症候性に分かれる。

 てんかんの発症は10歳以下で多く、その後低下して、65歳以上の高齢者でまた増加する。高齢者では、脳血管障害・認知症・脳腫瘍・外傷・感染症などによる症候性てんかんになる。

 高齢者の焦点性意識減損発作(以前の複雑部分発作。二次性全般化になれば痙攣する。)では、けいれんしない発作が大部分だそうだ。急にぼんやりしたり、動きが止まったり、奇異な動きを繰り返いしたりということで気づかれる。

 非けいれん性てんかん重積non-convulsive atatus epilepticusは原因不明の意識障害の8~20%を占める。変容する意識障害、顔面ミオクローヌス・眼振、失語・せん妄・認知症様症状、先行するけいれん発作後の遷延性意識障害で疑う。診断には脳波検査が必須になる。予後不良で死亡率57%という報告もある。

 要は、高齢者てんかんはけいれんしない発作が大部分ということ。

 講演後に、非けいれん性てんかん重積の治療について確認の質問をした。治療はけいれん性と同様のジアゼパム静注とそれに続く抗てんかん薬の点滴静注になります、ということだった。まあ当然だとは思うが、けいれん性ではためらうことなくジアゼパム静注を行うのに対して、非けいれん性では意識障害の鑑別がつかない状況での使用になるので、ジアゼパム静注はためらってしまいそうだ。

 てんかんのガイドラインの項目に「痙攣」と記載されているが、非けいれん性もあるので、正しくは「てんかん発作」とすべきだと言われていた。こういうのは直接聴かないとわからない話だ。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする