なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

この肺疾患は何?

2019年09月10日 | Weblog

 昨日68歳女性が、発熱・回転性めまい・嘔気で救急搬入された。自覚症状としてはめまいで救急要請したようだ。その日に急に発症したもので、BPPVなのかもしれない。

 市内の内科クリニックに通院していて、詳細は不明だが、クラリスとテオフィリン製剤が処方されていた(気管支拡張症に気管支拡張薬のパターン)。酸素飽和度が92%(室内気)と低めだった。39.3℃の高熱がある。

 救急当番だった内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が担当していたが、胸部X線の所見で困って相談された。両側肺尖部にブラbullaのような気腫性変化がある。上葉に向かう気管支が拡張していて、そこから直接つながっているようにも見える。胸膜直下の陰影があり、スリガラス様陰影が散在している。

 右肺背側に胸水貯留があり、何らかの慢性的な肺疾患があり、そのものの悪化というよりは、そこに感染症が併発したものなのか。両肺野に左右差のない病変で、いったい病態は何なのかわからない。

 肺結核後遺症?、非結核性抗酸菌症?、間質性肺炎?、気管支拡張症?(二次性のようだが)。検査しているうちに、酸素飽和度がさらに下がってきたので、結局呼吸器内科の先生に連絡して、紹介してしまった。

 内科医院では、いったい何と思って診療していたのだろうか。一度は専門医に紹介したのか、あるいは専門医から紹介されて経過をみていたのか。胸部X線を見ただけで、自分で抱える気はしないが。

 

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メイアクトが効いていた

2019年09月09日 | Weblog

 内科医院から腎盂腎炎疑いの75歳女性が紹介されてきた。

 悪寒戦慄がして、その後微熱が続いてた(10日前というが?)。1週間前の9月2日に腹部違和感(正確に覚えていないが、左下腹部?)があって、ふだん高血圧症で通院しているクリニックではなく、胃腸科の先生の医院を受診して、タケキャブが処方された。

 9月7日(土)に熱感を感じて、同医院を受診した。尿混濁があり、膀胱炎症状はないが、抗菌薬内服(メイアクト)が処方された。昨日の8日(日)に38℃の発熱があり、今日また受診した。7日に行った血液検査の結果が、白血球31300・CRP27と著明な上昇を認めた(よく知っている先生で、驚いた顔が目に浮かぶ)。

 当院受診時は、意識清明で体温37.0℃以外はバイタルサインに問題はない。診察しても腹部所見・CVA tendernessはなかった。尿混濁は軽度で、白血球11500・CRP13.3と軽減している。

 当初不明熱としての検索を考えていたが(数か月前に抜歯歴とか)、これは尿路感染症だろうと判断された。メイアクト100mgを内服しても、第3世代経口セフェムの中でもbioavailabilityが20%弱の薬だ。尿路以外の細菌感染症に効く気がしない。

 肺炎はなく、心エコー(経胸壁)でも明らかな疣贅はなかった。尿所見も混濁の程度は軽減していた。一人暮らしということで、軽快していても入院が好ましいと思った。

 画像検査で尿路閉塞の有無をみたが、腹部エコーで左水腎症を認めて、尿管結石があった。閉塞性腎盂腎炎だった。さてどうするか。当院入院で抗菌薬を投与するのもあるが、やはり尿路閉塞の場合は泌尿器科紹介だ。

 地域の基幹病院に連絡すると、地域医療連携室の方から、泌尿器科の外来は今週いっぱいとのことで、直接泌尿器科の先生に相談して下さいという(予約枠をオーバーしているので、直訴して直接予約をもらって下さいということ)。

 泌尿器科医に相談すると、明日の外来に紹介して下さい、と引き受けてくれた。ありがとうございます。外来で尿管ステントを入れて、入院にすると言っていた。今日は外来でセフトリアキソンの点滴静注をした。500mlの点滴もしていたが、時間がかかると家に帰って明日の準備ができなくなると言われて、半分で抜去した。(抗菌薬内服があり、尿培養と血液培養2セットは提出したが、多分出ないだろう)

 経過からは閉塞性尿路感染症で敗血症性ショックになってもおかしくない状況だが、メイアクトで踏みとどまっていた、というところか。尿路感染の場合は経口第3世代セフェムでもいけるものだ。血液中の濃度は低いが、尿路には濃い濃度で入っていくためだろう。

 

 

 

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頭部打撲で出血

2019年09月08日 | Weblog

 昨日の日直の夕方に意識障害の93歳男性が救急搬入された。頭部外傷だった。

 この方は認知症でグループホームに入所している。前回は肺炎で入院していて、頭部の画像からは前頭側頭型認知症ではないかという記載があった。

 朝にベット下に倒れていて、頭が床で下肢をベットに上げた状態でいるのを職員が発見した。頭を打ったのだろう。施設でそのまま経過をみていたが、昼過ぎから意識が低下してきたため、救急要請した。

 救急隊から連絡が入った時は、意識レベルJCS100です、と報告があった。これは急性硬膜下血腫など頭蓋内出血だろうと思った。当院(脳外科はない)ですぐに検査して、搬送する段取りにした。

 救急搬送中に意識が軽快したという。搬入時は薄く開眼して、名前は言えた。生年月日は生年だけ答えたが、これはもともとそのくらいなのかもしれない。見当識も多分ふだんから難しいのだろう。

 バイタルは問題ないので(血圧は160で高め)、すぐに頭部CTを行った。硬膜下に線状に高濃度のところが見える気もするが、はっきりしなかった。頭位を保てるので、点滴・血液検査を行った後に、頭部MRIも行うことにした。

 頭部MRI FLAIRでは、微細な出血も描出できる。右頭頂葉に脳溝に入り込む高信号を認めた。これはくも膜下でいいいのか、硬膜下なのか。外傷による頭蓋内出血であることは間違いないが。

 地域の基幹病院の、今度は外科系の先生に連絡すると、電話の向こうで近くにいる先生と相談する声が聞こえた。脳外科の先生がいらしたらしい。「(受け入れは)いいよ」という声が聞こえてきて、引き受けてもらった。ここがダメだと遠方の病院をさがすことになるので、ありがたい。急性期を診てもらえれば、その後にすぐ退院できない状態の時は、リハビリ目的で引き取らせていただこう。

 

 

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肺か心臓か

2019年09月07日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。午前中は1名だけの受診だったが、午後から受診が増えた。家族の車で受診した81歳女性は冷汗があり、看護師さんが救急室の方に回していた。血圧が90mmHgと低下して、酸素飽和度が70%台だった。

 いそいで酸素5L/分と点滴を開始して、血圧は110程度に、酸素飽和度も98%になった。心電図では有意なST-T変化を認めなかった。

 結膜に貧血を認めて、消化器科で出血性胃潰瘍(露出血管あり)の既往があり、消化管出血を疑った。便の色を訊いたが、鉄剤も処方されているので、ふだんから黒いですという。(後で血液検査の結果、Hb11g/dlでふだんと同じだった)

 この方は大動脈解離(Stanford A)と大動脈弁置換術の治療を大学病院で受けていた。現在は当院の循環器科外来に通院して、ワーファリンの処方をがある。さらに間質性肺炎で大学病院呼吸器内科で治療されていて、昨年7月に当院の呼吸器科外来(外部の先生)に紹介されていた。プレドニンを漸減して、現在は5mg/日だった。

 胸部X線・胸部CTで両側肺野にびまん性に陰影を認めた。間質性肺炎の増悪か。胸膜直下に目立つかというと、そうではない。肺うっ血(急性心不全)なのか。

 前回の呼吸器科の外来は8月20日でそれまで陰性化していたCRPが5.4と異常値になっていて、LDHも軽度だが増加していたが、あまり気にしていないようだ。

 今日は白血球6300・CRP3.5と炎症反応がさらに上昇してはいなかった。BNPが50~160で推移しているが、297と上昇していた。CK 58 ・AST 123・LDH 479と微妙な上昇がある、

 CTの撮影後はてっきり間質性肺炎の増悪と思って、地域の基幹病院に連絡して、搬送させてもらうことになった。その後に画像を見直すと、これは肺うっ血・水腫(急性心不全)?と思えてきた。どっちなのか。

 担当科が呼吸器内科になるか、循環器内科になるか、違ってくる。申し訳ありませんが、ご高診の上、判定よろしてお願い致します。

 

 

 

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血清フェリチン8500

2019年09月06日 | Weblog

 別の内科の先生から相談された。発熱・両側股関節痛の34歳男性が整形外科クリニックから、今日紹介されてきていた。

 8月9日から両側股関節痛があり、約2週間の経過で悪化して、8月26日にクリニックを受診した。X線検査では異常を認めなかった。NSAIDを処方されたが、4日前の9月2日から38℃台の発熱も伴った。肩痛、腰痛、背部痛も生じてきた。

 上気道症状はなく(咽頭痛なし)、胸痛・腹痛はなく、消化器症状・尿路の症状もない。皮疹はなく、経過中に患者さんは皮疹には気づいていない。

 血液検査では、白血球9800(10000は越さなかったが同等だろう)・好中球80%・Hb12.9g/dl・血小板11.0万と、白血球増加はいいが、微妙に血小板減少と貧血がある。AST 66・ALT 66・ALP 497・γ-GTP 304・LDH 2195と肝機能障害を認めて、その中でもLDHの高値が目立ち、肝機能だけではなく、血液由来の可能性が示唆される。

 そして血清フェリチンが8540と著明な上昇を呈している。血清フェリチン>3000ng/mlは、悪性リンパ腫、血球貪食症候群、成人発症Still病だ。

 胸腹部CTでは、単純CTだが特に異常は指摘できない。股関節にもCTで見る限り異常はなかった。

 症状からは成人発症Still病が疑われる。血球貪食症候群を併発し始めているようで気になるところだ。

 どうしましょうか(紹介先)と訊かれたので、いつも紹介している内科そのものがリウマチ膠原病科になっている病院への紹介を勧めた。出身大学との連携もいい病院なので、血球貪食症候群幸いに診療情報提供書を送ったところ、来週月曜日の外来予約がとれたそうだ。

 

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矛盾した患者さん

2019年09月05日 | Weblog

 今日は地域の基幹病院循環器内科から77歳男性が転院してきた。気管切開と経管栄養の経鼻胃管が挿入されていたが、歩行はできるのだった。当然発声はできないが、こちらの言うことはわかるので(?)、さかんに両手のジェスチャーで伝えようとしている。

 診療情報提供書が送られてきた時に、病棟の看護師さんから、「矛盾した患者さんですね」と言われた。通常高齢者で気管切開・経鼻胃管で経管栄養となると、患者さんのADLはベット上安静状態(寝たきり)か、それに準じた状態で、せいぜいベット上で座位保持くらいだ。歩行できる気管切開・経管栄養というのは、確かに矛盾しているといえる。

 

 診療情報提供書に病名はうっ血性心不全・CO2ナルコーシス・誤嚥性肺炎、と記載されていた。画像の添付がなかったので、文章だけで判断するしかない。

 うっ血性心不全で入院して、気管挿管・人工呼吸管理が行われた。軽快して嚥下訓練を開始したところ、誤嚥性肺炎(重症)を来して、再度気管挿管・人工呼吸管理が行われた。短期間で抜管できなかったため、気管切開が行われていた。

 脳神経内科での検査では、嚥下障害をきたす病名は付かなかったそうだ。耳鼻咽喉科で嚥下評価を行って、経口摂取はまだ難しいという判断がされていた。

 心不全の原因は高血圧性とされていたが、ビソプロロール2.5mgが処方されていて、血圧は90mmHg台になっている(先方でも血圧は90台だったらしく明日から休止とした)。一過性心房細動があって、抗凝固薬(DOAC)が処方されていた。

 奥さんの話では、病気で通院はしていなかったが、内科医院で健診は受けていた。その医院を受診した際に、突然よだれを流して、呼吸停止(?)になったという。すぐに救急要請されて、病院に搬入された。

 ということは、まったく健康だった77歳男性が突然、心不全になった?。心不全は利尿薬の継続が必要ないほどに改善したというが、本当だろうか。それまで問題なかった人が、急に嚥下障害、誤嚥性肺炎をきたすものだろうか。20歳ごろに短期間だけ喫煙していて、それ以後はしていないが、CO2ナルコーシスになったのはなぜ?。

 

 画像がなかったので、心電図・頭部CT・胸腹部CTをさっそく行った。心電図では心房細動になっていて、心拍数は正常域にある。βブロッカーを休止すると、頻拍性になってベラパミル(ワソラン)などが必要になるかもしれない。利尿薬なしで継続は厳しいのではないか。

 頭部CTでは脳室拡張が目立ち、前頭葉~側頭葉の萎縮がある。MRIだと複数のラクナ梗塞は描出されそうだ。まったく認知症がない人ではたぶんない。

 胸腹部CTで左下葉に腫瘤があり、肺癌が疑われた。喀痰吸引を頻回に行うので、畜痰細胞診を提出することにした。肺気腫像はなかった。胃は少し横行結腸がかぶさるが、拡張させれば充分内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は可能だろう。

 老年期認知症(軽度くらいか)・嚥下障害、心房細動・心不全、左下葉肺癌疑いとなる。CO2ナルコーシスはよくわからないが、なんとなく全体像はわかった。

 当方の実力を考えると、難しい患者さんだ。できれば下請けは、誤嚥性肺炎治癒後の廃用症候群でリハビリ目的くらいの簡単な患者さんがいい。

 

  

 

  

 

 

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ジェイゾロフト友の会

2019年09月04日 | Weblog

 8月初めに、熱中症疑いの91歳女性が、高血圧緊急症として67歳女性が、それぞれ救急吸搬入されて入院した。

 91歳女性は、高血圧症・心不全で地域の基幹病院循環器内科に通院している。当院の循環器科がなくなった時期に、最後に残っていた先生が、心不全増悪で入院して軽快退院したばかりということもあって、紹介していた。

 ずっと以前からうつ病として、市内の精神科医院にも通院していた。四環系のセチプチリンマレイン酸塩(テシプール)が処方されて、症状軽快して数十年内服していた。最近うつ症状が悪化して、それまでの2錠分2から3錠分3に増量されていた。

 数日点滴したが、食べられない(実際はある程度食べている)・身体がだるいなどの訴えが続いた。熱中症の要素が加わっていた可能性はあるが、うつ病の悪化そのものと判断された。

 四環系だけでは改善しないので(主に鎮静効果)、SSRIを開始することにした。ジェイゾロフト25mgから開始して、訴えは同じだったが、少し表情が良くなってきた(しかめっ面が和らいだ)、声量も少し上がっている。2週間経過して50mgに増量した。年齢的にはここまでだと思う。

 通院している精神科医院は以前は病院で入院も診ていたが、無床化して医院になったので入院はできない。市内には別の精神科病院があるが、相当精神科的な問題がないとなかなか入院させてもらえない。

 もう一人の67歳女性は、頭痛・めまい・嘔気で救急搬入されて、血圧210/120と高値だった。内科医院から、アメジニウムメチル硫酸塩(リズミック)が処方されていた。低血圧と言われていたという。

 ニカルジピン静注を1回だけ使用して、血圧160程度になり、経過観察のため入院にした。リズミックを中止しても血圧は160前後で推移して、むしろ高血圧症だった。

 入院後、嘔気は治まって食事摂取も良好だったが、倦怠感・頭重感・めまいを訴え続けた。そして言い方は「立ちくらみがする」だった。おそらくかかりつけの医院を受診する度に、「立ちくらみがする」と執拗に訴えたことによる処方だったようだ。

 降圧薬はCa拮抗薬(ベニジピン)で開始して、ARB(テルミサルタン)を追加して血圧120程度に落ち着いた。

 表情は暗く、一人暮らしの不安を訴えた。日中寝てばかりいて、トイレ以外は動こうとしない。うつ病としての愁訴と判断された。ジェイゾロフト25mgから開始して、少し起きている時間が長くなってきた。少し表情も以前よりはいい。2週間後に50mgに増量した。

 高齢者の老年期うつ病では、精神科受診を希望しないこともあり、ジェイゾロフトを使用して経過をみている。

 

 SSRIとしては、フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)は最初に処方した数名がいずれも消化器症状の副作用が出たこともあり、使用していない(副作用の消化器症状がSSRIの中で最も高率)。パロキセチン(パキシル)は出始めのころにけっこう使用していたが、現在はずっと使用している1名だけで新規には使用していない(離脱症状が高率)。

 SSRIとしては、サルトラリン(ジェイゾロフト)をもっぱら使用している。副作用としての下痢が問題になるが、精神科医以外の医師にとって使用しやすい薬だ。25mgから開始して、50mgまで増量するがそれ以上にはしない。そこまでで効果がなければ精神科医紹介としている。

 エスシタロプラム(レクサプロ)は最も忍容性が高いそうだが、QTc延長の副作用があり、使用していない。デュロキセチン(サインバルタ)は、癌患者の緩和ケアなど疼痛性障害に対して使用することが多い。20mgで開始して、40mgまでしか増量してことはない。

 ということで、SSRIはジェイゾロフトとサインバルタだけ使用している。

 

 

 

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腸閉塞

2019年09月03日 | Weblog

 昨日内科外来に高血圧症・発作性心房細動・心不全などで通院している88歳男性が腹痛で受診した。前日の昼から症状が続いているが、経過をみていたそうだ。

 この方は前に診ていた内科の若い先生(退職して他の病院に移動)が診ていて、引き継いだ患者さんだった。両下肢の浮腫が完全にはとれず、心不全症状だけとは言い難い。心気的な訴えも多く、抗うつ薬(リフレックス)も処方されていた。認知症もなく、心気症がむしろ長生きにつながっているような方だ。

 腹部は膨満していた。臍部周囲に圧痛があるが、反跳痛・デファンスはない。若いころの虫垂炎手術の既往があった。嘔気・嘔吐はなかったが、腹痛が出現してから排ガス・排便はない。

 腹部造影CTは腎機能を確認してからとして、まず腹部単純X線で確認した。小腸ガスが描出されて、ニボー(鏡面像)形成がある。腎機能は軽度の障害があるが、造影はできるくらいだった。

 CTでは小腸が広範に拡張して消化液貯留を認める。既往からは虫垂手術の回盲部付近での癒着性腸閉塞だが、むしろ胃背側で小腸が引き伸ばされているようにも見える。腸管壁は造影されていて明らかな虚血はないようだが、腹水貯留がある。

 腸閉塞として外科医に診てもらった。保存的か手術かと言っていたが、イレウスチューブで1日経過をみることになった。今朝は外科医から、改善しないので、今日手術すると言われた。内ヘルニアになっているのではという。

 高齢ではあるが、きっと乗り切って良くなると思う。以前から抗凝固薬(エリキュース)を内服しているが、昨日は食事摂取できないので、朝から飲んでいないかった。夕方なら手術できると思ったが、外科医としてはいやだろう。腹部所見が軽度で、腸管壁の造影不良域がないこともあるが、1日経過をみたのは抗凝固薬のこともあるのかもしれない。

 昨日の心電図は洞調律だったが(抗凝固薬も内服していた)、腹部所見が軽いことから、上腸間膜動脈閉塞症も気になっていた。心房細動があると何かと面倒だ。

 

 

 

 

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バセドウ病

2019年09月02日 | Weblog

 今日は内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が不在だったので、代わりにバセドウ病の治療が始まったばかりの23歳女性を診察した。

 8月14日に発熱(38.4℃)と咽頭痛で内科外来を受診(初診)していた。鼻汁・咳はなく、扁桃は発赤・白苔付着を認めていた。前頸部リンパ節腫脹もあった。姪が溶連菌に感染していたという。溶連菌迅速試験陽性で、白血球20200・CRP6.0と結構な上昇を認めた。抗菌薬内服で治療開始していた(AMPCを10日間)。

 診察時に、びまん性甲状腺腫を認めて、合わせて検査した甲状腺機能が著明に亢進していた。TSH <0.01μIU/ml・FT3 10.42pg/ml・FT4 4.16ng/dl。バセドウ病・橋本病の外注検査を提出した。

 5日後に、TSH受容体抗体(TRAb)は陰性で、Thyroid stimulating antibody(TSAb)は陽性と出た。

 TRAbの測定法には、TSH binding inhibitory immunoglobulin(TBII)Thyroid stimulating antibody(TSAb)の2種類があり、一般にTRAbというのはTBIIを指しているそうだ。つまり、TRAbにはTBII(TRAbと表示される)とTSAbがあるということだが、紛らわしい。

 鑑別に上がる無痛性甲状腺炎でもまれに、TRAb陽性となることがあるが、甲状腺機能亢進症状が半年前からある、またはバセドウ眼症が認められれば、バセドウ病になる。

 この患者さんは動悸・体重減少が数か月前から(1年以上?)あり、眼が大きいというよりは眼球突出といいたくなる顔貌をしている。バセドウ病で間違いないだろう。甲状腺エコーはびまん性甲状腺腫大を認めて、甲状腺内部エコーはやや低エコーで血流が豊富だった。

 若い先生は、甲状腺外来を担当している外科医に相談して、治療はメルカゾール(MMI)15mg/日とヨウ化カリウム丸1錠で開始した。今日は、TSH <0.01μIU/ml(0.35~4.94)・FT3 5.15pg/ml・FT4 2.80ng/dl(0.70~1.48)だった。自覚症状は軽減しているそうだ。今のところ治療の副作用はない。

 FT4 5.0ng/dl以下ではメルカゾール15mg/日で開始してもいいようだ。メルカゾール15mg/日+ヨウ化カリウム丸1錠はメルカゾール30mg/日に匹敵する。

 FT4が基準値内になれば、メルカゾールを1錠ずつ減量して、TSHが基準値内で1.0μIU/ml以上になるよう調整していく。今日は同じ処方を出して、2週間後に再度受診・再検査とした。

 事情があって若い先生(今年は2名いて、そのうちの1名)は今月いないので、その間は当方の外来で診ていくことにした。バセドウ病を診断して最初から治療するのは案外少ない。今外来通院している患者さんで診断から診ているのは1名しかいない(維持量を継続している患者さんは少しいる)。

 

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個人情報保護

2019年09月01日 | Weblog

 先週の月曜日の夕方に「個人情報の管理」についての講演会が院内であった。講師は病院で契約している法律事務所の弁護士さんだった。

 個人情報保護法(正確には、個人情報の保護に関する法律)は、「個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務を定めて、個人の権利利益を保護するもの」で、要するに業務で得られた個人情報を利用したり、他人に漏らしてはいけないということ。

 逆にいうと、個人には「自己情報コントロール権」があり、自分についての情報のどこを公表して、どこを公表しないかを決める権利がある。

 個人情報とは、1)特定個人識別性(+容易照会性)ある情報、つまり氏名・生年月日・住所など個人が識別(特定)される情報すべて、2)個人識別符号を含む情報、つまりマイナンバー・免許書番号・年金番号など(DNA情報も含まれる)。

 「個人情報取り扱い事業者」として、当初は対象者5000人以下の事業所には適応されなかったが、その後はすべても事業所に適応されるようになった。個人・法人、営利・非営利、公営・私営を問わない。

 個人情報保護法は、国の機関・地方公共団体・独立行政法人等は除かれていて、これらは独自に定めた条例により規律される、となっている。つまり、それぞれ独自に「個人情報保護条例」を定めている。

 当院は公立で、特別地方公共団体(地方公共団体の組合)に相当して、複数の自治体が運営しているので、実は独自の条例を定めていない。各地方公共団体は、個人情報保護法をほぼコピーして作成しているので、当院もそれを作成したほうがいいという。

 個人情報の第三者提供の制限として、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人情報を第三者に提供してはならない。これには除外事由があり、その中に、「人の生命、身体又は財産の保護にために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」、がある。救急搬入されて、患者さん本人に既往歴・現病歴を訊けない状況では、(患者さんの同意なしで)家族・親族などに訊くことはこれに当る。警察の捜査も「法令に基づく場合」として同意なしでできる。

 個人情報を故意に悪用することもあるが、大抵は悪気がなく内輪の話としてしていたことが外部の人に漏れて、そこから拡散して問題になることがほとんどだという。

 ベネッセで相当数の個人情報を漏らしてしまったことがあったが、さっそくその個人情報が営業などで使われていたという。

 当院である先生が体調不良で入院した際に、数十人の職員が一斉にその先生の電子カルテを開いて見ていたことが判明した。電子カルテなので、誰がいつカルテを開いたかはすぐにわかってしまう。良く言えば、みんなが心配するような愛される先生ともいえるが、個人情報保護の面ではまずいことになる。

 当院で以前にドラマの撮影が行われたが(病室などを貸した)、その時に主演の女優さんが気管支炎症状で外来を受診したのでカルテができた。本名を芸名にしている方だったので、・・・。

 

 今日は姫路城を見て、帰路についた。来年は和歌山県の熊野に行ってみることにした。

 

 

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