なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

直腸癌

2023年12月21日 | 消化器疾患

 12月19日(火)の午前中は救急当番だった。発熱外来も兼ねていて、最初に受診した患者さんがコロナの迅速検査陽性だった。最近はもっぱらインフルエンザばかりだったので、ちょっと驚いた。

 午前11時ごろに隣の市の救急隊から搬入依頼がきた。12月17日(日)にも下痢で当院に救急搬入されている69歳男性という。ちょっと待って下さい、と電子カルテで確認すると、確かに受診していた。

 2週間前から下痢が続いて、嘔気もあって食欲がないという。日当直は外部の先生だった。腹部CTでは異常なしとしていた。血液検査で炎症反応は陰性で、電解質や腎機能の異常もなかった。症状が続くなら入院してはと勧められたが、経済的理由で外来点滴だけで帰宅していた。

 自称”下痢”は違うことがあるので、救急隊に訊いてもらったが、とにかく頻回でひどいとだけ患者さんが言っているそうだ。(搬入後にわかったが、ぶっきらぼうな対応の患者さん)バイタルは問題ないので、来てから考えることにした。

 

 発熱もなく、バイタルを確認しても血圧が高め(160)以外は問題なかった。普通に会話もできるが、下痢が続くとしか言わない。(高血圧症でクリニックに通院しているが、薬が切れていた)

 本当に水様便なのか確認するために直腸指診をすると、直腸下部に全周性の腫瘤が触れた。出血も付着してくる。直腸癌だだった。

 下痢ではなく、むしろ便秘で便が出にくかったのではと訊くと、半年前からそうだという。排便時に出血があったほずだがと訊くと、うなずいた。

 直腸癌で直腸が狭窄して、わずかに残った内腔の隙間から液状で血性の便が少量ずつ断続的に出ている、というのが正確な症状だった。

 腎機能を確認して、胸腹部造影CTを行った。直腸下部の腫瘤=癌が描出された。明らかな肺転移・肝転移はないようだ。(右股関節置換術をしていて、直腸の高さで読影しずらいが、その目でみれば17日の単純CTでも腫瘤は疑える)

 明らかな腸閉塞ではないが、一番狭窄した部位を見ると、そのうち詰まりそうだ。当院は現在外科手術ができないので(常勤外科医不在)、搬送するしかない。

 地域の基幹病院は先週病棟逼迫の案内が来ていて、受け入れは厳しいかもしれないという心配があった。先方の地域医療連携室に連絡して消化器内科の先生につないでもらと、幸いに受けてもらえた。「直腸のステントは・・・」、と独り言が聞こえてきた。

 

 その日の朝に、前日の当直だった整形外科医から、当方担当の老衰の90歳代の男性が亡くなりましたと報告があった。繰り返す誤嚥性肺炎とせん妄があり、家族がもう高カロリー輸液などは希望しません、といわれていた。

 亡くなったのは午後11時過ぎで、深夜帯でないのがまだ当直医としてはよかったか。しかし救急外来の方が、午前0時過ぎと、午前2時過ぎ、午前6時過ぎの受診があり大変だったようだ。

 その日の午前10時過ぎには担当していた食道癌・多発性肝転移の80歳代男性が亡くなって、病棟で看取った。その日はCOVID-19肺炎でみていた80歳代女性も軽快退院したので、入院が一気に3名減ってしまった。

 

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COVID-19肺炎

2023年12月20日 | COVID-19

 11月20日にCOVID-19の87歳女性が入院した。入所していた施設でCOVID-19のクラスターが発生した。2日前の11月18日から発熱があり、施設の嘱託医が抗原迅速試験で診断していた。38.5℃以上の発熱が続き、食事摂取もできなくなっていた。

 胸部CTで両側肺にすりガラス陰影が広がっていた。最近では珍しい。白血球7200・CRP6.4と炎症反応があまり上昇していないのが、ウイルス性らしかった。

 レムデシビル点滴静注で治療を開始したが、発熱が続き、酸素飽和度の若干低下してきた。入院したのは発熱してから3日目になるが、肺陰影からはもっと日数が経過しているのかもしれない。レムデシビルと併用でステロイドを使用することにした。

 ステロイド投与して(デキサメサゾン6mg/日だが、デキサート注6.6mgを使用)、解熱して酸素飽和度低下も改善した。酸素吸入も中止して、デキサメサゾンは4mgから2mgと漸減していった。

 末梢静脈からの点滴が困難になったが、幸い解熱後は食事摂取できたのでステロイドも経口投与にできた。

 隔離解除となってから、胸部CTで肺陰影を確認すると、予想よりかなり残っていた。

 ステロイドを中止せず、プレドニンに切り替えて漸減することにした。プレドニン10mg/日を継続して、その後5mg/日に漸減した。

 患者さんはすっかり元気になっていた。食事摂取してただ横臥しているだけになった。リハビリを入れたが、いやがってできなかった。

 12月14日に胸部CTをまた行った。また予想よりも肺陰影は残っていた。

 呼吸器外来にきてもらっている先生に相談していたが、もうステロイドはやめましょうということになった。(大学病院から来ている呼吸器専門医、感染症専門医)退院して施設に戻ってもらい、1か月後に外来でフォローすることになった。

 高齢者で陰影の吸収が遅いということなのか。

 

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嘔吐は消失した

2023年12月19日 | 認知症

 12月14日に、11月30日に記載した79歳女性の夫が来院した。患者さんは2022年6月から精神科病院に入院している(その前は施設入所)。70歳ごろからの認知症だった。

 嘔吐が続いて、当院に転院してきた。消化管に問題(上行結腸、S状結腸の浮腫性狭窄)はあった。病態ははっきりしないが、経鼻胃管での吸引を継続すると、吸引量はわずかになって軽快した。

 ガストログラフィンで造影ずると問題なく、直腸まできれいに造影された。胃管を抜去したが、その後嘔吐はなかった。(大腸内視鏡はしなかった)

 精神科病院にいる時から、口を開けようとしないということもあるが、飲み込みが悪くなっていた。たまった唾液でムセたりしている。経口摂取は断念した。

 とりあえず、末梢静脈からの点滴で2週間も経過してしまっていた。高カロリー輸液に切り替えることにした。(頸部が展開できず、やむなく大腿静脈(オムツで隠れる部位のやや遠位)からCVカテーテルを挿入した。(はい、穿刺部位としては好ましくありません)

 夫は県庁所在地在住だが、元々は合併吸収された町の住所なので、外れの方になる。幸い近くに認知症対応の老人病院がある。

 当地にはまったく土地感がないが、何度か車で来たのですこし慣れたようだ。それでも近くはない。上記病院への転院を希望された。(老人病院は勝負が速い?といわれているが、それは言わない)

 この夫婦には子供がいない。夫はかなり元気な方で、妻より3歳下だというから76歳になる。まだまだ運転免許書を返納するつもりはないという。(十分審査に通るだろう)

 子供がいないので、二番目の連絡先は患者さんの姉(すでに死亡)の夫(義理の兄)になっていた。高齢でもあるし、自分が妻より先に亡くなったらどのくらい関わってくれるかわからないという。間違いなく奥さんが先ですとはいえないので、長生きする必要がありますね、とだけ伝えた。

 ちなみに紹介を考えている病院には、以前当院の外科に勤務していた中堅の先生がいる。当院から別の病院の外科に移動になり、その後は外科医をやめてしまったようだ。外来はほぼない病院だが、入院患者30名以上(~40名)の担当になるはずだ。

 

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CareNeTV GLP-1受容体作動薬

2023年12月18日 | CVC

 もっぱらデュラグルチドを使用していた。セマグルチドはほとんど使用していないが、今後は使用例を増やしたい。

 

プライマリ・ケアの疑問
Dr.前野のスペシャリストにQ
糖尿病アップデート編 岩岡秀明先生

第4回 GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬
▸注射薬
・1~2回/日、皮下注
・1回/週、注射薬
血糖降下作用はDPP4阻害薬よりも強い(HbA1c1.5~2.0%)
体重減少作用
・副作用
  ごくまれに急性膵炎
  胆石症胆嚢炎胆管炎には注意

GLP-1受容体作動薬の分類
▸ヒトGLP-1由来製剤
心血管イベントを有意に抑制するエビデンスがある
デュラグルチド(トルリシティ)1回/週
リラグルチド(ビクトーザ)1回/日
セマグルチド(オゼンピック)1回/週
▸Exendin-4(トカゲの毒)由来製剤
心血管イベントを抑制するエビデンスがない→使用されない
・エキセナチド(バイエッタ)
・リキシセナチド(リスキミア)

▸ヒトGLP-1由来製剤
心血管イベントを有意に抑制するエビデンスがある
・リラグルチド(ビクトーザ)1回/日
→LEADER試験(2016)n=9340
・セマグルチド(オゼンピック)1回/週
→SUSTAIN-6試験(2016)n=3297
・デュラグルチド(トルリシティ)1回/週
→REWIND試験(2019)n=9901

セマグルチド週1回皮下注の投与量
開始用量0.25mg4週間→維持用量0.5㎎4週間以上→治療の強化0.5㎎または1.0mg個々の状態に合わせて
消化器症状が出現する場合は増量しない(悪心・嘔吐、腹痛、下痢)

注射を忘れた場合
▸次の注射予定日まで48時間以上の場合
・気づいた時点ですぐに忘れた分を打つ
・その後はあらかじめ決められた指に注射する
▸次の注射予定日まで48時間未満の場合
・忘れた分は打たずに、次の投与予定日に1回分を打つ
▸倍の量を投与するなどは行わない

経口セマグリチド(リベルサス)
 MACEは非常劣性心血管死・総死亡は約50%減少
 PIONEER6試験 n=3138
  ※MACE:心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中
 経口セマグルチドに含まれる吸収促進剤(SNAC)
  胃液中の蛋白質分解酵素活性を抑制し胃粘膜でのセマグルチド吸収を促進する
 使用方法
  開始量量
   1日1回3mgから開始
  維持用量
   4週間以上投与した後、1日1回7㎎に増量
  治療の強化
   1日1回7㎎を4週間以上投与しても効果不十分な場合には1日1回14㎎に増量することができる
 注意点
  1日の最初の食事・飲水前空腹の状態で
  120ml以下の水とともに服用
  服用後少なくとも30分は飲食・ほかの薬剤の経口摂取を避ける
 経口セマグリチド
  2型糖尿病であれば腎機能障害、肝機能障害、65歳以上であっても使用できる

注射薬の使い分け
▸基本的に心血管イベントを抑制するエビデンスがある
 →週1回製剤を選択する
若年~中年までの肥満型患者
 →注射セマグルチド(血糖降下作用と体重減少作用が強い)
高齢で肥満がない患者
 →注射デュラグルチド(血糖降下作用は中等度で体重をほとんど減らさない)
減量が必要な肥満の患者で、かつ注射薬の導入が難しい場合                               経口セマグルチド
 ※服用方法を遵守できる患者に限る

肥満症治療薬としてのセマグリチド(ウゴービ)
・2023年1月承認、11月薬価収載
・2型糖尿病治療薬のオゼンピックと同じ成分
・最大量2.4mg(オゼンピックの2倍以上)
※米国では2021年6月に承認
 STEP6試験
 ▸対象
  日本人を中心とした東アジアの肥満症患者401例(年齢51歳、体重87.5kg、BMI31.9kg/㎡)
 ▸結果
  68週時のプレセボ群の体重減少は2.1%
 セマグルチド2.4mg/週の投与群は13.2%
 高度肥満への治療効果が期待できるが、まだ専門医が注意して使用する段階

チルゼパチド
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(マンジャロ)
 GLP-1、GIP同時に作用する週1回皮下注
 SURPASS試験
  メトホルミンに追加した際のチルゼパチドによる血糖降下および体重減少
 ▸対象
  メトホルミン単剤療法(1500mg/日以上)で効果不十分な2型糖尿病患者1878例(年齢56.6歳、HbA1c8.28%、体重93.7kg、BMI34.2kg/㎡)
 投与40週時
  HbA1c2.30%低下
  体重11.2Kg減少
  専門医が使う薬

 

Dr.前野のここがポイント
GLP-1受容体作動薬の使い方

心血管イベントを有意に抑制するGLP-1受容体作動薬
セマグルチド
 →肥満のある若年~中年
デュラグルチド
 →肥満がない高齢者

経口セマグリチド
・減量が必要な肥満患者で注射薬の導入が難しい場合に使用する
・飲み方には注意が必要

持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは現時点ではまだプライマリケアで使う薬ではない

 

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アルコール性肝硬変

2023年12月17日 | 消化器疾患

 12月14日当直の内科の先生が翌日午前3時過ぎに、当方の患者さんに続いて消化器科の74歳女性の死亡確認をしていた。アルコール性肝硬変・肝性脳症だった、 

 電子カルテで確認すると、2022年10月に同様の食べられない・動けないで入院した際は当方が担当していた。当初、名前と病名を見ても思い出せなかった。入院サマリーを見ても、病気のことだけしか記載していないので、どんな患者さんだったかわらかない。

 何か書いていたような気がして当ブログを確認すると、2022年10月18日と10月23日にこの患者さんのことを記載していた。あの患者だったと思い出した。最初に外来で診た時に、付き添ってきた夫に飲酒の事情を訊いたのも覚えていた。

 

 今回は、9月28日からの入院だが、退院の当てがなくずっと入院継続となっていた。11月半ば過ぎに病棟の患者さんと病棟看護師さん数名がCOVID-19に罹患した(きっかけは職員持ち込み)。その時、4人部屋に2名入院していた消化器科で診ている患者さんがCOVID-19に罹患した。そのうちのひとりだった。

 発熱は2日で治まり、COVID-19罹患による原疾患の悪化は認めなかった。その後も入院継続となっていたが、数日前から誤嚥性肺炎となり、抗菌薬が投与されていた。肺炎自体によってというより、それをきっかけにして全身状態が持たなかったということらしい。

 

 この方は市会議員の娘さんで、それなりにいい職場に就職した(公共放送局の支部)。結婚を機に退職したが、出産後に離婚した。親族から引き継いだスナックを経営することになり、仕事柄飲酒量が増えていった。

 再婚した夫は誠実な方だったが、本人はアルコールはやめられず、アルコール性肝硬変・肝性脳症となった。アルコール依存の治療のために精神科病院を受診していたあたりは、本人の止めたいという気持ちがあったのか、夫の熱意だったのか。

 

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続けて二人の死亡確認

2023年12月16日 | 呼吸器疾患

 12月14日(木)は別の内科の先生が当直だった。翌日の午前3時に当方が診ていた肺癌(術後再発)の68歳女性が亡くなって、看取ってくれていた。

 その5分後に消化器科で診ていたアルコール性肝硬変・肝性脳症の74歳女性が亡くなって、それも看取るということになった。(いずれもDNAR)

 朝にお疲れさまでしたと声をかけたが、消化器科の患者さんもというと、珍しいですねと言っていた。午前3時頃に病棟から死亡確認の依頼が来て、やれやれと思って病棟に行くと、別の病棟からも死亡確認の依頼が入ったという経緯になる。

 

 以前、当方が診ていた癌終末期の患者さん3名が一晩のうちに次々に亡くなって、当直だった整形外科の若い先生が呼ばれたということがあった。(いずれもDNAR)さすがに3人目の時は、またですかと怒っていたそうだ。

 漫画の少年誌を毎週購入している先生だったので、お詫びに図書券を差し上げた。

 

 当方の患者さんは、11月17日に記載している肺癌の68歳女性だった。6年前に肺癌の手術を大学病院で受けて、その後脳転移(右小脳)の手術も受けていた。癌化学療法などを継続していたが、緩和ケアのみとなって当院に紹介されていた。

 癌性リンパ管症でステロイドの効果は乏しく、器質化肺炎のような反応はみられなかった。それでも一気に悪化することはなかったので、多少は効いたのかもしれない(腫瘍細胞のアポトーシス誘導?)。

 

 この患者さんは東南アジア出身で、詳しくはわからないが、自国で結婚して息子が2人いた。その後日本に来て、大分年上の今の夫と再婚している。

 息子の一人は日本にいて、結婚してその奥さんの出産予定日が11月末だった。孫に会わせたいという家族の希望があった。幸い予定日が大きくずれずに出産した。新生児なのですぐに外出というわけにいかなかったが、先週末には病院に連れて来て、いっしょに写真をとった。

 そしてもう一人の息子は母国にいて、日本に来て面会したいと希望していた。母親の診断書があればビザが降りるというので、診断書を記載して夫に渡していた。(内容は癌終末期で、予後がごく短いというもの。英語での記載を要するかと思ったが、日本語の診断書でいいそうだ。)

 ぎりぎり間に合って面会に来たが、呼吸困難感が強く鎮静薬を使用した後になってしまっていた。 

 (続く)

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肺膿瘍

2023年12月15日 | 呼吸器疾患

 11月26日(日)の日直の時に、施設入所中の32歳男性が職員に連れてこられた。精神遅滞と四肢の拘縮があり、ベット上では自分で動くことができるが歩行はできない。

 11月22日から発熱があったが、呼吸器症状はなかった。内科医院を受診して、アセトアミノフェンが処方された。発熱が続いて同院を11月24ひに受診した。炎症反応の上昇があり、抗菌薬(レボフロキサシン)内服も処方された。

 それでも発熱が続いての救急外来受診だった。症状が長引いていて、炎症反応からは細菌感染症が疑われる。胸部X線を撮る方が難しいので、最初から胸腹部CTにした。

 右中葉に浸潤影があり、急性肺炎だった。ただ、陰影の濃さが気になった。日数はそれほど経過していないが、膿瘍の可能性を考えた。レボフロキサシンが効いていないのも気になったが、投与日数の問題かもしれない。

 体格は良いいが、末梢静脈が見えにくい。喀痰培養はとれず、血液培養もあきらめた。ふだん明らかなムセはないそうだ。家族は遠方で来院はしないという。

 入院でスルバシリン(ABPC/SBT)を開始した。3日目から解熱して、炎症反応も軽減した。炎症反応は増加しているが、白血球数11000・CRP3.9と所見の割に上がっていない印象があった。

 少し長めの10日間投与とした。点滴が何度か抜けてしまって指し直しを要した。自己抜去というより、ベット上で動いてしまい、何故かうつ伏せスタイル(両膝は曲げて拝むような恰好が好みらしい)になっている。

 体格が良く、看護師さんが仰向けにしようとしても頑として動かない。ポータブルX線撮影に来た技師さんもいったん帰って、仰向けになるのを待つしかなかった。末梢静脈からの点滴が難しく、看護師さんからはもうできません、といわれた。

 解熱後は平熱が続き、炎症反応も軽快して(0.6)退院とした。ところが、施設で迎えに来る日に微熱があった。

 気になったので、胸部CTで確認すると、浸潤影は縮小しているが、内部に液体とエアーを認める。大きくはないが、膿瘍化しているようだ。

 抗菌薬内服(AMPC/CVA+AMPC=オグサワ)で経過をみることにした。退院後の夕方に施設から発熱38℃という報告があったが、抗菌薬の効果はすぐには評価できないので、そのまま経過をみてもらうことにした。

 その後は37℃台になり、平熱になったので、予約していた1週間後に外来に受診した。血液検査ではCRP0.0となっていたが、そもそもこの患者さんはあまり炎症反応上がらない体質らしい。

 胸部X線正面では陰影は大分薄くなっていたが、側面で見るとまだ残っている。

 抗菌薬をあと10日間継続して、外来を再受診とした。

 

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悪性リンパ腫の疑い

2023年12月14日 | 血液疾患

 12月13日(水)に別の内科の先生が、患者さんの家族に電話していた。悪性リンパ腫が疑われる、という。

 患者さんは79歳男性で、市内の内科クリニックからの紹介だった。診療情報提供書によると、ふだんは高血圧症・僧帽弁閉鎖不全症などで通院している。11月29日に微熱・頭重感で受診していた。

 コロナとインフルエンザの迅速検査は陰性だった。アセトアミノフェンなどで経過をみていた。12月4日に症状が続くので再受診している。またコロナとインフルエンザの迅速検査を行って、陰性だった(呼吸器症状はない)。

 胸部X線で肺炎は認めず、腹部エコーでも有意な異常はないが、白血球11200・CRP24と炎症反応の上昇があった。12月8日に38℃台の発熱となり、当院の新患に紹介となった。

 胸部CTで肺炎像はなかった(左胸水がごく軽度にあるだけ)。炎症反応は同程度で、肝機能障害を認めた。点滴と抗菌薬(レボフロキサシン注)で治療が開始されると、解熱して炎症反応も軽減していた(CRP25.3から15.7)。(抗菌薬の反応した理由は不明)

 検査結果では血清フェリチン2801が目立つが、可溶性IL2受容体は提出していなかった。胸腹部造影CTが行われて、放射線科の読影レポートでは、肝脾腫と腹部大動脈周囲のリンパ節腫大があり、診断は悪性リンパ種となっていた。

 

 表在リンパ節腫大や胸腔内リンパ節腫大はなかった。生検は簡単にはできない。週末退院にして、がんセンター血液内科の外来に紹介したい、という話を家族にしていたのだった。

 

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スタットコール

2023年12月13日 | 無題

 12月11日(月)に昼前に、全館放送で「スタットコール」がアナウンスされた。回復期リハビリ病棟だった。

 主治医は整形外科医だが、中堅の一番仕事ができる年齢の先生だ。さらに若い先生方も駆けつけてくれる。別の病棟で処置していたが、すぐに駆け付けた看護師さんが、人がいっぱいで近づけなかったと戻ってきた。

 

 夕方に確認すると、患者さんは94歳女性で左大腿骨転子部骨折の術後だった。そもそもこの年齢でよく手術をされるものだ。11月半ばに受傷(転倒)して、すぐに手術が行われた。

 術後は回復期リハビリ病棟に移ってリハビリをしていた。ベットサイドではなく、リハビリ室に車椅子で行って行っていた。調子が悪いと訴えたために、途中で中止して病室に戻していた。

 胸痛や呼吸困難の訴えはなかった。血圧が90台といつもの110~120より低かったが、それ以外のバイタルは問題なかった。主治医に連絡がいって、点滴が開始された。

 点滴を初めてすぐに心肺停止になり、そこで「スタットコール」となった。心肺蘇生術が行われたが反応はなく、家族がすぐには来れないので、主治医が電話で事情を説明した。一定の時間行った後に、死亡確認がなされた。

 頭部CTでは異常はなかった。胸腹部CTでは両側肺に肺うっ血~浮腫・胸水を認めたが、心臓大血管に異常はなかった。冠動脈の石灰化が血管の走行が分かるくらいに目立つ。

 蘇生術後なので、急性心筋梗塞による急性心不全なのか、処置の影響なのか確定はしがたい。心疾患による急変と判断された。超高齢ということもあり、家族はそれで了解されたようだ。

 

 スタットコールstat call(statは、ラテン語のstatim即座から)で、院内で患者さんが急変(心肺停止など)した時に使用される。

コードブルー」も使用される(ドラマの題名になった)。いろいろなコードがあるが、ブルーは患者さんの顔色(顔面蒼白、チアノーゼ)から来ている?。

 コードは他に、コードホワイト(暴力)、コードブラック(テロ)、コードブラウン(自然災害)、コードピンク(誘拐)などがあるそうだ。

 何か月か前に、「コードホワイト」が出されたが、皆さんどういう意味か分からない、といっていた。(会計窓口での暴言だった)

 

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多発性脳梗塞

2023年12月12日 | 脳神経疾患

 12月9日(土)の日中に右半身の不全麻痺で89歳女性が救急外来を受診した。前日からの症状なので、日直の内科医が頭部CTを行うと右後頭葉に梗塞巣が描出された。症状とは合わない。

 頭部MRIで確認すると、両側の小脳と左右の大脳にも多発性脳梗塞を認めた。同時期に発症しているので、心房細動からの心原性脳塞栓症が疑われた。(MRAは年齢の割に動脈硬化が目立たず、きれいだった)

 心電図は正常洞調律だったが、市内の内科クリニックからDOAC(エドキサバン=リクシアナ15mg)が処方されていた。発作性心房細動で治療していたのかもしれない。

 発語はあり、簡単な会話が成り立ったり、成り立たなかったりだった。嚥下評価では飲み込みはできそうということで、嚥下調整食3から開始となった(評価と訓練を兼ねて昼のみから)。

 軽度の腎機能障害があるが、年齢も考慮して管理の面倒なワルファリンよりはということでのエドキサバン15mgだろうか。気持ちはわかるのだった。

 

 この患者さんはCTで肝臓内の多発性腫瘤もあった。トルソー症候群の要素もあるか。

 

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