12月19日(火)の午前中は救急当番だった。発熱外来も兼ねていて、最初に受診した患者さんがコロナの迅速検査陽性だった。最近はもっぱらインフルエンザばかりだったので、ちょっと驚いた。
午前11時ごろに隣の市の救急隊から搬入依頼がきた。12月17日(日)にも下痢で当院に救急搬入されている69歳男性という。ちょっと待って下さい、と電子カルテで確認すると、確かに受診していた。
2週間前から下痢が続いて、嘔気もあって食欲がないという。日当直は外部の先生だった。腹部CTでは異常なしとしていた。血液検査で炎症反応は陰性で、電解質や腎機能の異常もなかった。症状が続くなら入院してはと勧められたが、経済的理由で外来点滴だけで帰宅していた。
自称”下痢”は違うことがあるので、救急隊に訊いてもらったが、とにかく頻回でひどいとだけ患者さんが言っているそうだ。(搬入後にわかったが、ぶっきらぼうな対応の患者さん)バイタルは問題ないので、来てから考えることにした。
発熱もなく、バイタルを確認しても血圧が高め(160)以外は問題なかった。普通に会話もできるが、下痢が続くとしか言わない。(高血圧症でクリニックに通院しているが、薬が切れていた)
本当に水様便なのか確認するために直腸指診をすると、直腸下部に全周性の腫瘤が触れた。出血も付着してくる。直腸癌だだった。
下痢ではなく、むしろ便秘で便が出にくかったのではと訊くと、半年前からそうだという。排便時に出血があったほずだがと訊くと、うなずいた。
直腸癌で直腸が狭窄して、わずかに残った内腔の隙間から液状で血性の便が少量ずつ断続的に出ている、というのが正確な症状だった。
腎機能を確認して、胸腹部造影CTを行った。直腸下部の腫瘤=癌が描出された。明らかな肺転移・肝転移はないようだ。(右股関節置換術をしていて、直腸の高さで読影しずらいが、その目でみれば17日の単純CTでも腫瘤は疑える)
明らかな腸閉塞ではないが、一番狭窄した部位を見ると、そのうち詰まりそうだ。当院は現在外科手術ができないので(常勤外科医不在)、搬送するしかない。
地域の基幹病院は先週病棟逼迫の案内が来ていて、受け入れは厳しいかもしれないという心配があった。先方の地域医療連携室に連絡して消化器内科の先生につないでもらと、幸いに受けてもらえた。「直腸のステントは・・・」、と独り言が聞こえてきた。
その日の朝に、前日の当直だった整形外科医から、当方担当の老衰の90歳代の男性が亡くなりましたと報告があった。繰り返す誤嚥性肺炎とせん妄があり、家族がもう高カロリー輸液などは希望しません、といわれていた。
亡くなったのは午後11時過ぎで、深夜帯でないのがまだ当直医としてはよかったか。しかし救急外来の方が、午前0時過ぎと、午前2時過ぎ、午前6時過ぎの受診があり大変だったようだ。
その日の午前10時過ぎには担当していた食道癌・多発性肝転移の80歳代男性が亡くなって、病棟で看取った。その日はCOVID-19肺炎でみていた80歳代女性も軽快退院したので、入院が一気に3名減ってしまった。