里芋

老母81歳、この頃、背が曲がってきた。

もともと背筋は伸びた人だったので心配していなかったのだが、
股関節の手術以来、左右の脚の長さに差が出てしまったようで、
そのために腰が曲がり、背が曲がった。

すると、自分の周りの何もかもが高くなる。
水道の蛇口をひねるのも、鍋の中を見るのも、包丁を使うのも、
身の高さが足りない。

料理がつらくなってしまった。

一日に一食、宅配の弁当を頼んでいる。
電子レンジを買ったが、まだ好きになれず、使っていない。

私が調理をすると、「食事は音よね、料理する音が楽しみのひとつね」
と言って喜ぶ。

※

近所の幼馴染Ｍの母君、Ｍ子は、自宅の隣の土地を買って畑を作っている。
近くの神社に頼んで落ち葉を譲ってもらい、毎日運んで土に埋め、
堆肥を作った。

そこでイモを育てるので、立派にできる。

昨日も初物の里芋をいただいた。
これを見て、母が、煮る、と言い出した。
洗って皮を剥くところまでやろうか、と言ってみると、
「なんの、皮を剥かなくて里芋を煮たと言えようか」と言い放った。

久しぶりに台所に立ち、煮炊きをした。

うまかった。
Ｍ子と青渭神社に足を向けては寝られない。