自分の部屋に暖房が無い。
明るい部屋が良いと、南面は大きなガラス戸にしている。
これが寒い。
アルミサッシとは言え、30年くらい前のものだ。
それに、その上は細く木枠の薄いガラスになっている。
築40年の家は寒い。
そのくせ、部屋に暖房が無い。
片付けが苦手なのと、紙類が身の周りに多いため、
火元を部屋に置くとあぶなっかしいのだ。
そうは言っても現代ならあれこれ暖房はありそうだが、置かない。 . . . 本文を読む
子どもの頃、家では見せてもらえなかった。
けれど、何度か見た記憶はある。
エンヤーコーラヤもオイーッスもひげダンスもカラスの勝手でしょも
ちょっとだけよも早口言葉もいっちょめいっちょめワーオも知っている。
親に隠れてコッソリ見たのだろうか。
そこまでは憶えていない。
家族で楽しく見たわけではないことは確かだ。
地元調布の公民館のギャラリーで、沿線の専門学校である
東放学園の卒業制作展が行われた . . . 本文を読む
庭の入口の沈丁花が、枯れてしまった。
10年前に鍼灸を志して、それまでの仕事を辞めた。
14年勤めた職場の仲間たちが、餞別は何がいいか、と言ってくれたので、
沈丁花と山吹が欲しいと言ったら、最後の日に株を持って来てくれた。
その沈丁花が枯れてしまった。
十年ひと昔か。
去年の春、大雪の時だったか、水っぽく重たい雪が降った時だったか。
根本からわかれた主な幹の一本が、雪の重みで裂けた。
ぽっき . . . 本文を読む
吟醸酒の説明から始めて、引っ越しの手伝いの話を通して、
一週間しっかりと布石してたどりついた結論、
「吟醸香はカメムシのにおい」。
いやなもん読まされたとお思いでしょうが、
いやな気分で困っているのは書いた本人で、
せっかく買ってきた酒が、うまい気がしない。
おまけにちょうど名前も「亀齢」ときたもんだ。
どうしても頭からカメムシが抜けない。
※
お鼻
じゃない、
お口直しに、たまにはイイ話っ . . . 本文を読む
[あらすじ] 友人の部屋にカメムシが大発生。天井がまるでプラネタリウム★ 一昨年の夏を思い出す。 万願寺唐辛子と何かを庭で作ったのだが、カメムシがやたらと付いた。 我が庭はどうもカメムシが多いが、作物のできるものはことに他の植物よりも 好むようだ。 みっしりと並んで、汁を吸う。 実を食うわけではないのだが、爆発的に増えるので、 汁を吸われ過ぎて枯死する場合もあるらしい。 http://blo . . . 本文を読む
[あらすじ] 友人の引っ越す部屋をちょこちょこ補修したよ。
暦の上で、啓蟄つまり土の中で眠っていた虫どもが這い出して来る日は
今年は3月5日だという。
しかし、三寒四温の温の時に、気の早いのは出てくるもので、
小虫は飛ぶわ、若ナメクジは這うわ、ガマは道を渡るわ。
東京は今、三寒四温というよりは二寒一温くらいのリズムで毎日変動している。
風が吹いていても、今日のは北風なのか、それともなんだか . . . 本文を読む
わきの砂利道を踏む音が聞こえて、「こんばんは~」と玄関で声がする。
これは、隣の酒屋のおばちゃんから何かお裾分けに違いない。
季節のものや、得意料理を作ると時々持って来てくれる。
いそいそと出ると、
「ひじき」
おお、いただきます。
「初めて煮たの。」
ええっ、意外ですね。子どもの頃から食べる機会が無かったんでしょうかね?
「どうしてかしらね。息子に味見してもらったら、いいって言うから、食べて。 . . . 本文を読む
この部屋に引っ越して来る時も手伝ったんだ、と感慨深かった。
床に穴があいちゃって、と電話で言うから、どんなにでかく踏み抜いたのかと
思ったが、何か硬い物の角を落としたのだろうという小さな傷があるだけだった。
ただ、それがかなりたくさんある。
引越業者が、補修材で埋めたほうがいい、と言ったそうだ。
明け渡しの時に、不動産屋に対して心象が良いだろう、と。
補修していないと、敷金が戻ってこないかもし . . . 本文を読む
日本酒という呼び方が嫌いなほど、日本酒が好きだ。
なぜ日本で日本の酒をわざわざ日本酒と呼ぶのか。
サケはサケでいいじゃないか。
酒がサケだった頃には、サケ以外の酒はあまり無かったのだろう。
そのうちに、ビールだのウヰスキーだのワインだのがのさば イヤイヤ
親しまれるようになった。
そして、「酒」という語が、酒類全般をも表す役をも担った。
日本酒以外の酒類が一般的に普及した今、「酒」は酒類一般 . . . 本文を読む
夜更けに、ノートパソコンに向かったまま、居眠りしてしまった。
目が覚めると、画面が反時計回りに90度、回転していた。
つまり、右が下になって左が上になっている。
上が右で左が下で・・・
つまり、首を左に90度曲げると見られる。
私が寝ている間にどうしたんだお地蔵Ⅱ?
(お地蔵Ⅱは私のノートパソコンの愛称である。)
縦長画面になって、まさかipadに憧れたとか?
そのまま少し使ってみる。
マウ . . . 本文を読む
髪を長く伸ばすのは、苦手だ。
シショーが言う。
「婆という字。上の波は、波打つ白髪のことですね。
神通力を示している。」
私は二十代から白髪があり、四十代の後半の今は半分白髪だ。
長く伸ばすと一層白い。
それに若干の天然パーマで、ウェーブがかかっている。
ウェーブ。波である。
神通力か。
切るわけにはいかないなあ。
と思っていたのに、バッサリ切った。
二十歳の頃から、髪は自分で切る。
中学 . . . 本文を読む
焼き物に使う青の絵の具を、呉須(ごす)と言う。
ちょうど、呉須を使った絵付けを始めていたところだ。
これは見に行かねば。
実際に自分で陶芸をするようになって、焼き物を見る目はすっかり変わった。
今まではほぼ興味の無かった器だの皿だのを、仔細に見ては、
今度ここを真似してみようだのこんな方法もやってみたいだの考える。
古伊万里から直接学ぶとは、なんて贅沢なんだろう。
展示室は広く、点数も多く、で . . . 本文を読む
数回にわけて、十年前に鍼灸を志した頃のことを書いた。
ついでに、同じ頃にウンニョッキを作ったことも思い出した。
記憶はあざなえる縄の如く、絡み合っているものなのだろうか。
脳細胞の神経線維が、実際に縒り合わせた糸のように束になっているだろうか。
記憶をつかさどるのが海馬という場所だということは、よく知られている。
これが、15年あまり前のこととなると、ほとんど思い出せない。
より時間が経ってい . . . 本文を読む
[あらすじ] 十年前、鍼灸を志した。
1月に、新宿にその3年前にできた新しい専門学校の説明会に行った。
免疫と自律神経を結びつける発見から新理論を打ち出した、
安保徹氏の講演会がセットだったのだ。
私は腱鞘炎や鬱状態の経験などや、金管楽器演奏のための体づくりへの興味から、
その頃までに、心身に関する様々な本を読んでいた。
まるで健康オタクようになっていたが、正確な知識を付けたいという気持ちが . . . 本文を読む
[あらすじ] 10年前に、鍼灸を志した。
雑木林の中を歩いていると、ときどき、深いうろがある。
木の幹に、枝が折れたか何がどうしたか知らないが、穴があいているのだ。
深くて暗くて、奥がどうなっているか見えない。
とても手を突っ込む気にはなれない。
ある有料BSチャンネルの番組をインターネット動画サイトで観ていた。
女性のアダルトビデオ監督が数人、ゲストで登場している。
それぞれに得意とする専門 . . . 本文を読む