夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

母性 ミャー2

2009年11月08日 13時22分20秒 |   私の小さな恋人たち


三軒茶屋に住んだことがあります。
そのときのお相手がミャー。

とにかくみんなミーだの、ミャーだのつけるので判りにくいですよね。
そのときの私にしてみればお相手は一匹だけなので、まったく同じ名前でもかまわないのですけど。後から思い返したり、他の人に話すときには、確かに不便。ですからミャー2とでもしておきましょうか。
そのとき、そのときの相手は一匹だけでも、今になって振り返ると結果としてはたくさんの恋人たち。
恋人から浮気症だと言われても仕方がないのかもしれませんね。



ミャー2がどうして三軒茶屋に来たのかはもう忘れました。
とにかくミャー2は三軒茶屋の家に君臨していました。

ミャー2は私の手枕を自分の枕と思っているようで、私が眠りにつくとき、必ず彼女が私の布団に入り、右手に頭を乗せて、一緒に眠る。
魚の餌などを与えたときは、寝入りばなのひととき、人の顔を舐めて魚臭い息を人の顔にはきかけていた。

あるときに意地悪をして布団をぴっちりと閉め、ミャー2が入れないようにしたのだけど、30分も40分も人の顔を舐め、髪を引っ張り、耳元で泣き叫び、とうとうこちらが根負けして、布団に入れるまでがんばっていた。



勝手口のドアの下を切りミャー2が出入りできるようにしてやると、野良猫をたくさん引き連れて帰ってきて、出入り口に用意した餌を毎日大盤振る舞いをしていた。
餌の皿が、3っつになり、5つになり、そしてピークでは10皿を越えていた。

そのうちの一匹などは(喘息(?)のようにいつも咳をしているメス猫だったが、)ついに家の中にいついてしまい、ミャー2のメイドのように彼女の後ろから付いて回っていた。

そのうちにミャー2は子供ができた。
いつものように箱を押入れに用意してやるとそこで6っ匹の子猫を産んだ。

野良猫は大人になってから家に入り込んだので、寝るときにもミャー2のまねをして一応寝室には来るのだけど、布団の下の隅っこで寝ていた。
ためしに布団に入れてやろうとすると、すぐに出て行ってしまう。
ところがある日彼女が人の布団に入ってきて、ミャー2と同じように人の腕に頭を乗せて寝ようとしたので、どうしたのかなって思いながら眠り始めたところ、胸の辺りに何かぬるぬるしたものを感じ、吃驚して見ると彼女がお産をしていた。
子供がお腹にいるような兆候はまったくなかったので、とにかくダンボールを用意して、押入れにいれてやった。

ミャー2は離乳するとすぐにまた外に遊びに出始めた。
今時の若い女はって、舌打ちをするような気持ちで見ていたのだけど。

残されたミャー2と自分の子猫たちの面倒を見たのが名前も付けてもらえなかった野良猫。
いつも家のそとの道に子猫を連れ出し、子猫たちが遊ぶのを見ていた。

ある日その道を犬を散歩させている男性が通った。
野良猫は警戒の声を子猫たちにかけると、子猫たちをかばって、犬の前に立ちふさがった。

そのとき、ミャー2が疾風のように飛び出してきて、野良猫と犬の間に割り込み、
これでもかというように全身の毛を逆立て、犬を睨みつけた。

睨まれた犬とその飼い主は何が起こったのかわからなく、あっけに取られて、立ちすくんでいた。

犬が後ずさりをし、回れ右をして帰っていった後も、ミャー2は毛を逆立てたまま、震えていた。
抱き上げて、ずっと抱きしめてやった。



2005年12月3日に以前のブログからこちらへ転載したものです。
2009年11月8日に写真を追加、タイムスタンプも新しくしました。