旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

ニセモノ日本酒の退場--ひとつの戦後史の清算

2007-04-02 18:08:34 | 

 

 昨日の毎日新聞の囲み記事に、「安価アルコール添加 三増酒 『清酒』ダメ」という記事が載った。戦後の米不足の中でアルコールを添加し、薄辛くなった分を水飴を入れ、調味料で味をつけて三倍にも増量したいわゆる『アル添三増酒』……、このニセモノ日本酒がついに清酒市場から追放されることになった。
 実は、昨年五月の酒税法改正で決定されたもので、一年半の猶予期間を経て今年の10月から、清酒として売ることは出来なくなる。終戦直後の米不足の時期ならともかく、米余りのときを迎えても、国は税金政策からか、このニセモノ酒を認めつづけた。アルコールなどの大量添加は、醸造酒としての規定からも外れ、甘ったるくて悪酔いのもとと言われ続けたにもかかわらずである。
 日本酒は、その発祥のときから米と米麹と水で造られてきた。そしてそれが、日本人の食材にもぴったり合うのだ。それこそ国酒と呼ばれるにふさわしい。にもかかわらずこのニセ日本酒が、大手を振って長く酒の社会を支配してきた。しかしさすがに近年は、日本酒離れ(ニセ酒ばなれ)が進み、出荷量はピーク時の半分を下回り、国もその対応を迫られたと言えよう。
 私は2000年に純米酒普及推進委員会の発足に参画、同士五人の委員と及ばずながら「本来の日本酒、純米酒」の普及に努めてきたつもりである。このたびの酒税法改正や前述の新聞記事を、何十年来の思いを込めて喜んだのである。
 しかし、アルコール添加がすべて禁止されたわけではない。まだ「米から出来るアルコールの範囲内の量の添加」は認められている。日本酒を醸造酒と規定するなら、これさえ決して許さるべきではない。いかしまあ、一歩一歩前進するしかあるまい。それにしてもこの戦後の遺物を清算するのに60年近くを要したことを考えれば、ある種の感慨を覚えざるをえない。
 ところで、同じく戦後日本人が手にしたものに世界に冠たる平和憲法がある。私はこれは永久に手放したくないが、「60年も経ったのでそろそろ…」と不穏な動きがある。世の中は難しい。何が良
くて何が悪いか…人は絶えず「ほんものを判別する叡智」を求められているのである。
                            


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