1999年4月23日、私はベルギーのブルージュにいた。8年前の昨日のことである。
その夜、3人の旅仲間とヘルベルグ・ブリッシングというビアカフェに行った。それは5百年の歴史を持つ店で、われわれは表現しようのない落ち着き、寛ぎの雰囲気の中で至福のひと時を過ごしたのであった。
私はそこで初めて、トラピスト・ビール「オルヴァル」を飲み、「レフのブラウン」を追加した。仲間はグラスをかざして、静かに私の64歳の誕生日を祝ってくれた。そのくだりを『旅のプラズマ』に「忘れ得ぬ店 ヘルベルグ・ブリッシング」として書いたように、その店の不思議な雰囲気は、今も強烈に私の脳裏に残っている。
昨夜、息子や娘たちも集まって、私の72歳の誕生日を祝ってくれた。これはまた別の喜びに満ちていたが、毎年誕生日を迎える度に思い出すのが、あのブルージュの一夜である。