どこの国にもビールがあり、アメリカでもたくさんのビールを飲んだ。代表的なビールはバドワイザーかクワーズか…。ただ、これらのビールは専ら喉を潤すための飲み物と思っている。ベルギービールやイギリスのエール系のビールをはじめ、同じピルスナー系でもドイツやチェコのビールのような味もコクもあるビールに比べれば、食品としては二流品だと思う。しかし、カウボーイが砂塵の舞う平原を駆け回った後に喉を潤すビールとしては最高のものではないか? 拳銃をぶら下げて飲むには、ベルギービールなど甘っちょろくて飲めたものではないだろう。
ウィスキーでも同じである。アメリカで専ら飲んだのは当然のことながらバーボン・ウィスキー。
主要なウィスキーは「モルト・ウィスキー」と「グレーン・ウィスキー」に分類される。前者は大麦麦芽を糖化――発酵させ、それを蒸留してホワイトオークの樽で熟成させて造る。後者は大麦麦芽にトウモロコシを原料としてまぜて造る。モルト・ウィスキーの最たるものがスコッチ・ウィスキーであり、グレーン・ウィスキーの代表格がアメリカのバーボン・ウィスキーだと思う。
バーボンは18世紀の終わりから19世紀に、主にケンタッキー州で造られてきた。アメリカ連邦法によればバーボン・ウィスキーはトウモロコシを51%以上使用すること、となっているのでトウモロコシが主原料のウィスキー。加えて、内側を焦がした樽で貯蔵するので独特の香りがする。麦芽ウィスキーに比べ軽快な風味である。加えてあの焦げた香りは、ケンタッキー州を舞台にした西部劇のせいか、私には埃っぽく感じる。
そしてそれが好いのである。
牛のわらじのような大きなサーロインステーキにかぶりつきながら飲む酒は、軽快でしかも埃っぽい香りのバーボンウィスキーに勝るものは無い、と思っている。