台風が運んできたのかムーッとするような暑さが充満してきた。自然界も一方的に爽快な秋へ、とはいかないようだ。
現実社会はなお更のことで、毎日、新聞やテレビを見るのが嫌になるくらい「むさ苦しいニュ-ス」が続く。内閣を「改造」したその日から大臣を入れ替えなければならないような人事を改造などと呼ばないで欲しいと思う。社会保険庁などは永遠に不祥事が出続けるのではないか・・・?
それに引き換えスポーツ界には「爽やかな快挙」が続いた。
世界陸上は多くの感動を残してくれた。それぞれの感動にいささかの差も無いが、一つ取り上げるとすれば400メートルリレーか。この日本選手の活躍には、なんともいえない爽快感と躍動感があった。準決勝、決勝と日本新記録を出し続けたということは、単に持てる力を出し切ったと言うにとどまらず、その短い間に成長を重ねたということだろう。 このようなことはそう簡単に出来ることではあるまい。しかも一人ではなく「四人でやる仕事」という点に意味がある。極限にたって力をあわせれば、人間はこのような想像を絶する仕事をするのである。結果は五位であったが、写真で見ても、5チームのいずれが勝っても不思議でない差にまで迫っている。
野球の世界でも二人の男に注目したい。
イチローが年間200安打を記録することは当然のように思われていた。ただその200本目を、クレメンスという大投手から本塁打を奪って記録するところに並の人間でない証があるのであろう。
広島の前田も、今年のうちに通算2000本安打を記録することは当然期待されていた。その通りに記録したが、その翌日も二安打し、その2本目は本塁打でチームに勝利を引き寄せた。
驚いたのはその次の打席で、高めのボールに手を出して三振した後の落胆振りであった。しばし打席をはなれず天を仰いで呆然としたあと、ダッグアウトに帰っても俯いたまま慟哭しているかに見えた落胆振りであった。つまらないボ-ルに手を出した自分が許せないのだろう。
「2000本も打ったのだから、三振の一つや二ついいではないか」と思ったが、そのような安易さを許さない求道者のような姿を見た。
ここにもまた、常人の近づきがたい境地があった。