フランクフルトを根城にロンドンにも行こう、という計画でゲーテとともに想起した偉人にカールマルクスがある。マルクスはドイツ人だが、65年の生涯の後半34年はロンドンに住んだ。
ゲーテの恋人ロッテの住むヴェツラーはフランクフルト北方であるが、西に目を転ずるとルクセンブルグ国境に近くトリアーという町がある。これこそマルクスの生地である。その生家は今も記念館となって『資本論』初版本が置かれてあると言う。
1849年、ドイツ官憲に追われたマルクスはロンドンに移住する。この移住はマルクスを煩わしい政治の世界から引き離し、学究に没頭する時間を与えた。
そして、その学究の場こそ膨大な書籍、資料を有する大英博物館図書室であった。彼は以降30数年間、毎日通いつめて研究に没頭した。開館とともに席に座り閉館まで、毎日同じ席で研究が続けられたという。ある時その席に他人が座ろうとすると管理人が、「そこはマルクス博士の席です。今日も必ず来るのでご遠慮を」と言った話は有名である。
またソーホーのマルクス住居跡が「クォ・ヴァディス」というレストランになっており、三階の住居跡も保存されていることもわかった。いずれも学生時代に『資本論』を読みながら、その壮大な構想、理論構築に感動した者としては、一度は行ってみたい「聖地」である。
これらのことをドイツの友人にメールすると、彼は全て調べて返事をくれた。
「トリアーには2時間かかるが、ライン下りの前に立ち寄ろう。大英博物館図書室は保存されており、マルクスの席は「G-7」ということが判明。クオ・ヴァディスは、ちょっとエキセントリックなレストランのようだが、最後の日の昼食とするか・・・。マルクスがドイツ人でイギリスに住んでいた、ということは聞いていたが、初めていろいろわかった。是非とも行ってみよう」
マルクスの席が「G-7」というのは私も知っていたが、いずれにせよ友人の努力は今度の旅にまた通常の旅では得られないものを付け加えてくれそうだ。
同時に、ここまで甘えてよいものかと、だんだん反省の気持ちが重なってきた。
手づくりもいい加減にせよ!