旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

K.I さんの個展(絵画)、調布噺の会の落語

2013-06-02 12:07:14 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 昨日は芸術鑑賞のはしごをやった。
 昼食を済ませ世田谷区上馬まで出かけ、知人のお姉さんK.I さんの絵を見てきた。I さんは86歳、そのようなお齢になっても「個展を開く」エネルギーは何処から出てくるのか? せめてそのエネルギーの恩恵にあずかりたいと思って出かけたのだ。
 I さんは若い時には、たくましい働く者の姿など書いた具象画が多かったと思うが、齢を重ねるにつれ抽象画になった。今回も小さい抽象画が並んでいた。その何とも言えない透明感について、「この透明感は86歳という年齢が生み出すのか?」と問うと、
 「…若いときは茶系の色をよく使っていた。今気が付けば安い絵の具しか使えなかったのだろう。それに比べると、ブルーやコバルト系の色材は高い。それだけ号数の小さい絵でつり合っているのだろう」
と、飄々と語られた。なにかはぐらかされた感じもしたが、まさに、齢が生み出した透明感と言えるのかもしれない。

 画廊を発って今度は調布に向かい、16時半開宴の「調布噺の会」の定例会を楽しんだ。こちらは、プロの手品と粋曲が間に挟まるが、アマチュア落語家4人が、20、30分から1時間モノの落語を演じる。毎年そのうまさに感心するのであるが、今年もまたウナるものがあった。
 正直言って、チョッとしたプロよりはるかにうまい。今年は何度か触れたようにプロの落語会に二つ参加したが、少なくとも昨日トリを務めた三栄亭大笑は、それらのプロを凌駕していた。
 そもそもプロの落語でも1時間ものを聞く機会はきわめて少ない。昨夜の大笑は『唐茄子屋』を約1時間演じきった。その言葉使い、抑揚、身振り素振りは絶妙で、演目が人情ばなしということもあって満員の観客をひきつけ感動に陥れた。
 こうなると、プロとアマチュアの差はいったい何なのかと問いたくなる。相撲とか囲碁・将棋などは、プロとアマチュアの差が歴然としている。歌舞伎や能楽の世界も、子供の時から育て上げるという特殊な世界であるので素人にはなかなか近づけないが、落語や歌の世界は、才能と練習がかみ合えばかなり高水準のものが生まれるのだろうか?

 絵画はどうか? ゴッホの絵は今や世界最高額の絵となったが、生前は1枚しか売れなかったと聞いている。その1枚も画商で弟のテオが買ったというので、ゴッホは絵で飯を食っていたのではない。その限りではプロと言えるかどうか知らないが、この偉大な画家をアマチュアとはとうてい呼びにくい。
 芸術のプロ化(商業化)自体に何か問題があるのかもしれない。
 


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