初めてのアメリカはシカゴであった。1988年の初夏のこと。
弟が電子部品にかかわる事業を経営していたことから、毎年社員の何人かを連れてCES(Consumers Electronics Shows)という家電商品関係のショウの見学に出かけていた。その会場がシカゴであったのだ。私は門外漢であったが、1988年と89年に二年続けて参加した。
このショウは面白かった。そして門外漢の私にも大変勉強になった。そのとき書き残した『アメリカ駆け歩る記』という紀行文の中から一篇をを抜き出し、「日米技術力の勝敗の行方」という章にまとめて『旅のプラズマ』に収録した。
そして何よりも、初めてのアメリカ――特にそのエネルギーに強烈な印象を受けた旅であった。
シカゴはミシガン湖西岸の最南端に位置し、前に大ミシガン湖、後ろに広大なイリノイ平原を従え、鉄骨高層建築発祥の地と言われる建築の街である。
オヘア空港から市街に向かう車窓から見た光景・・・、ぐんぐん近づいてくる林立する高層ビル群に先ず圧倒されたのを思い出す。最高峰のシアーズタワー(当時、世界の小売業をリードしていたシアーズ・ローバックの本社ビル)は、110階、443メートルで当時世界一の高層ビルであった。
これらのビル群が、真っ青な天空に競い合うように抜き出ていた。CESの会場のマコーミック・プレイスも連日雲ひとつない快晴であったように記憶する。それは日本とは違う、なにか乾燥しきった明るさであった。
その明るさと、その中をさえぎるものなく伸びている高層ビル群に、まずアメリカのエネルギーを感じたのであった。