旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

旅の楽しみ … 計画、準備の楽しみ

2012-07-11 10:32:30 | 

 

 「白馬Alps花三昧」の旅が10日後に迫ってきた。旅行幹事から列車の切符や資料が送られてきて、だんだん現実味が増してくる。旅の楽しみは、当地に行って初めての風物に接したり様々な人と出会うことにあるが、その前の段階と後の段階の楽しみもある。
 まず準備段階で目的地の情報を集めながら夢をふくらます。若い時から山登りをつづけアルプスには何度も登った経験を持つ義兄が、いろんな資料を持って来てくれて楽しい話をしてくれる。写真を見たり話を聞くにつれ想像が広がる。
 地元の酒を調べてみると、「白馬錦」、「北安大国」、「「金蘭黒部」などがある。この旅のテーマに因んで少なくとも「白馬錦」は飲もう。純米酒がどこで買えるかなど思いを巡らす。
 なんとも安心したことは、標高1830mの「栂池自然園」も標高1515mのアルプス平「白馬五竜高山植物園」も、広大なお花畑が広がっており、歩こうと思えばいくらでも歩けるが、歩かなくとも十分に花や山々の景観を楽しむことができるらしいということだ。その地点まではリフトで行くので、何とも老人初心者向きだ。私は歩くよりもじっくり腰を落ち着けて、初めて間近に見るアルプスの山々(白馬岳、五竜岳、八方尾根など)を眺めるつもりだ。といっても、結構歩きたくなるだろうなあ~ そこの調整が最大の課題かもしれない。

 それと何と言っても天候だ。昨日、今日と東京は晴れているが、明日からまた梅雨空に戻るという。梅雨前線は未だ南の海上に横たわっており、これが北上して日本列島を通過しなければ梅雨は明けない。
 義兄によれば、例年少なくとも7月20日ごろには梅雨が明けるので、7月21、22日などは一番天気の安定している時期で、山登りの計画はその前後から始めるのが通例とのこと。「一番いい時期ですよ」と力強い助言をしてくれる。
 ああ天よ、われに好天と美しいアルプスの景観を与えたまえ。

 
  JR東日本「白馬Alps花三昧」リーフレットより


歌いつがれた美しい言葉・日本の心⑨ … 『うみ』

2012-07-08 11:04:06 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 梅雨空が続くが、やがて灼熱の太陽が降りそそぐ真夏が来る。その夏とともにある風景は、私にとって海である。海は四季を問わないが、もっとも海らしいのはギラギラと輝く太陽のもとの海だ。私が豊後水道(それは太平洋につながるが)に面した海浜で育ち、夏は一日中ハダカで海とともに生きてきたからかもしれない。
 そして海を思うとき、最初に浮かんでくる歌は文部省唱歌の『うみ』である。

    ウミハ ヒロイナ、 大キイナ、
    ツキガ ノボルシ、 日ガシズム。

    ウミハ 大ナミ、 アオイ ナミ、
    ユレテ ドコマデ ツヅクヤラ。

    ウミニ オフネヲ ウカバシテ、
    イッテ ミタイナ、ヨソノ クニ。 
 
      ――『ウタノホン(上)』昭16・2 
      (講談社文庫『日本の唱歌(中)』より)

 林柳波作詞、井上武士作曲の文部省唱歌である。この歌は特に夏の歌ではない。しかし前述したように、私にとって夏…海…として最初に浮かぶ歌がこれである。
 この歌は、私がおぼえた最初の歌であったかもしれない。というのは、母が毎晩私を寝かせつけるために歌ってくれたからだ。私は、母が耳元で歌うこの歌から、大きな大きな世界を想像しながら、ついにその大きさを処理できなくなって、毎晩眠りについたのである。
 月が上り太陽が沈む大きな海…、揺れてゆれてどこまで続くかわからないほど大きな海…、その海にお舟(お船?)を浮かばして見知らぬよその国に行ってみたい! 海の向こうにはどんな国があるのだろう……、その大きな夢の広がりの中で、私はいつも眠りについた。

 少し大きくなって、一つ気なることがあった。それは私の育った太平洋側では、極端な地形の場所を除いて海に日が沈むことはない。太陽は海から上り西の山の端に沈む。海に日が沈むのは日本海側である。作詞者林柳波はこの詩を日本海を眺めながら作ったのかもしれない。 

  
   秋田県男鹿半島の落日(2004年6月)


日本に中道政治は根付かないのか … 民主党の崩壊に因んで

2012-07-07 13:11:56 | 政治経済

 

 小沢一郎一派が離党して、民主党政権は終焉を迎えつつある。私は小沢一郎という人が離散することなど何も驚かない。この人の過去の動きに見られた金権体質と政局屋体質を考えると、この人が内部に居たこと自体が民主党にとって不幸であったと思うからだ。新会派の名称を事もあろうに「国民の生活が第一」とするらしいが、この人の過去の動きを見れば、自分を中心にした政局こそ第一としたかもしれないが、国民生活を第一にしたとは思えない。
 民主党という政党は、左は社会党くずれから右は金権体質の小沢派、保守本流の鳩山派までいた。だから小沢一郎、鳩山由紀夫元代表らが離れるのは遅きに失したとさえ思っている。今回の政争でようやく両派を切ることになったが、それをやるには、民主党は自民党の協力を得なければならなかった。その協力を得てようやく両派を切ることができたが、残った民主党は自民党と同じになっていた。つまり民主党は、国民が淡くも寄せた「新しい政治に向かう期待」を殆ど実現することなくその政治生命を終えたのである。

 私も、多くの国民とともに民主党による政権交代に期待した。最も期待したことは、「国民が望み政権交代を行えば、少しでも政治が変わる。少しでも期待したことが実現する」ということを国民が体験できることであった。国民がそれを体験すれば、必ず政治と国民の間に躍動感が生まれると思ったからだ。結果は、「政権交代しても政治は変わらない」という失望感だけが国民に残った。

 日本で最も「国民の生活が第一」という政策を掲げているのは社民党と共産党だろう。しかしこの政党と同じ名前の政党が、ソ連、中国、北朝鮮などで独裁、覇権という典型的な悪政をやってきたので、それを見てきた国民は簡単にこの2政党を信じない。あのスターリンや毛沢東や金日成などの政党とは全く違う政党であるが、そう簡単には許してくれない。
 その中でヨーロッパでは、少しでも「国民の生活が第一」という政策を掲げた中道政党が現れて、殆どの国で中道右派と中道左派が政権交代を繰り返している。民主党政権の出現はその方向に道を開くかと思ったのだが、淡くもその期待は消えようとしている。 
 真の「国民の生活が第一の政治」…、その道のりは長く険しいのであろう。


ようやく目にすることができそうな「西馬音内盆踊り」

2012-07-04 11:31:30 | 

 

 「白馬Alps花三昧」と「オペラ秘密の結婚」に続き、この夏の大きな行事は八月の「秋田西馬音内盆踊り」への参加だ。参加というと自ら踊るように聞こえるが、もちろん私は踊らない。しかし実際に踊る人たちに同行する二泊三日の旅なのだ。
 実は私は、Mホーム社を退職した2001年以来、秋田八郎潟町にあるY社に関係してきたので、月に1,2度は秋田に出張した。だから何十回となく西馬音内盆踊りのことを聞いた。そしてその度に、この「世にも優雅な踊り」を必ず見るものと心に決めていたのだが、ついに今日まで見ていない。それどころか、数十回ではきかないだろう秋田行にもかかわらず西馬音内町に足も踏み入れていない。すぐ近くの酒蔵は何度も訪問したが。
 ところが、秋田と縁が切れて間もなく、ひょんなことから本場盆踊りに直接参加するグループのお供をして西馬音内を訪ねることになったのだ。調布市の同会の方々で、そこには義兄が関係しており、踊るグループの中心メンバーとは2年前に熊野古道を歩いた仲である。人の縁ほど不思議なものはない。

 この旅の目的は、同好会の方々が盆踊りに参加することであるので、二泊する夜は踊りに集中する。われわれ見物陣の場所も確保されているようなので、ここは一番、この著名な盆踊りの見物に集中しよう。
 しかし日中は踊るわけではないので周辺を見物することとなる。まず二日目は角館を訪ねる計画だ。ここは数回行っているので、私は昼飯の場所やその前後の酒蔵訪問などを企画するように頼まれた。秋田はいささかうるさいので、何とか皆さんに喜んでいただけるような企画を立てたいものだ。
 昼飯は何処がいいか? 角館市内には拙著『蔵元の進める飲み屋』に書いた「稲穂」などあるが、大勢(約15人)で行くなら「わらび座」の「田沢湖文化村」か、田沢湖畔の「たつこ茶屋」などの方がいいか?
 また酒蔵はいくつも知っているが、庭の美しい『秀よし』がいいか、杜氏の話の面白い『天の戸』がいいか、それとも人気の『まんさくの花』がいいかなど迷っている。この迷いも旅の面白味の一つである。
 まあ時間はあるが、予約などのことを考えるとそろそろ決めねばなるまい。

 
 ようやく三枝とも花をつけた。最初の花は盛りを過ぎたが。


オペラ『秘密の結婚』 … 日本語セリフでつなぐ原語上演

2012-07-02 09:58:51 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 前回の「楽しみな七月」で書いたように、今月の主要行事としては「白馬Alps花三昧」に続いて月末28日(土)、29日(日)に、娘の主宰するオペラ公演『秘密の結婚』がある。
 娘がオペラ企画・制作集団“ミャゴラトーリ”を立ち上げて数年になるが、娘がこの間一貫して追求したことが「何とかオペラの素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい」、「そのためにはどんな工夫が必要なのだろうか?」ということであった。
 ご承知のようにオペラはイタリアに生まれ、当然イタリア語で演奏される。その後各国に広まるが当然のことながらそれぞれの国の言葉で演じられる。それでなくてもなじみの少ないオペラを意味の分からない外国語で聞かされては一層なじめない。と言って日本語に翻訳して演じると、それぞれの国の美しい言葉に合わせた曲の素晴らしさを損なう。また字幕スーパーを使うと聴衆の目はそちらに引き寄せられて折角の演技に目がいかない。オペラ――歌劇という以上は舞台にこそ目を惹きつけたい。

 思い悩んだ娘…というよりミャゴラトーリが到達した手法は、アリアや重唱部分は当然ながら原語で演奏するが、会話の部分やつなぎの部分は日本語で演じて、物語りの理解を助けようとしたことだ。加えて登場人物の一人にストーリーをつなぐ役を持たせ、日本語で語り継がせる。つまり狂言回し的役割を持たせることで観衆の理解を助ける。
 こうして昨年夏、ヤマハの支援も受けてドニゼッティの『愛の妙薬』を公演し、かなり好評であった。今回の『秘密の結婚』はその第2弾だ。題して「日本語台詞でつなぐ原語上演」。そのチラシには「美しいイタリア語の旋律を、日本語の台詞でつなぎます。イタリア語で歌っているのに自然に物語に入れるとご好評をいただいた演劇融合オペラ第2弾」とある。

 それはさておき、このオペラは美しい。オペラとしてはあまり有名ではないが、作曲者チマローザは“ナポリのモーツァルト”といわれるだけ曲の美しさは抜群! 特に重唱の美しは比類ないのではないか。
 それを、佐藤貴子、寺田宗永、沼生沙織、薮内俊弥、栗田真帆、大澤恒夫という実力派若手歌手が演じ、藤村はるかが女中役で話をつなぐ。期待して止まないものがある。


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