今朝の全国五紙はいずれも社説で「村上ファンド」を取り上げた。
以下は五紙の社説見出しの揃い踏み。
読売:[村上ファンド]「『モノ言う株主』の実態は?」
朝日:村上ファンド 本当のことを知りたい
毎日:村上ファンド 合法性を強調していたが…
産経:村上ファンド捜査 「灰色部分」に厳しく臨め」
日経:証取法違反の疑いが出た村上ファンド
やはり
昨年のライブドアによるニッポン放送・フジテレビの買収騒動もその陰にはホリエモンの師匠格の村上氏が策動していたようだ。
テレビワイドショーのお陰で、最近ではお茶の間でも知られるようになったTOB(株式の公開買い付け)劇の裏には常に村上ファンドの影がちらついていた。
楽天によるTBS株の大量取得、そして、目下進行の阪急ホールディングスによる阪神電鉄株の買収劇のいずれも村上ファンドが株式を大量に取得したことがきっかけだ。
良かれ悪しかれ村上ファンドが火をつけたM&Aは、企業経営者に緊張感を与えたのは事実だ。
配当を増やして株主への利益還元を拡大する企業が増えているという。
だが村上ファンドが用いた手法は「利益を上げるという目的達成のためには、手段を選ばない法やルールの抜け穴を突いてもよい」といった拝金主義そのものだった。
読売のコラムで拝金主義についての面白い挿話を紹介している。
◆6月3日付・編集手帳
手っ取り早くお金を作るにはどうすればいいのでしょう。学生から尋ねられた明治期の経済学者、和田垣謙三は答えた。「猿の毛を抜きなさい」◆猿(monkey)から毛(k)を抜けばお金(money)になる、と。経済活動とは似て非なる錬金術に心ひかれる若者を、おそらくは嘆かわしく思ったのだろう。素っ気ない答えに、先生の憮然(ぶぜん)たる顔が目に浮かぶようである◆毛を抜く虐待に猿が黙っているはずもなく、やがては鋭いつめでしっぺ返しを食らう。偽りの企業情報で市場をだました「ライブドア」旧経営陣の傷だらけの姿をみれば、錬金術の末路は語るまでもない◆これも毛抜き組であったか、どうか。今度は、「村上ファンド」にインサイダー取引の疑惑が浮上した。東京地検の特捜部は近く、村上世彰氏(46)を事情聴取するという◆ライブドアも村上ファンドも、率いる人は欧米流の市場主義を日本に根づかせる“革命児”のように言われ、自身もそれらしく振る舞ってきたが、欧米の教科書もまさか疑惑の手法までは推奨していまい◆猿まねのことを古い俗語で「株っ齧(かじ)り」という。欧米の流儀を上っ面だけをまねて、あちらこちらの株式を齧り散らしていたとすれば、市場の受ける傷の深さは計り知れない。猿づくしで世の中をかき回されるのは懲り懲りである。(2006年6月3日1時39分 読売新聞)
粉飾決算などで起訴されたホリエモンは、かつて「合法ならば何でもできる」と豪語していた。
師匠の村上氏もまた、「証取法や金融のルールは、イエスかノーで、道徳の世界ではない」と語っている。
「法やルールの抜け穴を突いてもよい」。
彼らが蔓延させたそんな拝金主義の増大に、歯止めをかける必要がある。
現在、抜け穴をふさぐ措置として、証取法の改正が国会で審議中である。
一般投資家には実態がわかりにくい投資ファンドの登録・届け出制の導入も必要であろう。
そんな動きを事前に察知したのか、村上ファンドは、国内での投資顧問業を廃業し、運用会社機能をシンガポール法人に移した。
愈々本格的国際ハゲタカファンドへの脱皮を目論んでいるのかも知れないが、例え外資・ハゲタカであっても、日本市場で行う取引には厳重な日本独自のルールを適用するのは言うまでも無い。